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第一話

 第一話には主人公は出てきません。

主人公ノエルが登場するのは次話からになります。


エピローグの言葉の使い方を間違えていたので、第一話に修正しております、


面白いと思って頂いたり、続きを読みたいと思ってくださった方はブックマークや評価等して頂けると嬉しいです。励みになります!

「ノエル・ラングロア男爵令嬢‥‥ですか?」

「そうだ」


 通常であれば煌びやかな装飾があちらこちらに飾られ、レッドカーペットの周囲には溢れんばかりの貴族が詰めかける謁見室。その謁見室が今は異なる様相を見せていた。

 壇上にはこの国、クレテール王国の国王陛下と王妃が並んで座っていた。この2人も通常とは違い、控えめな衣装を身に纏っている。そして何よりも気になるのがその表情。普段であれば和やかに笑顔を見せている2人であるが、まるで能面でも被っているかのように表情が変わらない。


 そんな2人を訝しげに見ていたのが、この国の王太子マリユス・ガルリエと婚約者であるフランシーヌ・ゴーベール公爵令嬢だった。勿論、2人とも王・王妃教育を受けており表情に出すことはないが、彼らの表情を見て釈然としないのは確かだろう。その上陛下の口から出たのは、聞いた事があるかどうか記憶が無い程爵位の低い男爵令嬢の名前だ。マリユスが思わず聞き返したのも無理はない。


「父上、その男爵令嬢と我々に何の関係が?」

「それを今から伝えようと思ってな」


 そこから陛下は重々しく語り始める。話はマリユスとフランシーヌが思わず目を見張る程衝撃的な内容であり、信じられない内容であった。それと同時に、王家の黒歴史とも言うべき話であった。


「つまり‥‥爵位の低いピンクブロンドの髪色を持つ女性が、傾国の女になる可能性が高いと言う事でしょうか」

「その通りだ。その昔、王太子に指名されていた王家の者が、自身の卒業パーティで婚約者に婚約破棄を突きつけたそうだ。その際ピンクブロンドの髪を持つ男爵令嬢が、仲睦まじい様子でそばに侍っていたそうだ」

「‥‥まあ、そんな事が?信じられませんわ……」

「フランシーヌ嬢。信じられないと思うだろうが、王家に伝わる事実なのだよ。しかも残念なことに、将来王子の側付きとして控えていた高位子息たちまでもが、彼女に懸想していたそうだ。その事に激怒した当時の国王陛下は、王太子を処分し、その男爵令嬢を修道院に送ったとの話だ」

「父上、婚約破棄だけで処分になるのですか?重くても幽閉かと思うのですが……」

「それがだな。その王太子は男爵令嬢の気を引くために、よりにもよって国庫から金を引き出していたのだよ」

「何て事を……横領ですか」

「そうだ。だから処分になった」


 マリユスとフランシーヌは開いた口が塞がらない。それ程までに陛下の話は衝撃的だったのだろう。

 王太子の処分が行われたのは、何代も前の話になる。王家の醜聞であるがためにすぐに箝口令が敷かれ、当時の王太子は病死――内々に処分されている。箝口令を敷かれているため、王家以外の貴族の間では語り継がれる事なく、そのような事件があった事は闇に葬り去られていった。

 だが王家だけは違う。その事件は闇に葬られる事なく、学園に入学する前の王子たちにこの件を伝えるよう代々語り継がれてきた。それ程、王家を揺るがす事件であると考えられてきたからだ。

 勿論、たった一度の事件でそこまで‥‥?と疑問に思う人もいるだろう。一度だけなら唯の偶然、で済ませただろうが、何代にも渡ってピンクブロンドの女性が現れ、王太子や王子たちを誑かす事件が実は何度も起きていた。そのための対策はその時々の王家で取られていたため、最初に誑かされた王太子が処分されて以降は問題が起こっていないのだ。

 そしてここまで来れば、何故男爵令嬢の名が出たのか。彼らも理解する。


「で、それに関係する可能性のある令嬢が、ノエル・ラングロア男爵令嬢だと?」

「……可能性の話だ。儂の代ではピンクブロンドの髪色の令嬢は居なかったが、祖父の代では居たと聞いている。そしてお前の代では該当する令嬢が現れたのだ。用心するに越したことはないであろう。まあ……何もなければ良いのだがな」


 ここでフランシーヌは引っ掛かりを覚える。どうも国王陛下の歯切れが悪いのだ。何か思うところがあるのかもしれない。


「ひとつ、宜しいでしょうか?」

「ああ、良いぞ。フランシーヌ嬢」

「陛下はノエル・ラングロア男爵令嬢が傾国の女でない可能性も考えておられるのでは?」


 その言葉に一瞬ためらった表情を見せる。国王陛下は困ったようにちらりと王妃の方を向くと、王妃はこくり、と頷く。そして意を決したのだろうか、話し始めた。


「ああ、そうであって欲しいと願っている。これは内密な話になるが、ノエル・ラングロア男爵令嬢には儂の影を付けている」

「父上の影を!?」


 国王陛下直轄の影。彼らは国王陛下の命令のみを遂行し、この国が平和なのはその影の存在があるからだとも言われている。


「そうだ。彼女が5歳になる頃、髪の色がピンクブロンドだと気づいてな‥‥まあ、彼女はどちらかと言うとブロンドが強い髪色だったが。念のため、父親のラングロア男爵を王都の図書館の司書に任命し、彼女を王都に留めて様子を報告するよう影に命令を出している。結論を言うと問題を起こすような娘ではないな、あれは」

「と言うと?」

「ああ。5歳で此方に来てから、家でマナーレッスンをする日以外は全て図書館に篭っている。しかもラングロア男爵と共に図書館に来ては、彼が帰るまで本を読み耽っているらしい。その内容は多岐にわたり、領地経営論から哲学、数学、歴史、外交論‥‥数え切れないほどの本を読んでいる。その上、マナーは完璧に覚えているようだ。元々男爵家の領地は税収が少ないと聞いているからな。マナー以外の家庭教師を雇う余裕がないのだろうが、まさか図書館で学んでいるとは思わなくてな‥‥」

「確かに、そうお聞きするとまさか、とは思いますわね」

「その通りだ。だから可能性は低いと思うが、何が起こるか分からない事を頭に入れておいて貰うために2人を呼び出したのだ。周りの様子を把握し、最善を尽くせ。それがお前たちのやるべき事だ」

「「はい」」


 学園入学まで1ヶ月を切っている。勿論、2人の仲は悪くない。むしろ政略結婚と思えないほど仲がいい。だが、油断はできない。ノエル・ラングロア男爵令嬢とはどのような女性なのか、2人は興味を持ちながら入学する事になる。


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