死の眠り
冷たい。
冷たい風。
闇が満ちる。
地に落ちる白い光。
重く圧し掛かるように大きな満月も、また、冷たい。
灰色の石の群れ。
黒い煤けた土。
ここは墓場だ。
誰もいない。
忘れ去られた場所。
温度の欠片もない、優しさなど一滴も含まない風が、ただ慰めのように墓石を撫でる。
朽ちた鉄柵。
既に形をなくした墓跡。
その冷たい土の下には、もう何もいないのだろう。
闇夜に沈む墓場に、寄り添うのは無関心な月だけだ。
大きな樹々が落とす影。
あらゆる輪郭を曖昧にし、月光はただ闇を深くする。
嘆きも悲哀も歓喜も激情も、ここにはない。
ただ冷たく、死が眠るのみ。