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お嬢様の学校

なんか暇だったんで投稿してみます。

 朝起きて初めて感じた感覚は、「朝日が眩しい」という視覚でも、「朝ごはんのいい匂い」という嗅覚でも、「妹がうるさい」という聴覚でもなく、「鞭で叩かれる」という痛覚だった。

「あだあぁぁ!」

 体が燃えるような痛みに、俺はベッドから飛び起きた。

「起きなさい、お嬢様がもうすぐ起きてこられます」

 見ると、セバスさんが鞭を持ってベッドの横に立っていた。執事長がこんなところで何やってんだ? イザベラが起きてくるのに何で俺も起きなきゃならないんだよ、そんで俺を起こすのに鞭を使う理由が見当たらないんだけど。

「君はお嬢様が朝食を召し上がって学校へ行く準備をし、玄関を出るまでに、扉の前に人力車を用意しておきなさい」

 それだけ言い残して、セバスさんはそそくさと出て行ってしまった。

「ったく……」

 俺は水瓶で顔を洗い、小屋を出て人力車を取りに……あれ? 人力車ってどこにあるんだ? おいおい、しっかり教えてけよ。

 途方に暮れながら、とぼとぼ屋敷に向かって歩いていると、馬車が俺の目の前を通り過ぎていった。

「馬車と同じ所に人力車もあるかもな……」

 そうだ、そうに違いない。とりあえず馬車が来た方向へ走る。

 それにしてもやっぱり広い、屋敷の敷地内に馬車がすれ違えられるほどの広い道があるなんて考えられない。どういう神経してるんだ? 何haだよここ。

 数分後、馬車がおいてそうな巨大な馬屋っぽいところについた。そこにいたおっさんに声をかけてみる。

「あの、人力車ってどこにありますかね?」

「ん? ああ、昨日来た奴隷か。よく一人で来れたな、偉いぞ。人力車なら奥から三番目にある」

 おお、子供扱いが気になるが、褒められたことに気をよくした俺は、意気揚々と馬屋え入っていった。だが俺はそこで愕然となる。広すぎるのだ。いや、縦に長すぎる。奥から三番目? 何百メートル先だよ! 

「はあ……」

 俺はため息をつきつつ、人力車という名の拷問器具を自ら取りに行った。



 なぜ人力車で移動するんだ、このお嬢様は。だって馬車あるじゃん。馬車使えばいいじゃん。わざわざ奴隷使う必要ないじゃん。少しは奴隷のことも考えろよ。人力車使うにしてもごってごてに装飾してんじゃねえよ。どんだけ重いと思ってんの? 九歳のこの体で引けるような重さじゃねんだよ。おたくら馬鹿なの? もうちょっと頭ひねろよ。

「ここよアレク。止めなさい」

 大体さぁ、昨日から何も食ってないのよ? 力出るわけ無いじゃん、それを鞭打つってどういうこと? あと言ってなかったけど朝から筋肉痛なんだぜ? なんだこの鬼畜の所業。

「ちょっと、聞いてるの?」

 つーか異世界転性で奴隷って何よ、普通勇者とかになるでしょ。何なのあいつ、マギアとかいう奴、頭おかしいんじゃないの? 

 などと不満不平を思いつく限り出していたら、突然背中が裂けた。

「あだぁっ!」

「止まりなさいといったでしょう、もう過ぎてしまったじゃない。はやく戻りなさいよ」

「も、申し訳ございません……」

 俺は向きを百八十度変え、仰々しく、華やかで、重厚感だたよう悪趣味なザルダート学園の門に入った。

「アレクは人力車を駐車場に運んで待ってなさい。行くわよフローラ、ベティーネ」

 そう言い残し、イザベラは二人の側仕えと共に学園に入っていった。

「駐車場、か……」

 文字通り、そこはいいとこのボンボンが使う馬車や、人力車、御輿……御輿? なんかを止めて置く場所のようだ。人力車を引いたり神輿を担いだりする奴隷もチラホラと居る。……目が死んでる奴が大半だけどな。

 それにしても学校か……いいなぁ、普通の異世界トリップ・転生だったら学園ラブコメが始まるんだろうけど、あっしみたいな奴隷の身では過ぎた話でごぜぇやす。

 前世? の学校と言ったら、人並みに悪友がいて、人並みに充実した生活だった。工業高校では実技でいつも上位の成績をとっていた。普通教科? はは、ちょっと何言ってるかわかんない。

「おい、お前どこの家の奴隷だ?」

 声がした方を振り向くと、きったねぇ顔をしたきったねぇ身なりのきったねぇおっさんがいた。俺も言えた成りではないと思うが。

「おっさんは?」

「はは、奴隷といえど目上の人には敬語を使わにゃならんぞ、まあそんだけの教養がないってことで許してやらあ。俺ぁミュンヒハウゼン伯爵家の奴隷だ。奴隷の中でも古株で、奴隷を束ねてるんだぜ」

 得意げに言ってるが、奴隷は奴隷だろ。

「今回も伯爵様がなんかこの学校に用事があったんで、俺が人力車で引いてきたんだ」

 人力車って貴族の移動手段の中ではメジャーな方なのだろうか。旅行で一回乗ったことがあるが、あれを毎回乗るっていうのもなぁ。馬車の方が使い勝手がいいと思うんだが。

「それで、お前は?」

「ああ、俺はバッハシュタイン公爵家の……」

「えぇ!? あのバッハシュタイン家!? 」 

「うるさいな。そこのイザベラお嬢様の奴隷だよ」

 おっさんは「ほえぇー」と、感心したように息を吐いた。臭い。

「まあ、この学校は皇立学校だしな、お偉いさん方がごまんといる。公爵様のお嬢様がいるのは当然だぁな。お前、いつから仕えてんだ?」

「……昨日」

「昨日? ……がぁはっはっは!」

 やたらと声がでかいな、このおっさん。

「一昨日はイザベラお嬢様の誕生日だったから、俺はプレゼントとして買われたんだと」

「ふーむ、外務大臣であるバッハシュタイン家のじゃないと、子供の誕生日に奴隷を買うなんてことができるんだな」

 外務大臣だったのか、そういえば父親の仕事で何ちゃら王国に言ったとかイザベラが言ってたな。やっぱりすごいお金持らしい。

『ディルク。来い。帰る』

 小汚いおっさんが首にかけている伝達魔道具(携帯電話)から、ダンディーな(であろう)おっさんの渋い声が聞こえてきた。昨日渡された物と同じようなやつだ。やっぱみんな持ってんのかな。ファンタジックな世界だと思ったが、結構近代的だな。……そうでもないか、人力車で移動してんだもんな。

「おっと、旦那様のお呼びだ。じゃあ俺ぁ行くぞ、少年」

 おっさんは人力車をものすごいスピードで引きながら去っていった。やっぱ人力車引くにもコツとかがあるのだろうか。

 そんなことを考えていると、頭上で鐘が鳴った。授業の節目に鳴る鐘だろうか、日本でお馴染みなビックベンのチャイムではなく、ゴーンゴーンといったお腹に響くような音だ。

「……学校、か」

 この世界の教育も受けてみたいな。俺は知識ゼロでこの世界に放りこまれた。そのため、ここの常識などはほとんどない。言語などは、他の奴隷たちと話したり、バルトルトさんから少し習った程度だ。よくある翻訳機能が俺には無い。マギアめ、あの野郎ホントに何もくれなかったな。もうちょっと生活保護があっていいと思うぞ。

 そう言えば、俺はこの世界でほとんど文字を見ていない。見たことあるのは俺が買われるときの契約書、それもほとんど見えていなかった。あと、これも俺が買われたときの奴隷紋で、なんだかミミズが這ったかのような変な文字だ。

 この世界の識字率はどのくらいなんだろうか。この学校では文字なども習うだろうが、みんながみんなこの学校に通えるわけじゃないだろう。平民の皆さんはどうしているのか……まあ、その平民より下の奴隷が考えることじゃないか。てへぺろ(泣)。

 その時、俺の伝達用魔道具(携帯)から、少女の声がした。

『アレク。来なさい、今すぐ!』

 あれ、なんでかな? 悪い予感しかしない。


もう一つの小説が一段落ついてから投稿しようと思っていたんですが、なんだか書き溜めていると、無性に投稿したくなるんですよね。だから、一話だけ投稿することにしました。



あと、どうでもいいかもしれませんが、何とか受験に合格しました。

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