同担拒否は害悪ではない
「九ノ瀬さ〜んっ♡おっはよ♪」
「おはようございます·····な、な、なんですか?また蒼くんマウントですか·····?桃瀬さん·····」
昨日公園で謎の取り引きをした後、早速今日桃瀬さんは咲良ちゃんに絡みに行く。
「ええ〜?違うよぉ。めるそんなことしたことないじゃ〜ん」
いや、してるだろ!っとツッコミたい気持ちをぐっと堪え2人の話をもう少し聞いてみることにした。
「ええと·····じゃあなんの用ですかね·····私なにかしましたっけ·····」
「ねえなんでそんなに怯えてるの?めるがかわいすぎるからってそんなにおどおどしなくたっていいのにぃ。まっ、いいや。この超かわいいめるが文化祭のヘアスタイル、メイク係になったのよ。九ノ瀬さんの担当になっちゃったからちょっと面貸して?♡」
「なっちゃったってなんですかっ!?なっちゃったって!?しかも面貸してって怖すぎですよ!?」
「おっと♡いっけない♡口が滑っちゃったあ♡」
ふ、不安だ·····!不安すぎる!
桃瀬さんはこっちを見てついてこいとアイコンタクトを送ってくる。
俺は咲良ちゃんにバレないよについて行った。
そしてついたのは空き教室。
「決闘でもするのかと思ってるんですけど·····体育館裏じゃなくて大丈夫ですか·····?」
咲良ちゃんはめちゃくちゃビビっている。
「九ノ瀬さん失礼って言葉知ってる?♡」
桃瀬さんはにっこり笑って指をぼきっ!っと鳴らす。怖い。
「いやいやいや!じょ、冗談です!」
「あははっ!九ノ瀬さん冗談きっついね♡じゃあ髪借りるよぉ〜」
「お、お願いしますっ!」
桃瀬さんは咲良ちゃんの髪をとかし始めた。そして桃瀬さんはなにか違和感を感じたのか手を止める。
「ねえ·····九ノ瀬さん。あなた髪の手入れちゃんとしてる·····?」
「え?うーん·····お風呂入ったあとドライヤーはたまーにしてますけど·····」
「は?そんなのあまっちょろいよ?もっとちゃんと手入れしな?あなたこんなに髪質いいんだから·····勿体なさすぎるよ」
「ふぇ?は、はい·····」
桃瀬さんからまともなアドバイスが出てきて咲良ちゃんは気に抜けた返事をする。
「はぁ·····こんなんで蒼くん推し語って欲しくないんだけどぉ·····やっぱり蒼くんの隣はめるしかいないわ〜」
「あ、あの」
「なに?」
「桃瀬さんがそんなに見た目に気を使ってるのは蒼くんの為なんですか·····?」
桃瀬さんはちょっと微笑んで言った。
「そんなの当たり前じゃん。める本当に蒼くんが大好きなの。だからめるの元々のかわいさに甘えないでずっとかわいくいるために努力してるの。だって蒼くんはめるなんかよりも何倍も努力してきてるんだもんっ」
「桃瀬さん·····」
「だから·····同担には絶対負けたくないの。常にめるがナンバーワンでいたいから。いつ蒼くんがめるの前に現れても大丈夫なように」
俺はこの会話を盗み聞きしてるのを咲良ちゃんよりも桃瀬さんに申し訳なくなってくる。
正直ただの害悪同担拒否だと思っていた。
でも·····違う気がした。
彼女は本気で俺のことが好きなんだ。
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