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Dmmerung des tiefen roten Mondes  作者: 月猫
8/23

試験結果

翌日。


ブラッドはソファから背伸びをして起き上がった。

時間はまだ6:00を回ったばかり。

爽快な目覚めとは言えないが、仕方がない。

ゆっくりと風呂へ向かった。

服を脱ぐと背中には右肩から左脇腹あたりに伸びる一本の刀傷があった。鏡に映ったその刀傷を見ると、フッと視線を逸らした。

ブラッドは、背中の刀傷を直そうとしない。いや…直せるならとっくに直している。が、直さない理由がある。

それは、誰にも言わない。故郷を追放されて生き始めた時に自分でたてた誓いだった。

この背中は誰にも見せたことはない。今後、誰かに見せるつもりもない。

風呂からあがると、学園側から支給された漆黒のローブを被る。紅色のローブは、クローゼットの中にしまっている。

ブラッドは、朝飯代わりのトマトジュースパックを吸いながら学園に向かう前にヒズミの部屋に立ち寄ることにした。部屋に鍵をかけるとヒズミの部屋の前に来た。部屋をノックして暫くすると扉が開けられた。


「ブラッド?どうしたんだ?」

「一緒に学園に行こうと思ってな」

「良いぜ。ちょっと待ってて。5分で支度する」


緋澄の言った5分後、ブラッドと同じ漆黒のローブを被って出て来た。


「お待たせ。さ、行こうぜ?」

「あぁ…。でもこのローブの色もう少しどうにかならないかなぁ…」

「ん?なに?ブラッド、黒好きじゃないの?」

「あぁ。好きじゃない…と言うより嫌いだな。黒には良い思い出がないからな…」

「あー…そうなんだ?ま、俺もどんな思い出?とか聞くほどヤボじゃねぇし。」

「それはありがたい。思い出したくもない思い出なんでね」


苦々しくそう言い放つ。

ヒズミはそう聞いて、「はは、そうか…」と苦笑して言う。


ヒズミは、「どんな思い出なんだろう…」と思ったが、口には出さずにいた。

ブラッドが言いたくなければ、無理に聞くことはしない。ブラッドが自分から話すときは聞く、そう決めた、ヒズミ。


「ヒズミ…?お前、教室はいんねぇの?」


いつの間にか教室の前に来ていたみたいだ。


「え?あ…入るよ。ははは」


若干、照れが混じった笑いで誤魔化す、ヒズミ。

ブラッドとヒズミが教室に入ると、教室の中は騒然となった。

それもそのはず、ランクS以上の使い魔を持つ二人が揃って登校してきたのだから。

登校してきて早々、二人に人だかりが出来た。

ブラッドは、煩わしそうにクラスメイトたちの質問を無視すると、人だかりを掻き分けて自分の席に着いた…が、それでもクラスメイトたちは懲りずにブラッドの周りで同じような質問を繰り返している。

ブラッドは、はぁと面倒くさそうに溜息を吐く。

周りで同じような質問をしているクラスメイトの声を抑えるため「無言魔法サイレンスマジック」と呟く。すると今まで煩かったクラスメイトたちの声が一気に静まり返る。

なにをしたのだろう?と気になったヒズミは、ブラッドに声をかけようとするも、声がでない。

それもそのはず、教室全体に無言魔法サイレンスマジックをかけたのだから。

ヒズミは念話でブラッドに話しかける


―今、何したんだ?―


―ん?サイレンスマジックを教室全体にかけた―


そうシレッと答えるブラッド。

付与魔法エンカウントマジックは、上級魔法。

それをいともたやすくかけるブラッドは何者だろう?と色々聞きたそうな目で見つめるヒズミ。

ブラッドはそんなヒズミから視線を逸らせば、ぼんやりと自分の薬指に嵌っているシンプルなデザインの指輪を見つめる。

その表情は、何か思い詰めたような憂いに満ちた表情だったようで、クラスメイトたちは押し黙った。

すると、教室内に教師がやってくる足音が聞こえた。

サージェスだろう。


付与障壁エンカウントキャンセラー」と呟けば、教室内に張っていた無言魔法サイレンスマジックが消える。


「…?どうしたんだ?お前たち」


無言魔法サイレンスマジックのついでに防音魔法サウンドレスマジックをかけていた。

だから、ブラッド以外のクラスメイトには、サージェスの足音が聞こえなくて、付与障壁エンカウントキャンセラーを唱えた直後に入ってきたサージェスにびっくりしていた


「まぁ、良い。出席を取るぞー。呼ばれたら返事しろ」


そう言って、順々に名前を読み上げていくサージェス。

…数分後

全員の名前を読み上げたサージェスは「欠席は、一人か。よし、ホームルームは終わりだ。1時限の授業に遅れるなよー」


「あぁ、忘れていたが、アイリスとヒズミは、後で職員室に来るように」


そう言ってサージェスは教室から去っていった。

ホームルームが終わると、すぐに職員室に行こうとするブラッドに、一部のクラスメイト達が詰め寄る。

ほとんどのクラスメイトは黙ったが、一部のクラスメイトは煩くなった。

ブラッドの左手の薬指に嵌っている指輪を見て、だ。

ブラッドは、これがないと自分の魔力を抑えきれない。

万が一外したりしてみろ。

この学園の生徒たちが俺の魔力に触れて気を失うのが目に見える。

だから、不必要に外さない。

そんなクラスメイトを煩わしく思ったのか「煩い」と一言言うのと同時に2割強の魔力を一部のクラスメイト達にぶつける

そうしてようやく黙ったクラスメイト達を尻目に、ヒズミに声をかける


「行こうぜ?職員室」

「あぁ、行くなら早い方がいい」


そうして二人一緒に教室から出て行く。

職員室に向かう道中ブラッドとヒズミは無言だった。

…否、ブラッドが不機嫌でヒズミが話しかけられなかったのだ。

ほどなくして、職員室につく。

職員室の扉をガラガラと開くとブラッドは言う


「失礼します。1年A組のブラッド・ベルリオーズ・アイリスとヒズミ・クリード・クローチェです。サージェス教諭に呼ばれてきました。入ってもよろしいでしょうか?」


そう一気にまくしたてると職員の返答も待たずに職員室に入り、サージェスの元へヒズミと二人で来る


「で、なんですか?」


「応接室で話そうか」


サージェスは、目で二人についてくるよう言うと応接室の中へはいって行く。

二人は顔を見合わせると、サージェスの後ろについて応接室に入っていった。

応接室に入ると、サージェスのほかに学園長もいた。

ブラッドは驚いていた。

学園長が、まさか魔帝のクラム・サザンカ・クロイツェルだとは思わなかったからだ。


「二人の試験結果だが、二人とも合格だ」


サージェスはそう言うが、この合格自体にはさしてブラッドは驚いておらず、むしろ学園長に目がいっている。


「話は以上だ。ヒズミは教室に戻りなさい。アイリスは、学園長から話があるそうだから残りなさい」

「サージェス、君も戻っていい。次の時限は君の授業じゃなかったかね?」

「あ、そうです。では、失礼します」


ブラッドはサージェスが応接室から去ったのを確認して、応接室全体に防音魔法サウンドレスマジックを掛け、クロイツェルに話しかける。

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