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休日2

炊き出しは大盛況に終わり、スラムの住人には大層感謝されてしまった。スラムでの生活は一人では決して生きていけない、仲良しこよしという訳にはいかないが助け合いが大切なのだ。

"受けた恩は必ず何らかの形で返す"それはスラムでの暗黙の了解だ、それを破ればアイツは恩を返さない奴だと言われ、困っているときに助けてもらえなくなってしまう。そしてそれは自分の死に繋がるのだ。だから彼らは私たち市民よりもずっと義理堅い、いつか私が困っているときは彼らが助けてくれるかもしれない。


『たまにはこういう人助けもいいもんじゃのう、またやるのかのう?』

『当然よ、その時その瞬間だけやるなんてことは誰でもできるしね、何事も続けることが大切なのよ。それに私は人間が大好きだしね!』

『好かれる方はたまったもんじゃないじゃろうがな…ううむ殺人癖とはよく分からんのう?』

『ふふ、理解はしなくていいよ。同じ事考える人が増えたら獲物が減るもの』


後片付けをしながらセリアとおしゃべりする、少年の名はアイクというそうだが彼も頑張っているからすぐに片付け終わるだろう


『姉ちゃん!本当の本当に薬をくれるんだな!?』

『私に二言はないわ、早く案内しなさい。セリアは先に孤児院に行っといてくれる?』

『了解したのじゃ』

『よっしゃあ!!こっちだ!』


アイクが私の手を痛いほどに引っ張る、本当に妹さんの事が大切なんだね…いや、私にはそれを美しいと思う権利はない


せめて早く行ってアイクを安心させてやろう、そう思い私はアイクと共にスラムを駆け抜けた


^^^^^^^^^^^^


アイクに連れられ入ったボロ屋の中には一人の少女が苦しそうに横たわっていた、一応ベットには眠っているけどやはり衛生環境は決して良いとは言えない

『…お兄ちゃんその人達だぁれ?』

『お医者様だ、よかったなリーナ!これで治るぞ!』

『こんにちはリーナちゃん、診断するから少し見て良いかな?』


見える限りでは発熱と紅斑、喉も炎症を起こして声が嗄声になってしまっている。そしてお腹の膨らみを見るに軽度の栄養失調か…


『アイク、最近リーナちゃんご飯食べた?』

『パンとかをあげても吐いちゃって…でもシチューなら食べられると思ったんだ!』

『リーナちゃんどういう風に辛いかな?あと体の痛いところを教えてくれる?』

『頭が痛くてとても怠いです、寒気もします…』

『なるほど…はい、アーンして?』

しかも口蓋斑点があると、ふむふむ


『リーナちゃんはおそらく風疹に罹っているわ子供は重症化しやすいから危険ね』

『風疹!?そんな!リーナは大丈夫なんですか!?』

『落ち着きなさい、今はまだ大丈夫だけど大変危険な状態よ、清潔なところで食べ物と水分を取りながら安静にするべきね、それと風疹には有効な薬はないの、だから解熱薬を取るべきね』

この衛生環境だ免疫力の低下した今、どんな病気を発症するかわかったものではない



私は手早く解熱薬を作成する、そう私は薬を作る事ができるのだ、《毒魔法》はその気があれば製薬にも使える、ただし少し加減をミスれば劇薬になるし元になる薬の事をしっかりと理解していなければ決して作れない。


私は薬学の知識だけなら町医者には決して負けない筈だ、外科とか精神科などの他の学問の方はさっぱりだけどね

《回復魔法》は体力の回復と外傷の治療や解毒が専門で病気の治療には残念ながら使えないのだ



『アイク、何も言わず受け取りなさい。』

私は薬と宿代、そして一本の剣を渡す、お礼は要らない全て私の自己満足だからだ

私の突然の行為にアイクは一瞬戸惑ったような表情を見せたがやがて意を決したように受け取った



アイクはこれから妹さんの為に剣を振るう戦士になる苦しい事は沢山あるだろうし死んでもおかしくはないしかしそれを乗り越え強くなり他人を守れる男に彼がなったのなら、きっと私に恩返しをしに来るだろう


アイクは頭を深く下げ静かに泣いていた、大事なものを背負った良い顔をしている、彼はきっと強くなると私は思った


彼等とはまた会える、私はそう確信した。

なんたって彼等はスラムの住人だ、受けた恩は必ず返してくれるだろう、彼等は義理堅いからね


私はアイクとリーナちゃんの頭を一撫でし小屋を後にする、その時感じたスラムの風はほんの少し暖かいものだった


^^^^^^^^^^^^


時間を食ったので結構急いで孤児院に向かうと、そこにはちびっ子に揉みくちゃにされているセリアが居た


『この羽根なぁに〜!?』グイグイ

『えぇい!引っ張るでない!』

『『肩車して〜!!』』ズルズル

『そんなに一気には無理じゃ!』


セリア大人気である、身長の所為で子供同士のじゃれ合いにしか見えないけどね、とても微笑ましい


『あっ! アリゼさん来てくださったんですか!』

『こんにちはエミィ、ちょっと野暮用でね』

『セリアちゃんはとっても頑張ってくれてますよ!彼女一人に10人くらい引っ付いてますからね』

『お〜それは凄いね、でもセリアの体力作りも兼ねてるから遠慮せず遊んであげてね』

実はエミィはこの孤児院で空いてる時間は無償で働いているのだ、流石《回復魔法》適正持ちは格が違った


《回復魔法》は他人への思いやりを持つ人に適正があるとされている、しかもエミィは他人を護りたい人に適正があるとされる《支援魔法》の適正もあるというのだ正に聖女


『もうみんな元気が良すぎて手が足りてなかったので有難いです〜』

『子供は好きだし全然良いよ〜!』

早速とばかりに子供達が周りに集まり興味津々とばかりに私を見つめてくる


『エミィ先生このお姉ちゃん誰〜!?』

『私の冒険者仲間のアリゼさんです、今日はみんなと遊んでくれるらしいですよ〜』

『『きゃーい!!』』


子供達が駆け寄り私に抱きついてくる

ふふっ、中々に悪くないね。ほらっ、飴ちゃんあげようじゃないか!そして高いたかーいもしてあげよう!


私が子供達と戯れているとここの年長らしき男の子が数人近づいてきて話しかけてくる


『『お姉ちゃん、ちょっと目を閉じてー!』』

『ん?何で?』

『『いいからー!』』


何かくれるのだろうか?私は大人しく目を閉じた、定番だと花冠とかかな?

『『じゃあせーの!』』

『あっ!アリゼさんダメでっ』

バサッと私のミニスカートが舞い上がった、実行犯の歓声と遅れて女の子達の非難の声があがる


『『へへっ!やってやったぜ!!』』

『『あーっ!男子何してんのサイテー!!』

ふふふ、私はパンツを見られた程度で動揺するような乙女じゃないんですよ



逃亡を図った実行犯の主犯格を無駄に結晶魔法で身体強化し捕獲する、大人を舐めてもらったら困る。

『はーなーせー!!』

『ふふっ、"おいた"をする子には罰が必要ですねぇ』

『アリゼさん!すいませんっ、その子も悪気があってした訳ではないんですっ!』

『分かってるって、だからこうするのよ!』


私は男の子を胸に抱きかかえギューっとする、頭ナデナデもサービスしてあげよう…!

『なっなっ何しやがんだ!この痴女!』

『ん〜?人肌が恋しくてやったんじゃなかったのかな〜?よしよし、寂しくないからね〜』

男の子の顔がみるみる赤くなっていき茹で蛸のようになった、大人を揶揄うからそうなるのよ、にしても愛い奴よのう!


さてと、残りの子達も可愛がりの刑に処しますか…!

暫くすると孤児院には茹で蛸になった男の子が数人並ぶことになった、仕置き完了!



『…アリゼさんの行動力には時々驚かされます』

『全くじゃ、付き合わされる身にもなってほしいのじゃ』

人を無鉄砲みたいに言わないでもらいたい、これでも色々考えているしね


この後の時間は穏やかなものでお飯事をしたり鬼ごっこをしたりして子供達と遊んだ、にしても子供は本当に元気だ、セリアはもうグッタリとしていたがエミィに《レストレーション》をかけてもらい持ち直したようだ


今日はもう夜ご飯を食べて家で少し遊ぶだけで終わりになる、休日とは良いものだ




《レストレーション》体力を回復させる魔法


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