第八話
結局オービニエ男爵とレアは、「実害が出ていないが、悪質」とのことで、レアは学園を退学し国で一番厳しい修道院に行く事になった。勿論、何を起こすか分からないため監視はついている。オービニエ男爵は、少額ではあるが脱税を行ったなどの余罪もあり、爵位を取り上げられ平民となるらしい。こちらも数年は監視をつけたようだ。
オービニエ男爵領は男爵の弟――彼は問題のない人らしい、に引き継がれたそうな。
ピンクブロンドの髪の令嬢が現れる事なく、学園は平和になった。ただし、ノエルの周りはそうもいかない。また新しい呼び名がついたのだ。「愛の伝道師」「殿下の守護者」……また大層なあだ名がつけられた。
ちなみにノエルはその事を知らない。いつも図書室に篭っているためか、いつも本に集中しているからか、その噂は彼女が学園を卒業するまで彼女の耳に入る事はなかった。
友人のレナエルもいつ新しいあだ名が彼女の耳に入るか、その反応を楽しみにしていたのだが、あまりにも本にしか興味を示さないため諦めの境地に至ったくらいだ。
その後無事にダミアンが卒業し、ノエルたちも学園から卒業していったのだった。
ノエルたちの卒業式後――
「無事にマリユスは卒業したみたいだな」
「父上。お身体は宜しいので?」
「ああ、今日は気分が良いみたいだ」
陛下と話しているのは前国王、マリユスの祖父にあたる人物である。彼の学園時代には、ピンクブロンドの令嬢が現れ何人かの高位の令息が虜になった事件が実は起きていた。早々に気づいていた彼が手を打っていたので大事には至らなかったが。
「しかしまあ、今回はピンクブロンドの髪の令嬢が2人もいたなんて。勘違いされたラングロア男爵の令嬢も気の毒にな」
「そうですね……悪い事をしました」
「まあ仕方ない。脅威になる可能性のある人物には監視をつけるのも大事だからな。そう言えば、以前外を見た時オービニエ男爵令嬢を見かけたが……似ていたぞ」
「誰とですか?」
「我の学園時代にいたピンクブロンドの髪の娘だ。髪色も鮮やかなピンクで、顔も美人というよりは愛嬌のある顔だったな。そっくりなので二度見したぞ。まあ偶然だろうが」
「……念のため、彼女の似顔絵も入れておきますか?」
「そうだな。それが良い」
こうして王家の口承と共に、一枚の似顔絵が渡されるようになる。
その後、マリユスとフランシーヌは結婚し、彼らは幸せに暮らしている。ノエルはフランシーヌに知識量や読書量を買われ、父と同じ王立図書館の司書に抜擢された。それだけではなく、王宮の書房にも出入りが許され、時間が空いた時は本を読みあさっていた。
ノエルも結婚適齢期となり、このまま結婚をせず独身を貫くのかと誰もが思いきや、突然結婚を決める。お相手は3歳下の王立図書館の司書の男性。男性がノエルを口説き、それに押された形で結婚した。
レアは修道院で数年の間暮らしていたそうだが、急な流行病で亡くなったそうだ。その修道院近くの村で病が流行し、気づいた時には修道院に暮らす人々にも病が感染しており手遅れだったらしく、多くの人が亡くなっている。
そして年月を経て、マリユスとフランシーヌの次男が学園に入学する一年前……
「なんだと、レア嬢に似たピンクブロンドの令嬢が現れただと?」
この話は次世代へ引き継がれていく事になる――
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後日、登場人物紹介(裏設定あり)で投稿して終了となります。
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