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Dmmerung des tiefen roten Mondes  作者: 月猫
7/23

治療

転移で、自室に戻ったブラッドは寝室のベッドに寝かされたヒズミの治療に当たる。


「クローネ、リン。俺は今から魔力抑えをなくす。だから部屋の外部に俺の魔力が漏れないよう強力な結界を張ってくれないか?」


新たに呼び出されたクローネと待機していたリンに部屋内部に結界を張ってくれと頼むと二人とも頷いてくれた。

二人が強力な結界を張ったのを確認すると、ブラッドは呟きながら、左手の薬指にはめた指輪を外す。


「今、我に眠るすべての力を解き放つ…」


ブラッドがそう呟いた瞬間に、一気に魔力が膨れ上がる。

流石、「紅」の名を持つ者。

ヒズミの治療は物の数分で終わった。

左手の薬指に指輪をもどしながらまたもや呟く。


「我が解き放った力よ…また元に戻るがいい」


そう呟けば、ほとんどの魔力が指輪の中に凝縮されていく。


「クローネ、リン。助かった。戻ってくれ」


クローネとリンは頷いて別々の世界へと戻っていった。



あとは、ヒズミの目が覚めるのを待つだけだ。

数時間後。

ヒズミの目が覚めた。

目を覚ましたヒズミは、混乱していたようだったが、此処が森ではない事は分かったらしい。


「………ぇ?あれ…?ここ、は…?」


ブラッドは、目を覚ましたヒズミを抱き締め「心配したんだからな」とポツリと呟いた。


「此処は、俺の部屋だ。」

「ブラッド…だよな…?」

「あぁ。どうした?」

「俺は、殺人狂犬マッドドッグの群れをなんとか倒した後…そこに倒れたはず…」

「俺の後ろを着いてきていると思っていたお前がいなかったからな。あの時はビックリしたんだからな」

「それで俺を此処まで運んで来たのは、誰なんだ?」

「俺の使い魔のリンだ」

「…そうか。」

「…あぁ。」


その時、クローネから、念話で話しかけられた。


―主、ヒズミ殿に言ってみてはどうだろうか?主が吸血鬼(ヴァンパイア)だと言うことを―


―………言って拒絶されたらどうする?また、あんな思いはイヤなんだ…―


―………だが、言わないと始まらない。―


―クローネの気持ちは嬉しい。でも、やっぱり言えないんだ。もうあんな思いはしたくない―


ブラッドはいつのまにか涙を流していた。


「ブラッド…?どうかしたのか…?」

「何がだ?」

「いや…涙流してるから…」


ブラッドは無言で左手を頬に持っていくと、驚愕した。


「(や、ヤバい…)……!?」


そう思いながら、意識が闇に落ちていった。

俺は、涙を流すと魔力のコントロールが出来なくなるらしい。

それに、俺に与えられた魔力は膨大だ。

未だ完全にコントロール出来たわけではない。

この指輪に頼らなければ、自分の魔力さえ抑えられない。

抑えることが出来ない。

だから、なのだろうか。

俺は、泣く事を出来るだけ避けている。

泣いたとしても、迷惑が掛からない場所で、だ。

俺はいつの間にか泣かない…否、泣けない奴に育っていった。

泣いたら、魔力制御が出来なくなるどころか、感情に任せてところ構わず攻撃してしまうから。

今はまだ良い。

泣いても、7割程度の魔力が暴走するだけだから。


昔は違った…。

泣けば泣くほど、魔力制御が出来なくなり、色んな人を傷つけた。

イヅミも傷つけた。

………が、イヅミだけは違った。

イヅミは俺が傷つけたにもかかわらず、俺から離れていく事はしなかった。

いや、出来なかったのかもしれない。

だからこそ、俺はイヅミには感謝している。

それに、この指輪には、付与魔法エンカウントマジックがつけられている。

それは「泣いたら意識を失う」というもの。

そうすれば、魔力が暴走しなくなるように、と。

アイツがつけてくれたものだった。


そんなアイツを俺は守れなかったんだが…。

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