新たな仲間
私が地図に描かれた場所に向かうとパッと見は普通の奴隷商店に着いた、けどここは盗賊団から奴隷を卸している違法店なのだ。きっと面白い人に出会えるだろう
『いらっしゃいませ!どのような奴隷をお探しですかな?当店は戦闘用でも愛玩用でも豊富に取り揃えています』
『普通のもいいんですけど、友達からここは面白い商品を扱っているって聞いたんですよ。是非見せてくれませんかね?』
名札を見るに彼がここの店主らしい、しかし店主自ら呼び込みをするとは気合が入ってるわね?まあ危険なやり方をしてるし人をよく見ないといけないってことかな?
そして私の"面白い商品"という言い方に反応し店主の目が細くなる、この人は狐のような目をしているからか計算高いように感じるわね。まあ堂々としましょうか
『ほほぅ!それは有難い評価ですね、ちなみにご友人とはどちらの?』
『サーバル奴隷商の店主からの紹介です、確認を取っていただいても構いませんよ?』
『なるほど…しばしお待ちを』
店主が周りに指示をし部下の一人を走らせた、確認は大事だし妥当なところだろう。
『ささ、粗茶ですがおもてなしをさせていただきますのでどうぞ中へ』
『ご配慮痛み入ります』
私は店主に案内され商店の中に入った、流石に今回は戦闘は起こらないだろうけど一応警戒しとこうかなぁ?
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暫くして確認をしにいった部下が店主に耳打ちをしに戻ってきた、雰囲気から察するに特に問題はなかったようだ。まあこんなとこで裏切っても何にもならないしね
『申し遅れました、私は当ナラム奴隷商店の店長であるマガラと申します。確認の為とはいえ時間を取らせてしまい申し訳ございません』
『いえいえ、問題ないです。そしてこちらは名乗れず申し訳ない、見ての通り顔を隠している身でしてね』
『大丈夫です、本来は一見さんは断るんですけどあのサーバル奴隷商のお墨付きとあらば信用出来る方と思いますので』
本当は書状の一つでも持ってきたら話は早いのだけど、違法行為に関わる上で物証になり得るものを残すのは良いとは言えないのでわざわざ確認を取りにいってもらったのだ。
『では早速ですがご案内いたします』
さてどんな人に出会えるだろうか?
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『これは中々の品揃えですね…』
『当店自慢の商品達です、ごゆっくりどうぞ』
明らかに暴行を加えられた後に拘束したとみられる奴隷、本来ならこんな所にいるはずのないレアな種族の奴隷、半ば精神が崩壊している奴隷。どれもこれも見ただけで違法であることがわかる
そしてどの奴隷も正規の店と違い敵意を滲ませた視線を私に送ってくる、まあこんな所にくる私も自分を捕らえた犯罪者と同類に見えるだろうしね
私が物色をしていると更に珍しい種族の奴隷を発見した、興味が湧いた私は店主に質問を投げかける。
『これは何処で手に入れましたか?』
『東の森の洞窟で発見したところを捕獲したそうです、まさか興味がおありで?』
『少しな、話しかけても良いだろうか?』
『大丈夫です、絶対に買い手なんてつかないと思ってたんですがね…』
私が興味を持ったのは1人の男だ、男の皮膚は爛れ手足の骨は浮き出し不気味な風貌をしている、一見死体にも見えるが動いている所を見るに彼はフィログールという種族なのだろう。ちなみにこの種族は街に入る事すら御法度で取引も認められていない
フィログールとは知性を持った人型のアンデッドの事で、普通のアンデッドとは違い会話も可能な上に知識が豊富、そして脳を破壊されない限り寿命で死ぬ事もないという特徴を持つ、さて話しかけてみようかな?
『こんにちは、気分はどうだい?』
『…人の身で話しかけてくるとは酔狂なお人ですな、まあ悪くはないと言っておきます。コーヒーが飲めないのが残念ですがね』
『そうかい、ところで自分が寿命で死なないとについてどう思う?』
『便利ですな、寿命がないだけでしっかり死ぬ事もできますから言うことなしですよ』
面白い事を言うわね、この状況でその余裕とは達観してるというか物事をよく見つめられているというか、とにかく興味がそそられる
『面白いからあんた、ウチに来ないか?』
『ほほう、この私を買うと?本当に変わったお人ですな、しかし知ってるのでしょう?』
彼は"知っているのでしょう?"といった、ここに彼の種族が取引自体を違法化されている原因が詰まっている
会話も可能で知識も豊富なのに街に入る事すら違法化されているのはその見た目の邪悪さからくる偏見というわけではない
原因はフィログールの主食が人肉である所に尽きる、彼等は低い身体能力ながらその豊富な知識を用いて人を狩り日々の糧にする。それ故に人族から危険視され迫害されるに至ったのだ。
しかし私にとってその特徴は魅力にしか見えない。人を狩る?結構じゃない、私も狩った数なら自信があるのよ?
『ふふ、"その点"については問題ないです。安心してついてきてください、要望も可能な限り答えましょう』
『それは有難いですのぅ、ここには本も置いてない故に暇を持て余してた所なんですよ』
『というわけでマガラさん、この人は幾らですか?』
『本当に買うんですね…諸々のお値段も入れて200万ゼニーといった所です』
口止料も入っていると思うのに安いなぁ、まあ普通はフィログールなんて買う人がいないんだろうね。でも安いに越したことはないか
一通りの手続きを終えてから物色を再開する、本当に珍しい種族が多いなぁ、レアな種族同士のハーフもいるじゃない。なんだか博物館に来た気分になってきた
暫く見ていると超美形のエルフを視界の端に捉える。あの人はなんで売れてないんだろう?ちょっと聞いてみようか
『あの超美形のエルフの方は何故売れてないんですか?』
『あ〜彼は犯罪奴隷なんですが超問題児でしてね、お客様が興味を持ち近づいた途端罵倒の嵐でして買い手がつかないんですよ…』
『というとどんな内容のでしょう?』
『容姿や魂の美しさについてですね、彼の前に自分に自信がない人と不細工を近づけてはいけません。精神をズタボロにされますからな』
なんだそれは、美しさ至上主義の人なのだろうか?それとも極度の潔癖症なのかな?
『少し話してみても?』
『ほほう、顔に自信ありですかな?結構ですが何を言われても責任は取れませんよ?』
こういう強いこだわりを持った人は何かしら一芸に秀でてるものだ、話してみる価値はあるだろう。さあ、何を言われようと華麗に返してみせようじゃない
『少しいいかな?』
『惚れました、結婚して下さい』
『ん?え…はい?』
『心奪われました、婚約して下さい』
『それはちょっと無理かなぁ…』
初手プロポーズとは…この返しを誰が予想できようか?口調が戻ってしまったのも仕方がないと言わざるおえない。というかまだ顔すら見せてないんだけど…
『なるほど、今まで貴婦人の方の誘いを素気無く断っていたのはそういう理由だったのですか…それはまた何とも難儀な…』
『誰がホモだこの不細工!!この人はどっからどう見ても美しい女性だろうが!!お目目腐ってんのか!?』
『はい?』
ちょっと、私が男装してきた意味がなくなったじゃない!何言ってくれてんのよ!わざわざ男言葉も使ってたのに!!
『というかまだ顔すら見せてないんだけど?』
『いや顔など見なくても君の美しいのは分かっている、流石にこの僕の美しさには劣るがそれでも素晴らしいものを持っているよ!』
バレちゃったし声色だけ変えて、言葉遣いはもう戻すことにした。
というより何だコイツは、喧嘩売ってるのかな?そして檻に入ってて良かったわね、外にいたらシバいてたところよ?
『そして外面の美しさもさることながら、その魂も美しい!ここまで純粋な輝きは見たことがない!何故なら君の魂は透明で無垢なだけでなく一筋の影も孕んでいるからだっ!それは至高のコントラストとなり君の魂を芸術的とも言えるべき領域に押し上げているっ!!』
『…そうですか』
長い、長すぎる。何だコイツは、この短時間でどれだけ喋る気なのだろう?もうサッサと聞きたいことを聞いてしまおう
『話は変わるけど貴方は何をして捕まったの
?』
『美しいレディスよ、気になりますか?実は僕、美容と健康に目がなくてですね、研究の為に人を捕まえて人体実験をしていたのですが成果が出た時にハイになりすぎてヘマをしてしまったんですよ、そのせいで捕まりました』
『人体実験?っていうと具体的に言うと何を研究してたの?』
『美容全般に応用できる技術の開発と老化の防止が僕のメインテーマですね、なので外科技術と薬学には自信があります。研究を進める上で死霊術と回復薬学にも精通しましたけどね』
一つのテーマに迫るには一つの学問だけでは不可能なのでしょうね、手広くやってるじゃない。
『人を殺す事に躊躇いはなかったの?』
『僕は自己中なんですよ、やりたいからやったまでさ。ま、その結果がこれだけどね…』
なるほど殺人に忌避感はないと…でもだからこそ面白いわ。『殺しちゃった』は、誰にでもできるけど、 『殺した』をできる人って、意外に少ないからね
『マガラさん、この人も買います』
『それは有り難いですな、しかし何故この二人を?テロでも起こせそうな人材ですな』
『それは聞かない方が身の為よ?』
『ほほ、余計な詮索はしないでおきます』
さて、買い終わったし二人を家まで案内しましょうか。私は二人を私の影に仕舞い込み店を後にする、細かい自己紹介は家についてからだね




