第2話
生活指導室、という大仰な名前の教室で、少女は、3人の高校教師に囲まれて座っていた。
目の前に、『生活指導主任』というこれまた大仰な名前の肩書きを持った小太りな中年男性。
生活指導主任の隣に、2年C組担任の女性教諭。
少女の後ろには、今年やっと採用試験に合格した若い男性教諭。
「これはなんだ!?」
生活指導主任に、ノートパソコンの画面を出される。
「何って、動画ですね」
ノートパソコンの中では、動画が再生されていた。
「動画自体のことを言ってるんじゃない!問題は内容だ!」
少女は、生活指導主任の唾が飛んでくるのを鬱陶しく思いながら、再び口を開いた。
「2年C組の枢木さんが同じくC組の榊さんとその手下の人達にトイレの個室の上からホースで水をかけられている動画、に見えますが」
「それがどういうことだと聞いているんだ」
「いじめ、じゃないですか?」
生活指導主任の隣の女性教諭が泣きそうな顔になって、会話に割って入った。
「榊さんは優秀な生徒です!いじめなんてするはずがない!」
「担任は、口を揃えてそう言いますね」
少女はさして興味もなさそうに言った。
担任は、押し黙った。
「そんなことよりだ、三嶋」
生活指導主任が話を変える。
この会話の中でいじめ問題より大事なことがあるとは思えないが、と少女は思ったが、口には出さない。
「この動画、どこで手に入れた?」
「隠しカメラです」
少女は聞かれたことをきちんと答えているのだが、教師たちの求めている答えではないらしい。
「女子トイレにカメラがあるのか」
「はい。1~3階の女子トイレと女子更衣室と教師の女子更衣室と女性の職員トイレと1年A組の教室ですかね」
少女は、あくまで淡々と告げた。
「誰が、そんなこと………」
少女の後ろに立っている男性教諭が呟いた。
「いくつも教室がある中で1年A組だけにカメラを仕掛けているなら、その教室に堂々と入っても怪しまれない人物ですね。基本的にそういうことをするのは男性なので、1年A組の副担任の森山先生でしょうね」
教師陣は、言葉を失っていた。
「──………なんのために、そんなことするんだ」
やっと口を開いたのは、生活指導主任だった。
「自分の性処理に使うか、ネットに上げてるんじゃないですか」