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商品

久しぶりにこっちに投稿します。

 十歳の誕生日まであと十ヶ月程度となった。ここの生活も地獄だが、売られたらどうなるか分からない。まあ、あと十ヶ月をかみ締めて生きよう。

 ……と、思ってた時期もありました。はい、現在私は商館の中にある一室に来ております。ここではトド……失礼しました。オーナーと、偉そうなおじさんが商談をしています。何の商談かと言うと、まあ察しのいい人は分かるかもしれないが、俺の値段についてだ。人に値段つけるとか、俺に人権は無いのか! ……ないんですよ。私は商品ですから。言ってしまえば八百屋の店先に並べられているリンゴと同じですから。リンゴが人権を主張したって「はあ?」ってなるだけだ。

 商談が纏まったらしい。俺の値段は銀貨七十五枚、背中の傷を追求されて値段が少し下がったらしい。ざまあみろ! ……微妙だわ。自分の値が下がるのは微妙だわ。

「それでは奴隷紋を刻みますので、血を拝借しても?」

 奴隷紋! やっぱあるのか、それを刻まれるとは思ってなかったが。

「ああ、イザベラ」

 おじさんはそう言うと、隣にいた少女の名を呼んだ。年は俺と同じくらいだろう。綺麗なブロンドの髪を、アップにして可愛いリボンを付けている。

「はい、お父様」

 イザベラと呼ばれた少女は、やや緊張の面持ちで、奴隷紋を刻み込む術者に手を差し出した。術者は慣れた手つきで、少女の手にナイフを突きつけ、血をインクにたらした。少女の手をナイフで切りつけるなんて、ロリコンのサディスティックか?

「こっちを向け」

 ロリサドは筆にインクを付け、俺の首筋に何かを書き始めた。なんだい、くすぐったいじゃないか。

「奴隷紋発動」

「ぐあぁああッ!」

 悲鳴を上げたのは俺だった。イザベラがビクッと身をちぢこませる。身を焦がすような痛みが全身を走り抜け、俺は床を転げまわった。痛い所じゃない、体が溶ける、体が引き裂かれたかのようだ。やべぇ、ここまでとは思わなかった。意識が離れる寸前で、その痛みは治まった。

 ふ、ふざけやがって。

「これで、この奴隷は貴女の物ですよ、お嬢さん」

 トドがイザベラに笑顔を向ける。イザベラの顔がパアッと華やいだ。あいつが俺のご主人様なの? おじさんじゃなくて? 子供の所有物かよ。ほらまた一つ、心の割れる音が聞こえたよ☆

「イザベラ、お前はバッハシュタイン公爵家の令嬢として、ふさわしい態度をとらなければならない。この奴隷をどう使うかは、お前しだいだ。うまく使いこなせよ」

「はい、分かりましたわお父様」

 公爵家? すげぇとこに買われたんだな俺。

「ねえオーナー、これの名前を教えて」

 これ? これっつった今?

「ここではアレクと呼ばれていますが、お嬢様が好きなようにお呼びになればよろしいかと」

「アレクか……奴隷のくせにたいそうな名前だな」

 お父様(笑)がなんか言ってくる。人の名前にけちをつけるなんてどんな育ちをしてきたんだこの親父。

「いいじゃない。アレク。この私の奴隷になるんですもの、いい名前だと思うわ」

 おお、いいこと言ってくれるぜ、なんか偉そうだけど。

「アレク。これからお前は私の奴隷だからね、分かった?」

「はっはっはっ。イザベラ、別に確認を取らずとも、こいつはお前のものだよ」

「そっか」

 そっかじゃねえよ。

「九歳になった祝いに買ったんだからな。しっかり管理するんだぞ」

 どうやら俺はこのお嬢様の誕生日プレゼントっぽいな。九歳児に奴隷を買うとかどんな神経してんだ? 公爵家では当たり前なのだろうか。

 イザベラについて行き、俺は九年ぶりに外に出た。この世界では始めてだ。町並みは中世ヨーロッパそのまま、ちょっと感動を覚えるほどだ。

 公爵様は馬車に乗り込んだ。分かるぞ、俺はこの馬車に乗っちゃだめなんだろ? こういうやつのパターンはだいたい分かってる。

「お父様、人力車を買ってくださいな。早速アレクを使ってみたいわ」

 ウソン! 俺の想像の斜め上を行きやがった。俺はてっきり走って馬車について行くものだと思ってたんだが。

「うーん、大丈夫か? その奴隷もまだ子供だ、車を引けるとは思えないし、屋敷までたどり着けるか……」

「大丈夫ですわお父様。屋敷までの道なら分かりますし、無理にでも引かせますわ。だから、ね? いいでしょ?」

 ちょっと聞き捨てなら無い言葉が聞こえたのだが、気のせいだろうな?

「……まあそこまで言うのならいいだろう。セバスチャン、人力車を調達して来い」

「かしこまりました」

 おお、本物のセバスだ。やっぱ居るんだなぁ、すごいやこの世界。

 セバスチャンという気のいい初老の紳士は、ものの十分で帰ってきた。立派な人力車と共に。豪華な装飾が施された人力車である。絶対重いだろ、これ。

「わあ、ありがとうお父様。こういうのが良かったんです」

「そうかそうか、それは良かった」

 はあ、娘に甘い父がそこに居る。迷惑するのはこっちなんだよな。

「それと、もう一つ私からプレゼントだ」

「なんですの?」

 公爵様は、懐から小箱を取り出し、イザベラに渡した。イザベラが箱を開けると、その中には奴隷とは切っても切れない縁で結ばれた、あいつが。

「お前のために特注で作らせた鞭だ」

「ありがとうございますお父様!」

 嬉々として受け取る少女、真性のSだったか。

「それじゃあ、私は先に馬車で帰っているから、寄り道せずに帰るんだぞ」

 そういうと、公爵様はさっさと行ってしまった。無責任だなぁ、どうしてくれんだよこの状況。

「それじゃあアレク、出発よ」

 イザベラは俺に鞭を振るってそう言った。早く使いたかったんだろうな、その鞭。

「……はい」

 俺は人力車に力を込めて、力いっぱい引っ張った。なかなかの重さで、結構な力を入れているにも関わらず、車輪はノロノロとしか動かない。

「なにやってんの、もっとスピード上げなさい」

「いづっ!」

 いくら少女といっても、鞭で打たれるのは流石に痛い。そして俺が動いたのが嬉しいのか、さっきから何回も鞭で打ってくる。

 これは想像以上にきつい人生になりそうだ。それにしても、なんで俺は十歳になってもいないのに売られたんだ?

 俺の人生お先真っ暗だ。イザベラのはしゃぐ声を聞きながら、俺は深いため息を吐いた。

もうすぐ受験なのに小説ばっか書いてたら、担任の先生に合格するのは絶望的と言われました。もうどうにでもなれ(笑)

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