第62話 誕生日パーティーという名の外交
帝国歴1792年12月、大陸でも北方に位置するマリブールは白い雪に覆われていた。マチルダによると例年よりも初雪が遅かったそうだ。こう雪が降り積もると荷馬車の移動は大変になる。この時期は車輪を車止めで固定し、スキー板に変えてしまうのが雪国の習慣だ。
だが悪い事ばかりではない。北方の丘陵の先の都市、ロストフとの直接の行き来は絶えてしまうが、その代わり南方の湿地帯が凍結したことで、マリブールからガリア王国首都ロリアンに直接交通可能になっている。
そんな風に隼人が窓の外を眺めていると、ふとスキーの開発を忘れていたことを思い出す。
「スキーか……、あれば便利だな。スキー板は木材で何とかなるとして、ストックは竹製だったか?この辺りでは竹林がないからストックなしじゃあ指導できないなぁ」
隼人はスキーのことを頭から押しやるとブレストの海軍に関心を向ける。ブレストではつい先ごろ武装帆船が竣工した。3段櫂船も4隻目が同時期に竣工し、今はガレー用の船台を武装帆船に対応できるように拡張中である。
これから海軍の主力は武装帆船(正確には商船の中では一般的であるコグ船より大型なハルク船をベースに数門の軽砲を搭載したもの)に決定された。理由はガレー船の漕ぎ手が不足しているためである。奴隷は鉱山やら土木建築やら船の建造やらで需要は天井知らずだ。もちろんこれらの仕事にも専門家がおり、彼らには適切な給料が支払われている。
ついでに言うと、海軍の主力になる武装帆船も白兵戦を重視したものに変える予定だ。火薬の量が不足しているので大砲を思う存分使用できるか疑問符が付いたのである。不満ではあったがない袖はふれない。ただ、5年以内には解決する目途が立っているので、ガレオン船やキャラベル船、さらにはコルベット艦やフリゲート艦の設計をアントニオに頼み、さらなる大型の船台の建造にも取り掛かった。
ちなみに海軍は現在ブレストからロリアンまでの海上貿易と船団の護衛の仕事をしている。護衛料金は海賊よりも安くしている。この仕事によって海賊との小競り合いがたまに起こっているようだが損害はなく、いい訓練になっているようだ。
一方で製鉄は、反射炉は順調に生産量を伸ばしているが、高炉と転炉はいまだ試行錯誤の域を出ていない。硝酸の化学合成もしかりだ。元からすぐに成果が出るとも考えていなかったので、アントニオ達に気長に研究してもらうしかないだろう。
今度はマリブールの街へ意識を巡らせる。マリブールはロマーニ帝国時代に海軍基地ブレストと国境都市セダンを結ぶ都市として栄えた。しかしブレストからロマーニ帝国海軍が去るとマリブールの地位は一気に凋落し、衰退。旧城壁の内側に新城壁が建てられる有様となった。マリブール中央が新市街と呼ばれ、城壁と城壁に挟まれた地域が旧市街と呼ばれていた。
だがそれは過去のマリブールの姿だ。ケルンとのつながりを得て、炭鉱が発見された今、マリブールは工業都市への道を歩み始めている。パウルの宣伝により多くの技術者や学者が集まり始めている。そして彼らを支える商工業者の女性たちに炭鉱などで働く奴隷達。ガリア王国の商会もマリブールの先端商品と急速な開発の利益を得ようと支店を競うように出店している。いや、新市街は土地が限られるので文字通りの競争なのだ。
一方で新旧の城壁に挟まれた旧市街の再開発も急速に進んでいる。アントニオがロマーニ帝国時代の遺物を懸命に保護していたが、それを上回る速度で再開発が進んでいる。その主役はもちろんコンクリートだ。新たにマリブールへやってきた人々の多くは旧市街に移り住むのだが、最初にコンクリート造りの集合住宅に違和感を感じることが風物詩となっている。
これだけ街が拡大すれば警備も増員を免れず、マリブールとブレストで合計500名だった警備隊が、マリブールだけで500名、ブレストに300名の計800名まで増員している。そしてマリブールは彼ら彼女らを養えるほど景気がいい。マリブールの鉄や新製品を求めて多くの行商人が訪れるからだ。
そしてマリブール周辺の治安は大陸でも指折りの良さを誇っている。無論、陸軍が奴隷狩りに精を出し、周辺の盗賊をほぼ駆逐してしまった事、海軍の増強とブレストの沿岸要塞の強化で海賊もうかつに手を出せなくなっている事が理由である。それでも奴隷の供給が若干追いつかず、奴隷商を通じてよそから奴隷を購入しているほどだ。盗賊を動物に例えれば、乱獲のし過ぎで絶滅危惧種になった生物と言えるだろう。
隼人は執務室で窓を眺めながらそんなことをつらつらと考えていると、執務室の扉が勢いよく開かれた。
「隼人!そんなところでぼんやりしていないでお前も手伝え!」
宰相のマチルダだ。今日は12月7日、明日は隼人の誕生日パーティーである。もっとも、内輪で祝うようなささやかなものではない。近隣から貴族を呼んで交流を深める事が目的だ。さらに言えば、10日はエーリカの誕生日でもあるので、3日3晩の宴になる予定だ。
それが終わると今度は荷物をまとめてマリブールを南下し、ロリアンでアンリ王主催の新年会出席しなければならない。まさに師走である。
ところがこの隼人、前の世界ではよく言えばインドア派、悪く言えば引きこもり気質であった。当然交友関係は狭く、人付き合いは苦手である。これでハーレムを作れるなんて奇跡もいいところだが、隊商という閉ざされた集団で濃密な人間関係を構築してきたのだ。一度濃厚な人間関係になってしまえば隼人は意外と気さくで懐の深い人物である。
だが今回は、これまでのパーティーで何度か顔を合わせたが、ただそれだけの人々と付き合わねばならないのだ。正直なところ、気が滅入る。だからこうして現実逃避をしていたのだが、それももう許されないようだ。
「わかった。わかったよ。今行く」
隼人はおっくうに立ち上がり、パーティー会場の確認に向かった。
翌8日の昼に身内で誕生日パーティーを済ませ、その晩に隼人の誕生日パーティーという名の外交が始まった。燭台の油やろうそくに火が灯され、周囲を照らしだす。テーブルにはご馳走が並ぶ。冬野菜の温野菜、出汁をそのまま使った魚介類のスープ、牛肉のステーキ、トンカツ、塩焼き鳥、カットされたリンゴ。そしてビール、ワイン、ラム、ウイスキー、はちみつ酒。リンゴジュースなどのソフトドリンクも用意されている。
普段とは格段に、いや他のパーティーから考えても豪勢な、子爵にしては金をかけたパーティーだった。隼人が今回くらいはと前の世界並みの料理を要求した事も理由だが、最近の発明や商工業の発展で中島家の財務に余裕がある表われでもある。
まずこの時代、油もろうそくも高価だ。夜中に灯りを求める時点で金持ちの特権である。牛は農耕用に輸送用と、食用にする以外にも用途が多く、味付けに使われる胡椒をはじめとする香辛料の多くは遠く大陸南東部から運ばれてくる。ここにもし隼人が醤油などを使った味付けを求めれば費用はさらに膨らんだことだろう。規模と頻度を無視すれば王族並みの贅沢さである。
余談だが今回の事ではちみつの高価さを知った隼人はエレナに巣箱と遠心分離機を用いた近代養蜂の開始を指示することになる。
「本日は忙しい中お集まりいただき、まことにありがとうございます。ささやかながら食事も用意してございます。皆さまどうぞお楽しみください。ではガリア王国のますますの繁栄と国王陛下の壮健を願って」
隼人が杯を掲げて音頭をとり、誕生日パーティーが始まった。今回は立食形式で、上座も下座も関係ない。もっとも、そのあたりを気にする伯爵や公爵といった旧貴族は来ていない。成り上がり者の新貴族のパーティーよりも優先すべき物事がたくさんあるのだ。隼人も一応招待状を出したものの、予想通り辞退の返事ばかりだった。返事すらなかった家もある。
だから今日の出席者は子爵、男爵といった新貴族に騎士団関係者、隼人から金のにおいを嗅ぎつけた商人達ばかりだ。隼人達からの出席者は各部門の責任者達に隼人の家族達だ。とはいえ桜は妊娠中であることから早々に宴を中座することになっており、セレーヌも身分の発覚を恐れて不参加だ。
ちなみにマリブールはその地理上、セダンに従属する関係にあり、戦ではセダンの軍の指揮下に入る。ところがセダンはその重要性から王国直轄領となっており、騎士団と代官が中央より派遣されている。今回のパーティーでは代官のエモン子爵とセダン騎士団団長のベルニエ男爵が出席している。政軍双方のトップが同時に外出する事はどうかと思ったが、セダンはそれが許されるほど今は安定しているらしい。
「これはこれは、中島子爵殿。ご勇名はかねがね伺っておりますが、こうしてお会いするのは初めてですな」
隼人達が真っ先に挨拶に向かったのはエモン、ベルニエ両氏の下だ。マリブールとセダンの関係を考えると当然の処置だ。本来ならエモン子爵の代官着任の祝いに隼人の方からセダンに出向くべきであったのだが、彼の正式な代官就任がつい先日であったこともあり、この場で初顔合わせとなったのだ。
セダンの代官が決まらなかった理由は子爵以下の貴族の論功行賞が遅れたことも原因だが、伯爵や公爵などもセダンを欲しがったためである。アンリ王としては、隼人、というよりもセレーヌの監視のためにぜひ直轄領にしたかったのだが、その調整に時間がかかったのだ。
エモン子爵は商人の出、ベルニエ男爵は傭兵出身だがアンリ王の信頼は厚い。おそらくセレーヌの出自もある程度知らされているだろう。そうであっても気さくな人柄で、格式を重視しない性質を2人とも持ち合わせている事にはありがたかった。
「こちらこそ、これからよろしくお願いします。お二方の就任の折に挨拶に行けずじまいで、無礼を働いてしまいました事をお許しください」
「いやいや、中島殿も忙しいと聞いておりますからな。なんでもすこぶる景気が良いとかで。おかげでセダンも潤っておりますぞ」
「騎士団としては、盗賊が一掃されて仕事がなくなって暇をしていたところだ。今回のご招待、ありがたく思っている」
「そう言ってもらえれば幸いです」
エモン子爵もベルニエ男爵も隼人に純粋に好意を持ってくれているようだ。隣の領地の責任者がこうだとやりやすい。
「それにしても奥方様がたはお美しいですな。両手に花、どころか花束ですな。羨ましいことです」
ベルニエ男爵が隼人の傍に控える隼人の妻達を一瞥してエモン子爵に視線を送る。
「ところで、これはうちの妹なのですが、身びいきながら良き女性です。紹介しましょう」
エモン子爵の言葉に後ろで控えていた淑女が歩み寄る。長いブロンドの髪をした、おしとやかな美少女だった。思わず目が奪われ、マチルダにももをつねらる。
ここで中島隼人の噂を確認してみよう。『レ・ソル砦の英雄』、『商人子爵』、『発明子爵』、
『成金子爵』、『一度に7人と結婚した女狂い』。……最後だけ不穏だ。これは梅子から報告され、桜主催の家族会議で対応が協議された。会議の結果、見知らぬ女をこれ以上家庭に入れる事はないということになった。
というわけで隼人がパーティーに出席する時は必ず妻が付き添い、言質を与えない方針を取ることになった。
「エモン子爵の妹のジゼルと申します。ぜひお見知りおきを」
ジゼル嬢は桜達7人の評価するような冷たい目線を飄々と受け流して挨拶した。中々の大物のようだ。肝が据わっている。
「お美しいですな。あなたほどの美貌と才覚をお持ちでしたらきっと良い縁談に恵まれるでしょう」
隼人は実質的な0回答を突きつける。3人は噂から予測していた言動とは程遠い隼人の返事に動揺する。
「だが、なかなかいい娘だな。セオドアのところなんかどうだ?まだ騎士だが商人出身でうちの財務担当で中島商会の会長もやっている。有望株だぞ」
そこへエーリカがいらぬ事を言う。子爵の親類に騎士をあてがうなぞそうそうできる事ではない。その場の全員が正気を疑うような目を向ける。そんな目を気にせずにエーリカはセオドアを呼ぶ。
すると疲れた顔でセオドアとその妻、アエミリアがやってきた。商人の娘たちが自分たちを側室に、いや妾にと押し寄せてきていたからだ。アエミリアのささやかな抵抗がなければセオドアは望まぬ結婚を何度もする羽目になっていただろう。その様子を見てエモン子爵はセオドアの評価を変える。商人が群がるということはそれだけ商機があるということだ。
「エーリカ閣下、なんでしょうか?」
「セダン代官エモン子爵の妹のジゼルだ。なかなかの娘だからお前達で相手をしてやれ」
「「ええっ!」」
セオドアとアエミリアが抗議の声を上げるが、エーリカは2人の肩を叩いてジゼルの前に押し出す。ジゼルの方もだいぶん困惑している。
隼人はエモン、ベルニエ両氏と連絡事項を含む雑談を終えると、セオドア達を残して他の挨拶に向かった。挨拶伺いを待ってもいい立場なのだが、顔合わせが必須な人物にはそうもいっていられない。次はロストフ代官、ブルザ男爵に挨拶する。
「ブルザ男爵ですね。雪道の中、お疲れ様です」
「こ、これは中島子爵。ご丁寧に」
ブルザ男爵はよもや隼人の方から挨拶に来るとは考えていなかったので、少し慌てた。
「ロストフの景気はどうです?」
「はぁ、石炭がありますから、それなりには。閣下のマリブールにはかないませんよ。しかし雪が解ければマリブールとの交易路がつながります。その時はどうぞごひいきに」
ブルザ男爵も元は商人だ。商業の振興にはそれなりの腕はあるらしい。だが軍事の経験はない。そのため彼の治める王国直轄領はロストフのみだ。その周辺は新貴族にあてがわれている。ただし、ロストフはスカンジナビア地方北部を攻略する軍の中継地となっているため、雪が降る前は大変儲かっていたようだ。
ブルザ男爵と政務に関する雑談をしていると、彼はおずおずと娘を紹介してきた。女好きのレッテルはなかなかとれるものではない。パウルあたりに頼んだ方がいいのだろうか?
ちなみにその娘は美人ではあったが、桜達のお眼鏡にはかなわず、見事に袖にされる結果となった。さすがにかわいそうなのでロストフからの石炭輸入を増やす約束をしておいた。
その後は商人や騎士団、新貴族から挨拶攻勢を受けた。商人に関しては商会の支店をマリブールに置いたのでその挨拶を受けた。ついでに多くの女性も紹介されたが、桜達の牽制の前にことごとく追い払われた。
一方で騎士団と新貴族は女性の紹介は同じだが、スカンジナビア地方への出兵も催促してきた。彼らは陸路で征服するつもりのようだが、隼人の意見ではそれは無謀としか言えなかった。
スカンジナビア地方はほとんどがフィヨルド地帯で、大軍の行軍に向かない山地ばかりだ。漁業、林業、鉱業が盛んなので決して旨みがないわけではないが、まず制海権を握らねば話にならないだろう。
隼人はそれを説明し、今は海軍の増強に注力していると弁明したが、新貴族のいくらかからは弱腰ととられたようだ。まあこんな話も理解できないようでは早死にするだろう。
一通り挨拶が終わると桜が宴を中座する。その後は食べて飲んでの大騒ぎだ。この場にいるほとんどの人間は平民か平民出身なのでマナーなど気にする者は少数派だ。隼人はこの宴で少しでも印象をよくできればと一緒に騒いだ。
2日目は軽く昼食会で済ませる。明日はエーリカの誕生日パーティーなので昨日のように盛大に行うつもりだ。なにせ隼人はガリア王国子爵であるとともに、アーリア王国侯爵たるバイエルライン・フォン・エーリカの伴侶でもあるのだ。政治的に隼人とエーリカの誕生日は重視せざるを得ない。当のエーリカはめんどくさがっていたが、隼人は気合を入れていた。
「なんか、一昨日とメンツがあまり変わらないな……」
「それはそうだろう。俺なんかの誕生日よりアーリア王国の新年会の方が大事さ。さすがにこの時期だとマリブールからケーニヒスベルクには間に合わん」
エーリカはそうは言うが、少し悲しそうだった。だがケルンからフリッツが、ケルンの隣の領地からバウアー・フォン・クルト伯爵が来ると笑顔になった。
フリッツは先代からバイエルライン家を支えた重臣であるし、バウアー伯爵はエーリカの幼少期の後見人だ。
「フリッツ!よく来てくれた!クルトおじさんもしばらくぶりです」
エーリカは嬉しそうにフリッツとバウアー伯爵に軽く抱擁する。
「さすがに9カ月も顔を見せてくれなければ心配にもなりますよ」
「ならフリッツもマリブールで働くか?」
「ルドルフが可哀想だから遠慮しますよ」
エーリカとフリッツの主従は楽しそうだ。
「エーリカ、お前が結婚するとは思わなかったな。やんちゃなガキのまま育ったというのに」
「ひどいな、クルトおじさん。俺だって女なんだからな。こいつが前から手紙に書いてた隼人だ」
エーリカの頭を撫でようとするバウアー伯爵の手を避けて、エーリカは隼人を前に突き出す。
「ええと、初めまして。エーリカの夫の隼人です。お2人はどういったご関係で?」
「私はエーリカの後見人だった男だ。エーリカの父のいとこでもある。エーリカの眼鏡にかなう男が現れて神に感謝しているよ」
「こちらこそ、エーリカをこんな素敵な女性に育てていただいて感謝いたします」
「んもう!隼人!そう言われると照れるじゃないか」
エーリカが顔を赤らめながら隼人の腕に抱き着く。
「ははは、あのやんちゃが女の顔をするようになったもんだ」
「おじさんひどい!」
バウアー伯爵はエーリカの髪を乱暴に撫でる。エーリカは怒りながらもまんざらでもなさそうだ。
「ははは、そう言えば閣下はアーリア王国の新年会には行かれないんですか?」
「閣下はよしてくれ。お前はエーリカの婿なんだから俺の家族同然だ。クルトおじさんでいいぞ」
「いやいやいや、さすがに初対面でそれは抵抗がありますよ。お気持ちだけいただいておきます」
「むっ、それは残念。エーリカの婿にしてはしっかりしているな。新年会はこの日のために欠席にしたよ」
「それは……、ありがたいことです。しかし良かったのですか?」
「伯爵1人欠席したところで大事にはならんよ。それよりもエーリカの相手を見ておきたかったからな。どうやらエーリカを無理やり引き取る必要はなさそうだ」
「ははは、これからも妻達に捨てられない様に精進しますよ」
後で聞けば、バウアー伯爵は隼人が女好きと聞いて心配していたらしい。エーリカの後見人だけに、彼の期待を裏切らない様に努力していかねばなるまい。
アーリア王国からはバウアー伯爵の他は数人の騎士が出席していた。アーリア王国も隼人のことを注意はしているという事だろう。密偵なんかも置いていくのだろう。そのあたりの処置は梅子に任せるとして、隼人はマリブールの開発を改めて誓う。とはいえ今は外交だ。マリブールの開発にかまけて宮廷で孤立したら目も当てられない。隼人は終日、同僚達と酒を酌み交わすのだった。