プロローグ2
気がつくと俺は、真っ白い空間にいた。ああ、俺は死んだのか。楓をいい高校に行かせてやりたかった。麻衣ともこれからだってのに、ついてないな。
「本当、ついてないよね君」
「え?」
いつの間にか目の前に十歳くらいの子供がいた。男の子か女の子か分からない、中性的な顔立ちの子供だ。優しく微笑んでいる。
「始めまして安藤浩介、今回は本当に残念だったね」
少年――喋り方と声からして――は口を開けずに喋っていた。というかずっと微笑しているため、残念そうに聞こえない。
「んで、君誰?」俺は無難にそう尋ねた。
「僕はマギア、神様だよ」
神様……神様?
「神様が何のよう? 生き返らせてくれるの?」
「そんなわけ無いじゃない、いくら僕でもこっちの世界の人を生き返らせることはできないよ」
さいですか。
「なんか君テンションが低いね、せっかく君にチャンスをあげようと思ったのに」
「チャンス?」
「うん、転生させるチャンス」
転生……あれだよね、生まれ変わりってことだよね。よくラノベとかである。
「転生ねぇ」
「今僕の話を聞かないと後悔すると思うけどなー」
「……なんだよ」
元の自分に戻してもらえないのなら意味が無いんだけどな。
「普通魂というものは輪廻転生を繰り返すものなんだ、でも浩介の魂は何故か輪廻転生しないらしいんだ」
なんだ、いきなり説明始ったぞ。
「……で?」
「驚かないの? まあいいや。浩介は転生しないんだけど、それじゃああまりにも忍びない。そこで僕は浩介を転生させてあげることにした!」
マギアと名乗る少年は、無邪気な笑顔を浮かべた。
「結構です」
「えぇ!? どうして!? 」
声は驚いているようなのに顔はそのまま微笑んでる。正直すっごい気持ち悪い。
「俺はもう死んだんだろ? それに楓や麻衣がいないなら、俺に生きる意味はないよ」
「うーん、もう少し喜んでくれると思ったのに。転生しないと浩介は消滅しちゃうんだよ?」
「別にいいよ」
「はあ……まあいいや、浩介に拒否権ないし」
はあ!?
「何だったんだよ! これまでのやり取り!」
「いや、浩介の反応が見たかっただけなんだけど……期待はずれだったなぁ」
むちゃくちゃだな。
「俺は元々転生できないんだろ? 何でそれを態々転生させようとするんだよ」
「まあいいじゃないか、それに君が転生するところはなんと異世界なんだ! どう? 転生する気にならない?」
「ならないな」
これっぽちも。
「……よし、これから浩介が行く世界について説明しよう!」
スルーしやがった。何なんだよこいつ。
「浩介がこれから行くのは剣と魔法の世界。人間以外にもドワーフとかホビットとか、色々な種族がいるよ」
異世界転生ものの小説によくあるやつか。
「時代は魔王出現から四年後、世の中は復興に向けて大きく動き出しているときだよ」
「魔王?」
「うん、世界を恐怖に陥れた最強最悪の魔族さ。でも安心していいよ、浩介が行くのは魔王がいなくなった後だから」
「お、おう」
そう言われても、というかもう行くことになってんのかよ。
「……俺も魔法使えんのか?」
「お? 興味出てきた? もちろん使えるよ、転生ってことはその世界の人間として生まれてくるってわけだから、でもその人の魔力の適性によって使える幅も変わってくるけどね」
「ほぉー」
「じゃあがんばってね」
「え? もう?」
「幸運を祈ってるよ」
その声を最後に、俺の意識は遠のいていった。