お買い物
ムフ、ムフフフフっ…!
買ってしまった…遂に買ってしまったのだ!
夢のマイホーム!
正に夢と希望が詰まった(*主に地下室に)理想の家なのだ!
現物も見たけど壁の厚さもしっかりしてるし、地下室のドアの施錠も頑丈だ、泣いても喚いても地上には声が漏れないだろう、正に理想の家!
お値段はかなり値切って900万ゼニー!アリだね!
ルンルンと軽い足取りで不動産屋から我が家への道のりを歩く、まずは掃除をしてご近所さんに挨拶してリゼとエミィを呼ぼうかなぁ?
考え事をしながら歩いていると前から馬車が走ってくる、奴隷用の馬車かな?私は奴隷制は決して悪いことではないと思っている、それで助かる人も沢山いるのからね。
それにハングリー精神で強くなり、今後強者になるかもしれない、そうなるなら是非一戦ほど交えたいなぁ
私が馬車の中の若者たちの今後に期待を膨らませていると馬車の中から女性の怒号が聞こえ、馬車の壁が弾け飛んだ。うわっ、どんな馬鹿力なの?
『何て美味しそうな血なのじゃあぁぁ!』
吸血鬼と思わしき女の子が飛びかかってきた、避けれる、避けれる…があえて受け止める
女の子は私に抱きつきタックルをするとそのまま二人でゴロゴロと地面を転がった、少し酔いそうだ…
そしてマウントポジションをとり私の首筋に牙をたてた、そんなに血に飢えていたのだろうか?
『っ!』チュー
じんわりとした痛みが首筋を撫でる、だが中々悪くない、それにかなり可愛い、流れるような金髪とクリクリしたサファイヤ色の眼、身長は低いがスタイルも悪くない。
息が切れたのか女の子が息をつき首筋から離れる
『美味いのじゃ!此処まで純粋で旨味に溢れる血液は初めてじゃ!お主やるのう!』
周りに人が集まり始める、顔見知りも結構いるようだこれで男が私を組み伏せていたのなら袋叩きなのだが女の子なので対応に困っている感じだ
『す、すいません!ウチの奴隷がご無礼を!!』
青い顔をして女の子を引き離し拘束しながら男が謝るおそらく奴隷商人だろう、さあ交渉開始ね!
『あ痛たたたっ…もういきなり何するんですか!』
ここはキレていいだろう、受身は取ったからそこまで痛くもないが周りから見たら中々の事故っぷりだろうし
『いや…あの何ていうかそこの吸血鬼が勝手に暴走しましてね…いやはい…』
『グレイス奴隷商の馬車は奴隷が暴走したぐらいで壊れるんですかぁ…へぇ〜』
『いや、本来はこのような…いやすいませんこの場合は慰謝料を払うべきですよね…』
名前を出して着実にプレッシャーをかけていく、店の名前に傷を付けるわけにはいかないだろうし奴隷商も必死だろう、しきりに周りの様子を伺っている
『ふふっ、いいですよ?丁度お手伝いが一人欲しかったですしそこの子を下さいな?』
『…!?いやお嬢様この奴隷は見ての通り吸血鬼でして相応の値段をつけてっ』
『あら?グレイス奴隷商は制御もできない奴隷を売るつもりなんですか?』
これを言われたら苦しいかな?店の信用問題になるしね、だんだん奴隷商の顔が青くなっていくのが面白い
『しかし幾ら何でもタダという訳にはっ』パサッ
『250万ゼニーあります、いいですよね?』
『…いやしかし……いえやはり問題ないです。お買い上げ有難うございます』
吸血鬼の相場は約500万ゼニーだ、半値で買い叩いた事になるがこれ以上注目を集め店の評判を落とす方が損だと判断したのだろう、いい引き際だ
頭が痛そうな奴隷商を尻目に吸血鬼の女の子と話す
彼女はいきなり主人が決まったせいかポカーンとしていた
『よろしくね、今日から私が貴方のご主人様よ』
思わぬ労働力の確保に思わず笑みが溢れてしまう、何処かから『俺もアリゼさんの奴隷になりたい…』という声が聞こえてきたが無視だ、男の奴隷はノーセンキューなのです
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『セリア?まだまだ埃が溜まってますよ?休んでる場合じゃないです!』
『妾は誇り高き吸血鬼のっ』
『今は私の犬です、わかったらキリキリ働きなさい!
ただいま絶賛家掃除中です。私は奴隷に対して『君と僕は対等だよ!』なんていう物語の王子様のような事は言わない、私が上でセリアが下なのだ。
『ううっ…もう腕が上がらないのじゃ…棚が高いのじゃ…』
彼女、いやセリアと言うのだが、セリアは身長がかなり低い、150cmあるか怪しい所だ、ちなみに私は165cmほどで平均ちょい下だ
『もう…終わったら私の血を飲ませてあげるから頑張りなさい』
『本当かの!?ご主人の血は50年物のヴィンテージワインよりも甘美なのじゃ!』
現金なものだ、可愛いから許すけどね。というか飲んだ事あるの?
『物の例えじゃ、妾は酒を好まぬ。どちらかと言うと飲み物は緑茶派なのじゃ』
『珍しいものが好きねぇ?苦いから苦手な人も多いのに?』
『ご主人は侘び寂びがわかっておらんのぅ、あの渋さが大人の味なのじゃ!』
本当に"侘び寂び"とやらが分かっているか怪しい所だが気にしないでおこう
『あぁ、そうそう。言っておかないといけない事があるのよ』
『何なのじゃ?』
『実は私、殺人癖があるの、だからたまに地下室で遊ぶけど気にしないでね?他の人にも言っちゃダメよ?これは"命令"です!』
サラッと爆弾を投下する、セリアの奴隷首輪が"命令"に反応し淡く光った。
『ええぇっ!?わわわっ妾は殺しても美味しくないぞ!?許して欲しいのじゃ〜まだご主人の血を全然飲んでないのに死んでも死に切れないのじゃ〜』
『この期に及んで食い意地とは…大丈夫ですよ?誰にも言わなかったら何にもしないです。って言っても首輪がありますし言えないと思うけどね』
話によると殺人癖にはそこまで忌避感はないそうだ、まあ吸血鬼だからそういうものなのかな?
暫くするとセリアがこちらに駆け寄ってきた
『ご主人!掃除も終わったのじゃ!』
『かなり早いね?伊達に吸血鬼してないってことかな。ならいいよ?』
『はいっ!頂きまーす!』カプリッ
必死に背を伸ばし首筋に抱きついている様がなんともいじらしい。私はセリアを抱っこしてギュッと抱きしめる
『ああ、セリアは可愛いねぇ。とっても良い香りもするし今日は一緒に寝ましょうか?』
セリアのうなじに顔を埋め息を吸い込む、あぁ…素晴らしいわ
『ご主人…くすぐったいのじゃ…』
『ふふっ、セリアが可愛いのがいけないんだよ?』
セリアが目を蕩けさせ私の腕の中で恥ずかしそうにモゾモゾとする、可愛い
『疲れたでしょう?少し寝ようね?』
『は〜い…』
セリアもお眠のようだ、セリアをベットに横たわらせ私も横に入り抱き枕にする
セリアは抱き枕にもなる、本当に良い買い物をしたなぁ