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第128話 『帝国の近代軍制史』及び『帝国の海上覇権』より抜粋

 長らくお待たせしました。ようやく更新にこぎつけました。

 執筆していると解説本のようになってしまったので、今回は史書からの抜粋風に仕上げてみました。

 次回は普通の小説に戻ろうと思います。しかしプロットの空白期間なので執筆に難儀しそうです。

 帝国歴1801年1月27日、隼人主導の下で海軍の再編制が完結した。領土の急拡張と海賊退治に対応すべく海軍は規模を拡張しつつその姿を変えたのだ。



 まずは海賊、及び敵海軍に対する機動戦力として常備艦隊が創設され、隷下に第1~3艦隊を置き、第1艦隊に将旗を上げた。

 各艦隊の帝国歴1801年1月27日の編制は以下の通り


  第1艦隊

    第1戦列艦戦隊 戦列艦4隻

    第2戦列艦戦隊 戦列艦4隻(うち3隻建造中、欠)

    第1護衛戦隊

      第1護衛隊 小型フリゲート4隻

      第2護衛隊 小型フリゲート4隻


  第2艦隊

    第1巡洋戦隊 大型フリゲート4隻

    第2巡洋戦隊 大型フリゲート4隻(うち2隻建造中、欠)

    第2護衛戦隊

      第3護衛隊 小型フリゲート4隻

      第4護衛隊 小型フリゲート4隻(うち1隻建造中、欠)


  第3艦隊

    第1駆逐戦隊

      第1駆逐隊 小型フリゲート4隻

      第2駆逐隊 小型フリゲート4隻

      第3駆逐隊 小型フリゲート4隻

      第4駆逐隊 小型フリゲート4隻

    第2駆逐戦隊

      第5駆逐隊 小型フリゲート4隻(うち1隻建造中、欠)

      第6駆逐隊 小型フリゲート4隻(うち3隻建造中、欠)

      第7駆逐隊 小型フリゲート4隻(全艦建造中、欠)

      第8駆逐隊 小型フリゲート4隻(全艦建造中、欠)


 この3個艦隊が常備艦隊司令官隷下で一体運用されて各地の海賊討伐に転戦する事になる。



 次に後備艦隊が創設され、軍港から鎮守府、警備府、要港部に改称された港湾、及びその周辺の警備に任じられる。後備艦隊司令官はブレスト鎮守府の地上に将旗を掲げた。

 帝国歴1801年1月27日現在における隷下部隊の編制は以下の通り


  鎮守府防備隊

    小型フリゲート16隻

    コンクリート砲艦4隻

    その他支援艦艇


  警備府防備隊

    小型フリゲート12隻

    コンクリート砲艦4隻

    その他支援艦艇


  要港部防備隊

    小型フリゲート8隻

    コンクリート砲艦2隻

    その他支援艦艇


  ブレスト教育隊

    大型フリゲート4隻

    小型フリゲート8隻


  ブレスト特別防備隊


 後備艦隊は港湾警備、船団護衛及び人員教育を主任務とした。

 しかしブレスト特別防備隊は編制上は後備艦隊司令官隷下にあるものの、その装備は皇帝隼人の直接命令下にあり、創設当初から「皇帝陛下の玩具箱」のあだ名を賜った。一方で実験艦を多く装備する事もあり、その練度は高かった事は特筆すべきである。


 ブレスト特別防備隊の帝国歴1801年1月27日現在の編成は以下の通り

   コンクリート戦列艦1隻

   木造砲塔艦4隻(4形式)

   コンクリート大型フリゲート2隻

   コンクリート小型フリゲート2隻

   鉄製小型通報艦2隻

   コンクリート補給艦3隻

   コンクリート運送艦4隻

   コンクリート揚陸艦2隻


 ここで注目すべきは鉄製艦艇が小型ながら登場していた事である。この通報艦、「Fe1」、「Fe2」は同時に竣工し、「皇帝は石の船だけでなく鉄の船をも海に浮かべた」と当時の海事関係者を驚かせた。

 ただし、この時期の製鉄量の少なさ、高止まりする鉄価格からこの時期に建造された鉄船は小型の実験艦ばかりであった。事実、「Fe1」、「Fe2」の価格は合計で大型フリゲートに近かった。鉄船が主流になるにはあと数十年の時間が必要であった。



 そしてこの常備艦隊と後備艦隊の作戦、人事などを掌握する組織として連合艦隊司令部がブレスト鎮守府施設に将旗を掲げて連合艦隊司令長官を海軍の実戦部隊のトップとして戴いた。


 連合艦隊司令部及び後備艦隊司令部が地上に置かれた事は先進的と留意するべきである。この2つの組織は後の戦争で大きな役割を果たし、改称、拡大される事になる。

 また、この1月27日が海軍記念日として祝日として制定されるのは3年後のことである。



 帝国歴1801年2月3日には陸軍の再編制も完了した。この陸軍の再編制の目玉は郷土連隊方式の廃止にあった。これまでは前動続行主義で下士官兵は同じ地方出身者で集められていたが、これ以後は新兵教育を郷土の部隊で行った後、各々の下士官兵が適切妥当な連隊へと様々な地方へ配属される事になった。

 これは人事異動に大きな負担となったが、道路網の整備、盗賊狩りによる安全確保により達成された。これには各部隊が均一な質となり、指揮、特に高級指揮官の指揮を容易ならしめる効果があった。

 一方でこの改革は政治的な要求も包含していた。

 第2ロマーニ帝国とてその内情は民族も文化も違う各地方を束ねているにすぎず、大衆には「第2ロマーニ帝国」という国への帰属意識、国民意識は皆無であった。大衆はもっぱら故郷の村、街への帰属意識しかなかったのである。

 この陸軍改革以後、徴兵制度の充実も相まって各地方の文化交流が始まり、特に以降の徴兵経歴者に「第2ロマーニ帝国」という国への帰属意識、国民意識が芽生え始める。この帰属意識、国民意識が明確に大陸全土に広がるには後の大きな戦争を待たねばならないが、その萌芽はこの陸軍改革にあった事は重要視するべきである。

 陸軍の各師団の所属は以下の通り


 近衛軍

   近衛歩兵第1師団

   近衛歩兵第2師団

   近衛騎兵第1師団


 ガリア軍管区

   歩兵第1師団

   歩兵第6師団

   歩兵第9師団


 ブリタニア軍管区

   歩兵第2師団

   歩兵第7師団


 スカンジナビア軍管区

   歩兵第4師団

   歩兵第8師団


 ノルトラント軍管区(東部軍を改称)

   親衛歩兵第3師団

   親衛歩兵第11師団

   親衛歩兵第12師団

   親衛歩兵第13師団

   歩兵第14師団


 ロマーニ軍管区

   歩兵第5師団

   歩兵第15師団

   歩兵第17師団


 イベリア軍管区

   歩兵第10師団

   歩兵第16師団


 第1騎兵軍

   第1騎兵軍団

     騎兵第1師団

     騎兵第4師団


   第2騎兵軍団

     騎兵第2師団

     騎兵第3師団


 第1軍

   第1歩兵軍団

     歩兵第18師団

     独立歩兵第20旅団


   第2歩兵軍団

     歩兵第19師団

     独立歩兵第21旅団


   第3騎兵軍団

     独立騎兵第5旅団

     独立騎兵第6旅団

     独立騎兵第7旅団


 他各種独立部隊


 ここでいう独立旅団は師団と同様の支援部隊を充分に配備された旅団をさす。これら独立旅団は陸軍の拡大に伴い随時師団編制へと改められていった。

 また、3年後には2月3日が陸軍記念日として祝日に制定された。



 陸海軍の再編制の式典は、海軍はブレスト鎮守府で、陸軍はマリブール城にて簡素に行われた。改編自体があまり珍しくもなくなっており、大帝隼人が新たな軍旗を下賜し、簡単な演説を済まして終えた。後世からみると、ほぼ隼人時代の軍制が定まった時ではあったが、当人たちにはそのような自覚は無かったのである。

(「帝国の近代軍制史」フォルトナー・エッケハルトより)




 帝国歴1801年2月10日。この日は軍制改革とは比べ物にならない壮大な式典が催された。その主役はブレスト鎮守府に錨を下ろす23隻の中型フリゲートであった。このフリゲートは「探検用フリゲート」として計画されたもので、搭載砲の数が少ないなどの戦闘力不足の代わりに快速でかつ積載量が多いという特徴があった。

 各船の船長以下、100人以上の冒険家、学者が式典のために整列していた。彼らはこの世界の大きな謎に挑まんとする勇士達だ。彼らは全て隼人の探検計画に対してこぞって志願した勇者であった。

 その『謎』とは、『この世界にはこの大陸以外に陸地は存在するのか?』というものだった。彼らはこの謎に挑み、ある者は名誉を得、ある者は海に消え、またある者は闇社会に姿をくらます者達であった。だが、今この日の彼らの目は希望と野心に満ち溢れていた。


 「諸君!私は諸君の勇気に最大限の敬意を表したい。諸君は今日、各々の方角へと旅立つ。その海路は決して容易なものではない。天文学者によれば、この大陸の他に陸地がなければ諸君は道半ばにて飢えと渇きに苦しみ最期を遂げることになる。しかし、島、あるいは大陸を見つけた者には莫大な褒賞を与える事をここに皇帝として宣言する。諸君の野心と好奇心は帝国と同じである。諸君の幸運を祈る!」


 皇帝隼人の演説の後に勇士達は桟橋の小舟に向かう。隼人は勇士達に帽子を振って勇気をたたえ、航海の無事を祈った。

 冒険家達は小舟から各々に割り当てられた探検用フリゲートに向かう。フリゲートには志願、または徴募、あるいは刑として乗り組む水夫が待っていた。船内には漬物野菜を含む各種保存食、ライムジュース、水、酒、数日分の生鮮食品、そして物資購入用のコインなどが積み込まれていた。

 各々の船が順序正しくブレスト鎮守府を出て行く。先頭には案内役兼護衛の第1戦列艦戦隊が満艦飾で進む。そして続航する探検用フリゲート23隻。彼女らのうち、実に14隻がブレスト鎮守府に還らない運命にあった。しかし、彼らは幸運を得て、第2ロマーニ帝国に大きな利益をもたらすが、それはまだまだ先の話であった。

(「帝国の海上覇権」河野重和より)


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