異世界転移は突然に
「莉々。俺はお前の事が大好きだ。俺がお前を幸せにする。だから·····俺と付き合ってくれ」
「ありがとう。私が落ち込んでる時そばにいてくれて励ましてくれたのはいつも蒼だったね。蒼が俺が居るからって私に言ってくれた時はすごく嬉しかったなあ·····」
これからもそばにいる。俺はあいつより莉々を幸せにできる。
だから頼む。俺のものになってくれ。
「蒼。ごめんね。それでも私は彼が好き。」
「え·····」
俺柊木蒼。たった今大好きな幼馴染の莉々に振られた。
おいおい。ずっと一緒にいて長い間片思いしてこいつに釣り合おうと努力してきたのにこんなに呆気なく振られるものなのかよ。ははは。
やばい。泣きそう。でも、やっぱり好きなやつの前だ。かっこつけてもいいよな?
「はーあ!振られちったよ!やっぱり蒼がいい〜って言われても知らねえからな?·····俺はずっとお前のことを応援してるぞ」
■
「あー。振られたわ。」
俺は泣きすぎて目を真っ赤にしながら帰路を歩いていた。
俺は幼馴染でずっと好きだった天笠莉々に振られた。いや、なんで俺が振られるんだよ!ありえなさすぎるだろ!
でもまあ幼馴染ってだけで負けフラグ立ちやすいよな。くそ。なんで莉々は俺じゃなくてあいつなんだよ。
よし。決めた。今日は課題なんてやんないで一日中ゲームしてやる。腹癒せだ。
俺は家に帰っては速攻でスモブラのカセットを手に取りスアッチの電源を入れた。
カチカチカチカチ·····ピコピコピコピコ·····
俺は今日あったことを忘れるために必死でゲームをした。普段はあんなに楽しくゲームができるのに今日は戦犯ばっかで全然楽しくない。
··········
それからどれぐらいがたっただろう。俺は気づいたら寝てしまっていた。
「んっ·····うーん」
俺は大きく伸びをして辺りを見渡した。そしていつもと何かが違うことに気づく。
「·····ここ、俺の部屋じゃない」
無機質な部屋にダンボールがいくつか積み上がっている。
俺はドアを思い切り開けるとこの家は俺の家じゃないように見える。
振られたショックで見知らぬ人の家に入っちまったか?
いやさすがにそんなことはありえないだろう。
するとリビングから女の人の声がする。俺は声のする方へ向かった。
「あら、蒼起きてたの?今日は随分と早起きね」
「·····誰ですか?」
そこに立っていたのは初対面の人。なのに何故か俺の名前を知っている。
「誰って·····あなたのお母さんだけど·····どうしたの?蒼寝ぼけてるの?」
「俺の·····母さん·····?」
何がどうなってるんだ?俺の母さんに似てる似てないの問題じゃなく全くの別人だ。
夢でも見てるのか·····?
「えっと·····あなたは本当に俺の母さんなんですか?」
「え·····?あなた本当にどうしちゃったの?朝から様子が変よ?もしかして記憶喪失とか·····?引越しして疲れちゃったかしら·····蒼。病院行く?」
「病院!?あ、う、あ〜·····母さんのこと驚かせようと思ってさ!冗談だよ!冗談!俺が母さんのこと忘れる訳ないだろ!」
病院になんかつれてかれたらたまったもんじゃない!ちょっと無理があるがこの言い訳通じるか·····!?
「はぁ·····全く。びっくりさせないでよね〜。引越し2日目。あなたも今日から学校に通うのよ。はやく制服着てご飯食べちゃいなさい」
「お·····おう、わかった。」
なんとかなったみたいだな·····俺は自分の部屋であろう場所に戻った。これはなんだ?テレビのドッキリ企画か?起きたら突然お母さんが知らない人だったら!みたいな。
それにしても大掛かりだな。わざわざ家まで変えるなんて。
俺は必死になって隠しカメラを探すが見つからない。そんな都合のいい展開などないのだ。
とりあいず俺はおもむろにハンガーに掛かっていた制服らしいものを手に取った。
「多分·····これが俺の制服だよなぁ·····」
制服に袖を通すとこれまたびっくりピッタリ入ってしまった。
とりあえず学校に行くか。場所がわからないから机の上に置いてあったスマホでこの辺の学校を調べて俺の今来てる制服と同じところに向かおう。
俺は地図アプリを開き、出てきた学校のホームページを調べ、その学校の制服と自分の着ている制服を照らし合わせる作業をした。
当然だが地図アプリを見ても俺の知らない地名ばかりが出てくる。
·····なんでこんな訳の分からないことになってんだ。俺なんか悪いことしたか?
「私立美空学園·····ここかな」
ここはどこなのか、どうして俺はここに来たのか、元の世界にどうやって戻るのか、たくさん疑問は残るが俺は外に出た。
俺の家の表札を見ると『長瀬』と書いてあった。さっきこの世界の俺のお母さんであろう人物は俺の事を蒼って呼んでたことを考えると苗字だけ本名と変わった感じか。
俺は地図アプリを見ながら美空学園を目指す。
それにしても本当に知らない名称の場所ばっかだな·····日本語が通じるのが不幸中の幸いってところか。
すると突然前方から女の声が聞こえてきた。
「ぬわ〜!推しの新グッズ販売だとぉ!?早速ポチらないと!?リンクはどこだ!?」
制服を見るに同じ学校の人っぽいけど、明らかにやばそうだから話しかけないで素通りしよう。
「予約待ったなし!さあさあさあお迎えに行きますよ!トレーディンググッズもあるな·····取り合いず50個買うか?今月のバイトの給料いくらだろってへぶぅ!」
歩きスマホをしていた彼女は電柱に思いっ切り顔をぶつけていた。
勢いよく電柱にぶつかっていたもんだからさすがにちょっと心配だから声をかけた。
「あ·····あの·····君大丈夫?歩きスマホは危ないよ?怪我はない?」
「えへへ·····すいません·····もう大丈夫なんで!お恥ずかしいところをお見せ·····し·····ました·····えっ?」
彼女は俺の顔を見るや否や大きく目を見開いてフリーズした。
そして次の一言。
「蒼君·····?」
「え?」
なんでこいつは俺の名前を知ってるんだ?そして彼女は続けた。
「こ、コスプレイヤーさんかなにかですか?すごくそっくりですね·····まるで2次元から推しが飛び出たみたい·····もしかして公式レイヤーさんとかですか?いや·····でも公式にそんな情報は出てなかったよな·····」
そういうと彼女は高速でスマホをタップする。
そしてとある画面を俺に見せてきた。
「『俺の想い人は3人いる』の柊木蒼くんって知ってますか?って、超有名神作品だから知らないってことはあんまりないと思いますけど·····この作品の柊木蒼くんにめちゃくちゃそっくりで·····」
その画面には確かに俺そっくりなキャラクターがいた。そして名前は柊木蒼と書いてある。
「これ·····俺だ·····」
そしてキャラクター欄には莉々や莉々の想い人。顔なじみが何人かいる。
「え、え、あ、蒼くん·····?なん·····ですか·····?」
「ああ。間違いない。これは俺だ」
断言できる。キャラクターデザイン、性格の説明欄、街の背景·····漫画から読み取れるものを見た感じこれは俺の世界だ。
「へ。」
彼女は声にならない声を出す。
「なんだ?」
俺は相槌をうつ。
「うえ、」
「ど、どうした?」
「蒼くん〜!?と、尊すぎる·····まさか生きてる間に生蒼くんを拝むことができるなんて!?ほ、本物!?な、なんで3次元にいるの!?ああ、私今日命日なのか。そういうことかあ!それとも夢でも見てるのか?ほっぺつねってみよ。·····いてて!ちゃんと痛い!ってことは·····」
彼女は俺を凝視して目に涙を浮かべながら笑った。
「私の最推しなんです!俺の想い人は3人いる通称おれおもの友人キャラ柊木蒼くん!ま、眩しい·····可愛いしかっこいい·····キャパオーバーすぎるこの顔面美·····3次元でも健在する美少年っぷり·····しゃ、写真撮って頂いてもよろしいでしょうか?いくら積めばいいですか?臓器でもなんでもあげるのでお写真撮ってください·····ひええ·····」
「臓器はいりません!写真ぐらい全然撮ります!その代わりと言っちゃなんだがお願いがあるんだけどいいか?」
「はい!もちろんなんでしょう!」
「俺と一緒に元の世界へ戻る方法を探して欲しい」
初めまして!飴宮まるです。なろう小説どころかネットで自分の作品をあげるのが初めてでたくさんの人が見てくれるといいなと言うわくわくでいっぱいです。評価、感想くれるとかなり喜びます!