俺のファンはまだまだいます
キーンコーンカーンコーン。
6時間目の授業のチャイムが鳴る。長い1日が終わりを告げた。
「はあー。やっと終わった」
俺は大きく伸びをし、帰る準備を始めた。
「ストーップですよ!」
1分でも1秒でも早く帰りたい俺を止めたのは咲良ちゃん。
「な、なんだ?」
「放課後ですよ!放課後といえば·····そう!部活動です!蒼くんはサッカー部のイケメンキャプテンという最高スペックをお持ちですがこっちの世界ではなにか部活動に入らないのですか!?」
「あー。部活動か。今は特に考えてないかな」
そう言うと咲良ちゃんはあからさまに悲しそうな顔をする。
「そうですよね·····蒼くんにとっては異世界生活1日目ですもんね·····部活動とか考えられませんよね·····あわよくば私の部活に見学に来て欲しかったのですが·····疲れてますもんね·····」
「なんか急に咲良ちゃんの部活見に行きたくなっちゃったなあ!なんでだろうな!さあ案内してくれ!」
すると咲良ちゃんはさっきと打って変わって目を輝かせた。
「え·····!いいんですか·····!?やった!蒼くんが私の部活に入ってくれるかも!?部活中も蒼くんと一緒にいられちゃう!?とりあえず案内します!こっちです!」
咲良ちゃんはスキップしながら部室案内してくれる。この子本当にわかりやすいなあ·····
「ここです!美術室ですよ!」
「美術室·····ってことは美術部か?」
「そうです!正解です!さあお入りください!」
そう言って咲良ちゃんはドアを開ける。
「さくちゃんおつかれさま〜!ねえねえ見て!私の絵!ついに完成したんだよ〜!」
「成瀬先輩お疲れ様です!どれどれ·····おぉ〜!今回の蒼くんも最高に美少年に描かれてますね!」
「そうでしょそうでしょ!も〜蒼くん本当に今日もかっこいい!もっとたくさんイラスト描いて蒼くんを生産しないと!」
「そうですね!先輩頑張りましょう!」
なんだこいつら·····この成瀬っていう女はパッと見めちゃくちゃかわいいしほんわか系お姉さんって感じでモテそうな雰囲気を醸し出しているが、なんていうか·····どこか残念な感じがする·····
「あれ·····?そっちの子はだあれ?」
そんなことを悶々と考えていたら目が合ってしまった。
「あ!この方は今日から転校してこの学校に入った長瀬蒼くんです!美術部に入部希望ということで案内しました!」
「咲良ちゃん!?俺は見学するとは言ったが入部希望とは言っていない·····」
そう言ったが咲良ちゃんと成瀬さんは止まらない。
「え〜!本当に!?廃部の危機だった美術部に救世主が·····!?入部届もってこなきゃ!長瀬くんずっと立ってると疲れるでしょ!ささ!こっちに座って!」
俺は半ば強引に座らされてしまった。
「あ、あの九ノ瀬さん·····?俺は美術部に入るなんて一言も言ってないんだが·····?」
すると咲良ちゃんはあさっての方向を向いて愛想笑いを浮かべる。
「え·····え〜?そうでしたっけ·····?私は本物の蒼くんにモデルになってもらって絵を描きたいなんて1ミリも思っていませんし、絵を描いている蒼くんの姿が見てみたいなんて全く思っていませんよ·····?自分の欲求を叶えるために蒼くんを美術部に入れる訳ないじゃないですか〜!あはは〜·····」
「とりあえず咲良ちゃんが隠し事できないタイプだって言うのはよくわかったよ·····まあどうせ放課後やる事もないし入ってもいいか·····」
「本当ですか!?わーい!ありがとうございます!」
心の底から嬉しそうにする咲良ちゃんを見て俺も思わず笑ってしまった。
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