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Dmmerung des tiefen roten Mondes  作者: 月猫
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小さき吸血鬼

ギルドからの任務から自分が住まう街―リーズ街―に帰ってきた少年に待ち受けていたもの。

それは、親友だった幼馴染の姿だった。

幼馴染は、棄てた故郷の村長の息子。今一番会いたくない人。

幼馴染を避けるようにして裏口からギルド内に入る。それから、ギルドマスターに任務完了の報告をしに行く。

ギルドマスターがいる部屋の前でようやく目深にかぶっていたフードを取る。

部屋をノックし「失礼します」と扉を開き、ギルドマスターに会釈をした後に言う。


「おお、ブラッドか」

「任務終了の報告にまいりました」


少年の名は、ブラッド・ベルリオーズ・アイリス。

またの名を『創帝』、『紅月の宵闇』と呼ばれている。

二つ名を知る者は数少ない。


「流石だな、ブラッド。どうだ?魔法の扱いには慣れたか?」

「ええ、大分慣れました。それでは、俺は部屋に戻ります」


ブラッドはギルドマスターの部屋から詠唱破棄で「転移」と呟くと自分の部屋に戻った。

因みにブラッドの部屋は、ギルド内にある開かずの部屋と呼ばれる位置にある。

なので、滅多に人が通らない。だから、己自身も、自室には転移でしか行かない。

一度、行った場所にならどんな場所でも転移で行ける。

たとえ、周りに結界が張られていたとしても、ブラッドの前では紙切れ同然だった。

自室に戻ると直ぐにベッドに倒れこむ。

ブラッドは追放される前に名付けられた「アリス・クラナード」という名を追放された時点で棄てた。

追放されたのを匿ってくれたのが、イヅミだった。そのイヅミについていたのが、リリン・スザク・フランク。

今の名を名付けてくれたのは、リリン。

リリンを俺の不注意のせいで死なしてしまった。

未だに後悔だけが残っている。

リリンが死んで翌年には、イヅミは、俺の事情を全てわかった上で俺に魔法の扱い方や、武道を叩き込んでくれた。

それがあるからこそ、俺は今「創帝」でいられる。


「それにしても、幼馴染の姿を見るとはな」


幼馴染、アリエル・クリス・シュバイツァー。あいつは、俺が追放されたと知って俺を探し、連れ戻しに来たのだろうか。

いや、俺は向こうに戻る気はない。故郷は捨てた。追放された瞬間から。

とうの昔に捨てた故郷だった場所。

今の故郷は此処だ。この街だ。

アリエルは、俺が追放者だろうが気にはしないと思うが俺は、あいつとの約束さえ守れずに故郷だった場所を捨てた奴だから、今更…。


「だが、俺の周りをうろちょろされても迷惑な話だな。やはり、一度会って話してみるべきか?」


部屋の中でポツリと呟いた。

夕飯を食べる気力すらなく、そのまま寝入っていった。

―――夢を見た。

これが何故夢だと分かるかはそれは、これは故郷だった場所にあるアリエルと一緒に作った秘密基地だったからだ。


「なぁ、俺達約束しないか?」

「…何を」

「俺たちが大人になった時、また此処で会うということを」

「………っ!!」


この時の俺は、まだ6歳。だが、自分が皆と違う事は知っていた。

10歳になったらこの村から出て行かなければいけない、ということも。

…とはいえ、それをアリエルに伝えるのは無理だった。

親友だったから。アリエルの想いがあまりにも純粋すぎて俺自身が泣きたくなったから。


「その約束は、出来ない、と思う。でも、出来るだけ守る」

「…?なんで、出来ないんだ?」

「俺は…っ、なんでもない。出来るだけ守る、」

「…?あ、ああ。約束な?」


アリエルの疑問はもっともで、俺も正直に自分の運命を言いそうになったものの、言わなかった。

いや、言えなかった。アリエルの悲しむ顔は見たくなかったから。

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