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2. 商業都市国家コルトシュタイン
この国では代々、商売を原則自由とする方針を採ってきた。
常識的な範囲内ならどんな商品を売買しても良いし、金鉱山で働く採掘師より黄金を仕入れる際の卸値も、商人が金工職人より買った『金細工』の価格も自由に設定が出来た。
商売をする際の土地代も免除され、商人達が気を遣わない環境を整えた。その為
『世界地図が存在しない』
そんな不思議な事実があっても、黄金を売り買いする商機の話を聞きつけた者は、何処に在るかも知れない『黄金要塞』の異名を持つコルトシュタイン国を、人伝てに聞き出して見つけ出した。
結果、人口一万人程の小さな領土には商売人が溢れたが、王家は方針通り、黄金の取引価格が高騰・下落し過ぎないよう微調整をするだけで、彼らに煩く商売の干渉をしなかった。
そんな方針でも困り事はあった。
人が増えれば商売上のいざこざが増える。
当然、お役所の出番が増えた。
そうなると今度は治安を保たねばならないのに、警察機構である『自衛軍』の予算が、何故か削減を迫られたのである。まだ議会のやり方を飲み込めていなかった新米の王には、この矛盾した状況が悩ましかった。