学園入学
ギルドマスターのイヅミから聞かされて一週間後。
入学するまでの手続きが昨日ようやく終わったようだった。
一週間の間に、シェリア学園に編入するための試験を受験したりした。
編入試験は、入学試験より難しい、と聞いていたがなんのことはない、簡単だった。
編入試験も入学試験同様、筆記試験、実技試験、面接がある。
ブラッドは編入試験には、筆記試験2割、実技試験4割、面接6割の力で臨んだ。
全力で臨む必要なし、と踏んだためだ。
筆記試験、実技試験共々好成績で合格する。
最後は面接。
面接も面接官に好印象を与えることに成功。
全ての試験が終了したとき、「合格は間違いなし」と思った。
そうして、ブラッドの予想通り、合格通知が届く。
それを軽く目を通しただけでごみ箱へ捨てた。
自室の内側から誰一人として入ってこれない閉鎖魔法をかけると、自室からシェリア学園近くの森に降り立った。
一週間もあれば学園内の地図は大方頭に入っている。
「暇さえあれば、地図見てたからなー」
と呟く。
降り立った森は、迷いの森といわれており、ある一定の道を歩かないとループしてしまい、二度と出れなくなってしまうといわれている。
そして、その一定の道は入ってくるたんびに違うのだ。
「…フン、さっさと学園に向かおう」
最短距離で迷いの森を抜けると、周りに人がいないことを確認した後、学園入り口まで来れば、職員室を目指す。
シェリア学園は、かなり広かったが、職員室をやっとのことで見つけた。
職員室の扉を開け、「失礼します」というと、「本日から本校に通うことになっております、ブラッド・ベルリオーズ・アイリスと申します。担任のサージェス教諭はいらっしゃいますか?」
職員室の先生方はキョトンとしていた。今までこんなに丁寧に喋る生徒を見た事がなかったからだ。
「サージェスは、私だが…っ!!」
「どうかしましたか?」
そう聞くものの、サージェスのギルドランクは最近できた法律によって教師は、ランクρ以上でなければいけない、という決まりが出来た。
そして、そのランクを授けるのは、創帝であるブラッドの仕事。
年に何度も何度もそのランクを授けているので、いちいち顔まで覚えていやしない。
簡単な話、ブラッドは覚えていないのだ。
「いえ、なんでも。それにしても、アイリス君は、礼儀正しいな」
「ありがとうございます。目上の人には敬語を使えと叩きこまれましたので」
照れながらそういう、ブラッド。
「ほう…、それでか」
ちいさく微笑んで頷いて見せた。
俺はこの学園を入学するにあたって、大分魔力を抑えている。いや、抑え込んでいると言った方が正しいか。
この薬指にはまっている指輪が魔力制御装置になっているからな。魔力制御装置をしている間は、魔力は10分の1以下。
頑張ってあげても、せいぜい、7割までしかあがらない。
普段の任務をこなすのも、魔力制御装置をして行っている為、それほど苦にはなっていない。
このサージェスという男、俺が魔力を抑えているとはいえ、なかなかの魔力量だ。
他の教師よりも魔力が満ち溢れているぞ。
…だが、それだけ魔物にも狙われやすい、ということか。それは、俺と一緒だな…。
小さく苦笑する。
俺がそんなことを考えていると、教室に着いていた。着いた教室は1年の教室。
まぁ、仕方ない。こればっかりは諦めている。外見が外見だ。
ブラッドは、外見的に見れば、16かそこらに見えるが、吸血鬼だから、これでも250歳以上だ。
まず、サージェスが教室に入っていく。サージェスに呼ばれたら俺が教室に入る、ということらしい。ほどなくして、サージェスに呼ばれたので中に入る。
「初めまして。俺はブラッド・ベルリオーズ・アイリスと言います。これからよろしくお願いします」
教室内に入るとまずは自己紹介をする。一息で自己紹介をすると小さく微笑む。
すると、サージェスが俺が座る席を指定する。その場所は、窓側の後ろから2番目の席だ。
吸血鬼特有の牙は小さくしてそのままだ。八重歯だということにする予定だ。
HRが終わると俺の周りには沢山のクラスメイト達が集まってきた。「何処から来たの?」から「その八重歯って吸血鬼みたい」というのまで、俺はそれらの質問に一つずつ適当に答えていった。