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鉱物の森

今日私は、もう少ししたらパーティを抜けてセリアと暫くやってみる事についてリザと相談した、リザは大層残念がっていたが元々私は臨時という話だ、強くは引き止めず寧ろ私の心配を頻りにしていた。

『本当に大丈夫?怪我とか隠してないよね?』

『大丈夫だよ、こっちこそ急に穴を作っちゃってゴメンね?』

『それは元々四人パーティだったし大丈夫よ、セリアちゃんも気をつけてね?』

『妾は丈夫だから大丈夫じゃろて、しかし妾のせいでスマンのじゃ』


お互いに心配しあい場に微妙な空気が流れた、背筋がムズムズする。

『…まあこれで最後というわけじゃないし、まだもうちょっとは続けるんでしょう?』

『そうだね、あと一回位は付き合うよ?』

『じゃあ最後に一稼ぎしちゃう?大口の依頼がさっき入ってきたのよ!』


リザがニヤリと楽しそうに笑った、凄く嫌な予感がするけど一応確認しておこう

『…それって鉄木の森の討伐依頼の事?』

『あらら、耳が早いのね?そうなのよ、報酬もいい上に近場の依頼だしね。そして何より早く流通を安定させないと!』

鉱物の森の流通が止まった事による物価の上昇は何も武具屋だけではない、少しずつだが様々な所に影響が出ているそうなのだ。国もそれを危惧して今回の緊急依頼に踏み切ったのだろう


『先遣隊の情報によると体皮が硬化した熊型の魔物や金属糸を吐く蜘蛛を確認したそうよ?難易度の高い依頼だと思うわ、その為の三組合同の依頼なんでしょうね』

『…剣でも買おうかなぁ?』

『ほほぅ?妾が教えても良いのじゃぞ?』

セリアがスリスリと寄ってきてドヤ顔をしてくるウザ可愛いとはこの事か、でも腹が立ったしデコピンを額に決める。バチンといい音が鳴った


『っう…!?痛いのじゃ〜!』

『あらら可哀想に…他に何か質問はある?』

『質問っていうか相談なんだけどセリアを連れて行ったらダメかな?現時点でもDランク相当は期待していいと思うし火力だけならBランクにも負けないわ。勿論この子の報酬は無しでいいし囮に使ってもいいわよ?』


『セリアちゃんを?当たり前だけど命の保証はできないわよ?』

『この子には実戦が必要なの、セリアは丈夫だしちょっと輪切りにされたぐらいでは死なないわ』

『それは流石に死ぬかなーって』

『ふむ…まあ他ならぬアリゼの頼みだしいいか、でも自分の身は自分で守ってね?』

『わかってる、無理な頼みなのにありがとうね』

実戦は大事だ、いくら訓練で強くても実戦で体が動かない人など沢山いる。難しい依頼だけどセリアは身体能力も高いし大丈夫な筈だ、パワーもあるし今回の依頼の役に立つだろう


『じゃあ準備しといてね〜』

『了解!もうリゼ大好き!』ダキッ

『ちょ、ちょっと!気持ちは嬉しいけど人が沢山見てるから!』

リゼには色々と無理を聞いてもらった、また何か奢ってあげなきゃね。そして慌てふためくリゼがとても可愛い、暴れても私の抱きつきは簡単には外れないよ?


『よし、依頼頑張りましょうね!』

『わかったから離してぇ…』


苦手な依頼だがやるからには全力を尽くそう

気持ちを入れ替えて必要な物を考える、よし手早く集めますか!


^^^^^^^^^^^^


というわけでやってきました鉱物の森、木々が金属光沢を放ち中々に幻想的な雰囲気だ

アーカムから馬車で半日の所にあるこの森は、トルク王国最大規模の鉱石森林地帯で国の産業を支える重要な生産拠点となっている。しかし今は魔物が住み着いたせいか働く人の姿は見えずひっそりとしていた


今回参加したパーティはCランクの《黎明の苗》《アイアンサイド》Bランク《暁の血潮》の3パーティだ。顔合わせは移動時に済ませておいた、簡単に特徴をいうと


《アイアンサイド》は全員が重装備と大盾に長槍で身を固めたガチガチの集団で《支援魔法》を使える人もいるため硬さは相当なものだ。鎧には軽量化の魔法が掛かっているらしいがそれでも相当重いだろうね

《暁の血潮》は逆に魔法の威力を上げる杖と、魔力の消費を抑える魔道コートに身を包んだ遠距離殲滅型のパーティだ、身体強化魔法を駆使して接近戦には極力持ち込まない立ち回りを心掛けているらしい


陣形は《アイアンサイド》が敵を引き付けて《暁の血潮》が砲撃、そして私たちがフォローと遊撃を担当することになった、シンプルな陣形だけどだからこそ強力な布陣である

今は各パーティのリーダーが小屋の中で鉱物林の責任者と話し合っている最中だ、外ではケイトさんが真剣な表情で弓の調整をしていた、私も装備の最終確認をしてからセリアやフランクさんと連携の確認をする。


『セリアはアタッカーだから持っている盾は保険として使うんだぞ?俺や《アイアンサイド》のメンバーが引き付けるからその隙に自慢のパワーと魔力でデカイの決めてやれ!』

『任せるのじゃ!叩き切ってみせるのじゃ!』

『今回は火力に成れそうもないし索敵と援護に徹するね、セリア?期待してるわよ?』

セリアもいい緊張感を持っている、他のメンバーの調子も悪くはないし問題ないはずだ。


他のパーティを見ているとこの前に道具屋で話しかけた人がいた、名前はコイセルと言うらしい。お互い目が合い軽く会釈する、お礼しておこうかな?

『この前はありがとう、コイセルさんもこの依頼を受けたんだね?』

『おう、かなり割りが良い依頼だったから《アイアンサイド》も満場一致で受けたんだ。しかしどうやらこの依頼少しばかりきな臭いぜ?』

『というと?』

『そもそも通常依頼ではあったがこの魔物討伐依頼は1ヶ月前から出ていたんだ、そして実力あるパーティが何組も依頼をうけた、そいつ等は最初は順調に魔物を倒していたそうだがある日突然どのパーティも帰ってこなくなった。おそらく死んだだろうな…この意味わかるよな?』

『…なるほど、大物がいるってことね。それも腕利きのパーティ複数を一人も逃さず壊滅させることのできる化け物がね』

『そういうことだ、しかも金属の魔物は互いに攻撃しないそうだぜ?下手したら誰かが裏で糸を引いてる可能性だってある』

確かにきな臭い、彼の予想が当たってるのなら今回の依頼は大荒れになること間違いないだろう、唯の野生の獣ならいいが、人間の司令塔がいるとなると危険度は大幅に上がることになる


鉱物の森は今は静かだ、しかし近いうちに嵐が来る。そんな予感が私の中に蠢いた

狩りはまだ始まってすらいない

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