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2話

 歩き始めるシルヴィアの横に並び一緒に歩く。


「そういえばリュウヤはどこから来たんだ?」


「日本からだ」


「ニホン・・・」


 日本と言ってもピンときていない様子のシルヴィア。


「日本知らないのか?」


 俺がそう言うとシルヴィアは慌てたように口を開く。


「し、知ってるぞ!あれだろ、刀の国!」


「・・・まあ、間違ってないけど」


 間違ってはないんだけど随分偏った知識だな。


「あ、え、えっと、すまない」


 俺の反応にシルヴィアはシュンとしてしまう。そんな表情をする彼女に今度はこちらが慌ててしまう。


「い、いや。いいよな、刀。なんていうかカッコいいよな」


「わかるか!」


 俺が刀のことを褒めたとたんシルヴィアは興奮したように声をあげる。


「リュウヤの言う通り見た目カッコいいし綺麗でまるで芸術品のようだ。でも、見た目だけじゃなく実用性もかなりのものなんだ。まず、刀は鞘にしまったままにする。そして、刀を一気に引き抜くことで素早い斬撃を放つことが出来る。いわゆる抜刀術というものだ。さらに、剣と違って鍔迫り合いなどするような作りではなく相手の攻撃を受け流すことに特化しているんだ。それと・・・」


「お、おう」


 刀について熱く語るシルヴィアに若干引きつつ、女の子がよくこんなに刀について知ってるなと疑問に思う。


「はっ!す、すまない。つい・・・」


 俺の様子に気がついたシルヴィアは申し訳なさそうに謝ってきた。


「いや、何ていうか刀好きなんだな」


 熱く語る彼女からは刀に対する熱意のようなものが感じられた。


「う、うむ。まあ、刀だけでなく剣全般が好きだ」


「へ~」


「・・・やはり、女らしくないか」


 どこか不安そうに聞いてくるシルヴィア。そんな彼女に俺は思ったことをそのまま口にする。


「確かに女らしくはないな」


 俺の言葉を聞いたシルヴィアは悲しそうな顔をする。


「でも、いいと思う」


「え?」


「自分が好きなことに対して男らしい女らしいとかそんな些細なことどうでもいいと思う。そんなことで自分の好きなことを我慢するなんてばからしい。好きなら周りのことなんて気にせず自分の好きなようにすればいい。例えそれが周りから異質に見られたとしても。それが自分のやりたいこと好きなことならためらう必要なんてないと思う」


「・・・随分と傲慢な考え方だな」


 そう言って苦笑する彼女は苦笑を浮かべる。


 確かにシルヴィアの言う通り傲慢な考え方かもしれない。でも、俺はこれが俺の考えで俺の信念と言えるものでもあるので俺はこの考え方を変えようとは思はない。


「それに俺は刀のことについて話してる時のシルヴィアは可愛くて好きだぞ」


 するとシルヴィアはバッと顔を俺から背けた。


「そ、そうか。ありがとう」


 顔を背けたため表情は分からないが彼女の耳が赤く染まっているので照れているのだろう。


「かわいいな~シルヴィアは」


「なっ!?」


 そんな彼女の反応につい思ったことが口に出てしまった。


 すると、シルヴィアは背けていた顔をこちらに向けた。やはり、その顔は赤く染まっていた。


「あまりそういう事を言わないでくれ」


 照れたシルヴィアは小さな声でつぶやいた。


「そういえばシルヴィアは何で剣が好きなんだ?」


 さすがにこれ以上はかわいそうなので話題を変えよう。


「む、ああ、それは私の魔法が関係しているんだ」


「魔法が?」


「そうだ。私の魔法は創剣魔法(ソードクラフト)といって私の想い描く剣を作り出す魔法だ」


 シルヴィアが自分の魔法について教えてくれた。なんかカッコいい魔法だな。


「それもあっていろいろ剣について調べているうちに剣の魅力にはまってしまって、それから剣が好きになったんだ」


 そうシルヴィアはどこか懐かしそうに話してくれた。


「へ~、シルヴィアの剣好きは自分の魔法からか」


「リュウヤの魔法はなんだ?あ、言いたくなかったら言わなくてもいいのだが」


 シルヴィアが俺の魔法について聞いてきたのだが。


「いや、実はまだ分からないんだ」


「分からない?」


 俺の言葉にシルヴィアは首を傾げた。


「ああ。つい最近魔力に目覚めたばかりだからまだ魔法すら使ったことがなかったんだ。というか魔法についても最近知ったからな」


「・・・魔力に目覚めた。それはつまりいきなり魔力も持ったといことなのか?」


 それに頷くとシルヴィアは信じられないというような顔を向けてきた。


「信じられないか?」


 俺がそう聞くとシルヴィアは首を横に振る。


「いや、リュウヤが言うなら信じよう。ということは、リュウヤは少し前まで一般人だったといことか?」


 なんだろうこの信頼。出会ってまだ数十分というのにこの信頼の高さ。こんな簡単に他人を信じってしまっては悪いやつに騙されそうで怖いのだが。


「そういうことだな」


「ふむ。一般人が魔力に目覚めるなどといった話は聞いたことがないな」


「やっぱりそうなのか?」


 これは俺の家に来た男性も言っていたのだが俺のような一般人が魔力に目覚め魔法士になるというのは今までになかったことだという。


「ああ、普通魔法士は魔力を持って生まれくる。そして、10歳ほどで魔法を使えるようになるんだ」


「なるほど」


「だから、今までに一般人が魔力を持ったなどといった話は聞いたことがない。ということは・・・」


 ここでシルヴィアは何かに気づいたようでいったん言葉を区切った。そして、真剣な表情をした。


「・・・リュウヤよく聞いてくれ。魔法士は魔力の扱いを知っている。いや、慣れていると言った方がいいな。なぜなら生まれたときから魔力がその身に宿っているのだから魔力の使い方を知っているのだ。この魔力の扱いを知っているというのが重要で通常魔法を使えるようになっても魔法の暴発といった事故はそうそう起こらない。起こったとしても一回ほどで魔法の扱いを理解できる」


 そこまで言われればシルヴィアが何を言いたいのか理解した。


「リュウヤも気づいたみたいだな。そうだ、リュウヤは最近魔力に目覚めたばかりで魔力の扱いを知らない。そして、いつ魔法を使えるようになるか分からないし魔法が使えるようになっても魔力の扱いを知らないため暴走する可能性が高い」


 なるほど。だから、魔力に目覚めてその日に転校が決まりここに連れてこられたわけか。魔法の暴走がどのようなものか分からないがシルヴィアの物言いからかなり大変なことのようだ。


「心配するな。リュウヤは私が守ってやる」


 俺が魔法の暴走について考えているとシルヴィアは俺が怖がっていると思ったのか優しく言葉をかけてくれる。


「ありがとな、シルヴィア」


 男として女性に守られるのはどうかと思ったが、シルヴィアが俺を心配してくれての言葉だったので俺はそれに笑顔でお礼を言った。


「うむ、任せろ!」


 そして、シルヴィアも笑顔を返してくれた。


「む、着いたぞ。ここが王立リベルタス魔法学園だ」


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