傍観
「早く起きないと遅刻するよ」
彼女の声で僕は起きた。僕たちは同棲しており僕も彼女も大学に通っている。
咲は朝食を用意していてくれたが、僕は食欲がなかったので「いらない」と返事をしたが寝起き声だったからか、咲は何も言わず先に家を出て行ってしまった。彼女は電車通学だが僕は徒歩15分のところに大学があるので必然的に彼女の方が先に家を出るのだ。僕は家に一人でいる時は必ず鍵をかける習慣があるので彼女が家を出てから5分後くらいに鍵をかけシャワーを浴びに風呂場に行った。シャワーを浴びながら昨夜の行為を思い出す。昨日は彼女が生理だったため、性行為はできなかったが挿入をしなくてもできることはある。僕はそんなアブノーマルな行為を思い出して風呂場でマスターベーションをした。夜更かしのせいで食欲はないが性欲はまだ有り余ってるようだ。風呂を上がった後は急いで支度をして鍵をしっかり掛け直し大学へ向かった。
家を出てから咲は少しだけ調子が悪く、表情が暗かった。昨夜、自分のせいで性行為が出来なかったことに責任を感じていたのだろう。咲にとって拓也は初めての彼氏である。拓也と会ったのは新百合ヶ丘のパン屋でバイトを始めた時で彼はバイトの先輩としてだった。パン屋は廃棄の量が多く実家を出た人には割といい職業だと思うが賄いもパンなので飽きてしまう。そんなパン屋のあるある話で先輩と意気投合して恋仲になった。そんな事を考えている内に大学に着いた。咲の通っている大学は多摩の方にありモノレールに乗る必要がある。拓也とは向ヶ丘遊園に住んでおり上手く乗り換えをしても30分以上はかかってしまう。
咲は大学を降りる瞬間に太ももから腰にかけて誰かの手によって触られる感触がした。
後ろを振り向くとそこにいたのは親友の亜美だった。亜美も先と違った可愛さがある。
「咲さん、ご馳走様です」などとふざけた事を言って亜美は横に並ぶ。 「びっくりしたー!痴漢かと思ったよ!」などというが実際は偶々当たってしまったと思っただけだった。それだけ大学は駅が混むのだ。2人は他愛も無い会話をしながら教室に向かう途中に3限休講の知らせが届きなんとも言えない気分になった。咲と亜美の今日の授業は1限と3限だけで組んでおり、3限が休講ということは1限だけになったのである。一つの授業のために30分以上かけて大学に来るのは複雑な気分だが、早く家に帰れる事に咲は喜んでいた。
夕方、僕は大学から家に帰った。いつも通り、咲より早く家に帰ったつもりだったが、家の鍵が開いていることに気づいた。「家を出た時にはしっかり確認したはずなのに」と思ったときには遅かった。咲は夢でも見ているかのような顔でこっちを見ていた。「どなたですか?」と、怯えた声で言われる。僕は咄嗟に家の中に入り鍵を閉め咲のところまで走り首を絞めた。昨日と同じ感触だが、やはり男性より女性の方が少しばかり首が細い。僕はそのまま咲の喉仏に両手の親指を食い込まる。咲は必死に抵抗したが数秒後には痙攣し始め、やがて心臓が止まる。僕は人形のように力がなく、人形にしては重すぎるそれの服を脱がし性行為を始めた。
後日、僕は亜美の家で昼のニュースを見ていた。
向ヶ丘遊園の家で咲の死体が見つかったようだ。
「家には2人の死体があり、男性の中村拓也さん、女性の方は一条咲さんでした。中村拓也さんはベットの上で布団がかけられた状態で一条咲さんの12時間ほど前の10月8日火曜日の23時ほど殺されていたと推測されますれます。一条咲さんは10月9日水曜日の11時ほど窒息死した状態で発見されました。」
僕はテレビを消し亜美の家のベッドに入る。
初めて書いたので、下手などと感じられるかもしれません。