強行の門
一歩一歩が重い。
この重さはきっと心と繋がっているんだ。
でも僕は歩みを止めない。
勇気を出して僕は関所の男に話しかけた。
一見して、彫りの深い顔と黒髪に少し茶色の混じっているその男はまさしく、外人であった。
ゲルマン系か………?英語が通じれば良いのだが………。
震える手を一生懸命フレンドリーに振りながらたどたどしい英語を口にする。
「…………へ、へぇい」
男はあきれているような警戒しているような顔だ。
英語が通じないのか?それとも僕に警戒しているだけか……?
「なんだ、そこのお前、今なんと言った?」
意外、それは日本語であった。
なんだ?日本語が話せるのか?
不幸中の幸い。僕は安堵した。
「ぁ………あの、僕、に……日本人なんですけど大使館に行きたいのですが………」
「は?日本人?大使館?知らないな………。お前、何処の出身だ。」
思考が停止する。こいつ、日本語を話しているくせに日本人を知らないだって?なんだこいつは。
「………ぇ?だ、だから日本ですよ…………」
「ニホン?………帝都発行の許可証を持っているか?」
「へ?も、持ってません………。」
「じゃあ駄目だな。大人しく故郷に帰るんだな。」
はぁ?ふざけるなよぅ………だいたい帝都って何処だよ………僕はよくも解らないのにこんなところに来ちゃったんだぞ。
「な、なんで………。故郷って、僕はここが何処かもわかってないのにそんな言い方無いだろ!!!」
「決まりだ。許可証がなければ通行は出来ない。」
「と、通せよ!!!」
無理やり通ろうと半ば突進のような形で突破しようとした。
瞬間。男の腰に凶器が見えた。
それは紛れもなく剣で。
二度目の瞬きの間にその剣は僕の喉元に。
血の気が失せる。ビビって声もでなかった。
「………そんなに通りたくば。監獄に通してやろう。特別に許可証も書いてやるぞ。」
「ふっ…………ふふ、ふざけるなよぉ!!!通せよぉ!!!」
「ならば、望み通りに。」
首筋に衝撃。僕は呆気なく意識を失ったのだ。