鉱物の森4
最悪の事態だ、このままでは沢山の優秀な冒険者が魔物に殺されてしまう。人は死んだら殺せないのだ、私が彼等を殺すのならまだしも目の前で魔物に掠め取られるのは我慢ならない
『セリア!しっかりしなさい!!一番火力があるのは貴方よ!確実に仕留めて数を減らすのよ!』
『わ…わかったのじゃ!!』
『エミィ!防御力より機動力を優先して支援しなさい!敵の勢いに飲まれたら全滅するわよ!』
『わ、分かりましたっ!!』
『リザは撤退戦なんて考えないでね!?足は向こうの方が速いんだから絶対逃げ切れないわ!!そもそも指示出すのは貴方の役目よ!!』
『…各自囲まれないように機動戦をするのよ!そして機動力に劣る《アイアンサイド》を援護しなさい!!』
『『了解した(です)!!』』
私達のパーティはどうにか持ち直したが他の2パーティは逃げるべきか戦闘を続行するべきか未だに悩んでいるようだ、少し考えれば逃げれるはずがない事に気付くはずなのに。
『あんた達ぃ!!逃げられるなんて甘い事考えてんじゃないわよ!!男なら根性見せなさい!!』
『『お、おう!!』』
リザが他パーティに檄を飛ばす、私の言ったことと丸っきり一緒だが今はどうでも良い、それより今この状況を抜け出す一手を考えなければ!
誰かが打ち上げた火魔法の【ライト】が周りを明るく照らす、光が金属の魔物をくっきりと浮かび上がらせたお陰で改めて敵の数を確認することができる。
多い、多すぎる。みんな今はまだ身体強化魔法による機動戦で攻撃をなんとか回避しながら戦っているが、こんな戦い方では勿論長くは持たない。
魔力も無限ではないし一発でも食らって態勢を崩したら袋叩きにされるだろう、状況を打破できるものを探し周りを見ると黒いドラゴンが口を開けて魔力を収束させていた、これは!!
『全員バリア展開っ!!』
《結晶壁》を黒いドラゴンの目の前に展開させながら叫んだ私の声は直ぐに黒い奔流に掻き消された、ドラゴンのブレスを受けた《結晶壁》が短かい間だけブレスを周囲にばら撒いて粉々に砕け散った。《結晶壁》を物理攻撃以外で破壊するとは凄まじい威力だ。
そしてブレスの余波は木々を溶かし夜の森とは思えない程の凄まじい熱量を放出した、さらに溶けた金属はマグマのようになり一気に危険地帯を増やす事になる
極短時間だが私が時間を稼いだお陰か、多くの人がバリアを展開させる事ができ防御に成功した。しかし間に合わなかった数名がグズグズの炭になり地面に崩れ落ちる、そしてそれを見た同じパーティの男が慟哭をあげた
ああっ、怒りで頭がクラクラする。腹が立ちすぎて言葉が出なかったのは初めての事だ
目の前で殺しがいのありそうな冒険者を何名も失ってしまった、炭になってしまった彼らを殺す事はもうできない
怒りに歪む視界の端に一人の男が映る、ドラゴンに乗りニヤニヤと此方を見てくる半端ではない程に腹が立つ男だ、よし決めたあいつをぶち殺そう
憎しみの気持ちで人を殺したくなったのは初めての経験だがこの案は悪くない、それどころか起死回生の一手になるかもしれない、私はリザに話しかけた
『リザ!私が調教師を追い詰めたらこの状況も少しはマシになると思わない!?』
『…成る程!いいわ、難しいと思うけどもう貴方が頼りよ!!』
『任せて!セリアは私に合わせなさい!』
『了解したのじゃ!!』
今まで私達は敵の迫力と戦力差に飲まれ基本的な事を見逃していた、あくまでこの魔物達は調教師に操られているだけだ。つまり調教師を魔物の操作ができなくなる程に追い詰めたらこの魔物達を烏合の衆にする事が出来るはずだ
…魔物の相手は苦手だけど人の相手は大好きだよ、絶対殺してあげるね?
この依頼に来て初めて私の本領が発揮できる場面が来た、胸の高まりを抑えられない。絶対に絶対に絶対に殺す
私は強烈な殺意を体に漲らせ獲物を狩るために地面を蹴り駆け出した
『まずはその観察者然とした態度からぶち壊してあげるわ、戦場に見学席なんてない事を教えてあげるよ』
その為には男をあのデカい椅子から蹴り落として現実を見せなければ、まずは奴を地面に引きずり落とす。話はそれからだ
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私が男に向かって駆け出すと進路を封じるように数匹の魔物が躍り出てくる、止まってはられないのよ!
《爆水晶》を空中に打ち上げる、水晶球は空中を一定距離進むと爆発し魔物達に結晶槍の雨を降らせた。数発は当たったようだが体皮に浅い傷を付けるばかりで決して貫通はしない、でも時間を稼げれば十分だ!
大ジャンプして男に飛びかかる、黒いドラゴンはセリアが気を引いてくれてるお陰で此方を向いていない、貰った!
男の顔がニヤリと歪む、その瞬間にキラリと前方が光ったかと思うと槍が飛んできた。
…このコースは心臓直撃コースだ、空中だから回避は不可能、物理攻撃に弱い《結晶壁》はこの攻撃を防げないだろう。
いわゆる詰みだ、スローモーションのように時間が流れる。これが普通の結晶魔法使いなら数秒後には地面に縫い付けられていただろう
そう、普通の結晶魔法使いなら…ね
引き伸ばされた時間の中、私はゆっくりと左胸の前に手をかざしボソッと一つの言葉を呟いた、これで解決だ。
『融解壁』
私の左手の前に小さな紫色の壁が発生する、その壁は飛んでくる槍と接触すると槍を跡形もなく蒸発させた。唯の鉄なら溶かせない筈もない、体で隠したしみんなには毒魔法は見えない筈だ。ただ一人例外はいるけどね
『バカなっ!!?』
正面にいる男だけは私が何をしたのか理解したのだろう、まさか結晶魔法持ちが毒魔法も使えるとは夢にも思っていなかったに違いない、私は動揺する男を蹴り抜き地面に転がした。いい気味だ
『…やってくれますね!!』
いい顔をできるじゃない、それにさっきの狙撃は中々良かったわ、思わず下着を濡らしてしまう程の鋭い一撃だった
『戦場にようこそ!!』
さっきから体の疼きが止まらない、秘部からは泉のように愛液が溢れ脳に快感を伝えていている。ふふ、楽しい戦いにしましょうね?
《ライト》周りを明るくする球を放つ魔法
《結晶壁》結晶の壁、当たり前だが結晶魔法の特性を持ち、魔法を乱反射し物理攻撃には弱い壁である