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第1章 「収穫祭」 (8)

 

「すごいねぇ。やっぱり夕方の方が人が多いよ」


 アスタロトは込み合った通りを歩きながら、辺りを見回した。

 夕刻になって、下層の通りは様々な屋台や露店が立ち並び、それを目当てに訪れた人々で混み合っている。

 いや、混み合っているというのは少し可愛らしい表現で、実際のところは歩くのも困難なほど人が犇めき合っていた。


「国中から人が集まってるみたいだよな」


 レオアリスは新鮮な空気を補充しようというように、空を仰いで息を吸い、吐いた。通りの左右に並ぶ三階建ての建物の向こうに、茜色から藍色に染まっていく空が見える。


「お前、王都を初めて見た時もそれ言ったよね。あの時は祭でも何でもなかったけど、祭と間違えて」


 くすくすと可笑しそうにアスタロトが笑ったのは、王都を初めて見た時のレオアリスの感想が面白かったからだ。

 ただ、人里離れた北方の辺境で育った人間が初めて王都を見れば、誰でもそう思うだろうほどには、普段の人通りも多い。


「そんな古い話……」


 レオアリスは振り返って、あれ、と辺りを見回した。今話していたばかりのアスタロトがいない。


「どこ行った? ア――」


 アスタロト、と呼ぼうとして、口を閉ざした。

 こんな所でその名前を呼んだら騒ぎになるだろう。ただでさえアスタロトはすれ違う人々の注目を集めて、そのせいで通りを歩くのが更に困難なのだ。


 先ほどまですぐ横を歩いていたから、まだ近くにいるはずだ。厄介なのは、通りにすっかり人の流れが出来上がっている事だった。

 坂を上る者は右、下ろうとする者は左側を通っていて、逆流しようとするのは、正直言って迷惑だ。


「すいません、ちょっと……失礼」


 何だ何だと睨まれながら、立ち止まれば押し流されそうな人の波を何とか横切るように抜け、レオアリスは露店の並ぶ路肩に出た。


「――いた」


 予想通り、三つほど後方の露店に立ち止まっているアスタロトの姿がある。

 店の主からこんがり焼けた玉蜀黍(とうもろこし)を差し出され、嬉しそうに噛りついたところだった。


「何やってんだ、唐突に」


 レオアリスが苦労して露店の前まで辿り着くと、アスタロトは悪びれもせずににこにこ笑って見せた。


「だっていい匂いしたんだもん。食べる?」

「いや、俺は別にいい。っていうか、今は仕事だろ、一応」

「いいじゃん、お腹空いてるんだし」

「せめてひと声掛けてからに……」


「兄ちゃん、兄ちゃん」


 露店を挟んでひと声掛けられ、レオアリスが振り向くと、店の主がにょきりと手を伸ばした。


「お代」

「――」


 玉蜀黍一本分の代金を支払い、レオアリスは再び歩き出しながら、アスタロトを振り返った。既に玉蜀黍は食べ終えている。

 が。


「お前、金は?」


 レオアリスの鋭い質問にも、アスタロトはけろりとしている。


「ないよ。いつもはアーシアが払ってくれるし」

「……アーシアいねぇじゃねぇか」

「うん。誘ったんだけど、用があるって」

「それはさっき聞いたけどなぁ、そーいう意味じゃあ無くって」

「どういう意味?」

「金が無いんなら注文すんな。俺が捜しに来なきゃお前は無銭飲食……」


「あっ、美味そう! おっちゃん、りんご飴ちょうだい~」


 瞳を輝かせたアスタロトが、するすると路肩の屋台に吸い寄せられていく。


「――」


 ふー、、、と長い溜息を吐き出す。

 何でアーシアは一緒に来てくれなかったのか、と、心底思った。






 結局アスタロトがそうして屋台に吸引されたのが五回は重なった頃、漸くレオアリスは事態打開の方法を思いついた。


 取り敢えず、手当たり次第に何種類もの食べ物を買い込み、アスタロトに握らせる。

 周囲の人々は笑っているが、それを気にしていたら前に進めない。

 この場合、通りを進めない。


「さて、食ってる間に歩くぞ。まずは最初の失踪現場辺りで、例の噂を聞き込まなきゃな。西方軍ではあの水晶でどこまで探れそうだ?」

「はられんれんわはんらい」

「……飲み込んでからでいいよ」


 アスタロトはごっくんと串焼きの肉を飲み込んだ。


「――まだ全然判んない。何せありふれた物だしね。宝飾品扱ってる店だけでも王都に何軒あるやら」

「店か……地政院の営業許可から当りを付けるかな」

「ひょれほあひはほへ」

「判んねェっつうの」


 ごっくん、と蒸したじゃがいもを飲み込む。


「それも有りかもね」


 ちょうど通りかかった街の角には旅芸人達が陣取り、見物の人だかりができていた。

 背伸びして見透かせば、二人一組の曲芸師だ。もう一人、弦楽器の演奏者が軽妙な音楽を奏で、曲芸師がくるりと身を翻すごとにわっと歓声が上がった。

 (くだん)の夜行とは違いそうだ。


 どの角でも似たような輪ができていたが、それらしい者は見当たらない。

 というよりは、この中からその夜行とやらを捜し出す方が難しい。

 砂利道の中から小石を拾い上げようとするようなものだ。


「地政院は明日にでも行ってみるか……アスタロト、悪いが俺も少し関わるぜ」

「たすはふよ、おはえひはわふいへほ、うひほいは、へんはへへいっはいへ」

「あー、そりゃまあ現場が先だよな、気にすんな」

「判ってんじゃん」

「あー」


 一々突っ込むのが面倒くさくなったのだ。

 とにかくアスタロトの言うとおり、西方軍は現場の調査を優先すべきだろう。


「現場には手を出すつもりはないけど、側面を洗ってみる。考えられるのは商店と、後は今王都に入ってる旅芸人の一座か。旅芸人って、許可を下ろすのはやっぱり地政院だったよな?」

「え? えーと、そ、そうじゃないかな。該当しそうな店を抜き出したら教えて」

「判った。――この辺りか? 最初の失踪現場は」


 レオアリスが足を止めたのは、下層南西のマレル地区に入った辺りだ。

 商人や職人が多く住む中層にも近く、以前は各地から運んで来た品々を扱う店が多く並んでいた。


 王都を縦に走る幾筋もの運河の内、数年前に使用されなくなった古い運河が近くを流れている。

 別の新しい運河に機能転換した為、今はこの辺りは商業地区から住宅地へ姿を変えているが、旧運河沿いは使われなくなった倉庫が残り、どことなく寂れた雰囲気が漂っていた。


「レオアリス!」


 唐突に、アスタロトは切迫した声で通りの反対を指差した。


「何だ?!」


 何事かと振り返り、レオアリスはアスタロトの指差す先に視線を走らせた。

 通りの人混みはまだ途切れる事なく続いている。

 それぞれの会話や足音が作り出す騒めき、旅芸人達が掻き鳴らす楽の音。

 特に怪しい動きはない。


「何が――」

「あれ食べたい! 珍しいぞ、あれは」

「――……ああ、団子」


 アスタロトの示した先にあったのは、串焼き団子の屋台だった。


「……もう食い切ったのか?」


「ご馳走様でした」


 アスタロトはぴょこんとお辞儀をし、きらりと光る瞳を上げた。


「お代わり」

「――」


 四大公爵家当主。正規軍将軍。炎帝公。


「大丈夫かな、この国……」

「何」

「いや……」


 独り打ち消すように首を振った。

 副将軍タウゼンは経験豊富な古老で、アスタロトを良く支えている。

 それに他の三公が磐石(ばんじゃく)で、何より、王が統治しているのだ。


「……帳尻は合ってるか……」


 ちょっとくらい緩い場所が無いと、張り詰めてばかりでは糸も切れてしまう。


「何か失礼なこと考えてないか?」

「そんな事は無い。あれでいいんだな?」

「うん」


 アスタロトは串団子を焙っている屋台を見て、嬉しそうに頷いた。




「――ほら」


 屋台の男から串に刺した団子を受け取って、レオアリスはアスタロトを振り返った。


 いない。

 代わりに通りすがりの中年男性に怪訝そうな顔を返された。


「……またかよ。今度はどこ行ったんだ……」


 というより、一体全体何をしにここに来たのだったか。だんだん本来の目的が判らなくなってきた。

 いや、アスタロトの本来の目的とは、間違っていないか――

 レオアリスはほかほかと湯気を放つ串団子を見て、しみじみ肩を落とした。


「食おう」


 ぱくりとくわえると、アスタロトを探すべく、人の波を見渡した。





 レオアリスが通りを横切り屋台に向かっている間に、アスタロトは道端に寄って待つ事にして、建物の壁に寄りかかった。

 ぱっと目を引く美しい少女に、通行人達がちらちらと視線を送っている。


「本当に人多いなぁ」


 屋台だけではなく、所々に設けられた広場では、旅芸人達が日を通して様々な技を繰り広げていた。


「私も混じって火ぃ吹こうかなぁ」


 レオアリスが聞いたら目眩を起こしそうな事をのんびり呟いた時だった。


「ねぇ、お嬢さん」


 忍びやかな声とともに、そっと腕を押える手があった。

 振り返ると、女が一人、アスタロトが寄りかかった壁のすぐ傍の、脇道への入口に立っていた。目深に被きを下ろし、柔らかな香を纏っている。


「――何か用?」


 女はそれには答えず手を離すと、すう、とその手を揺らしてアスタロトを誘い、路地の暗がりに退いた。


 香の匂いに引かれるように、自然とアスタロトは路地に入った。

 女が(あで)やかな紅い口元を綻ばせる。

 あの女――エマだ。


 エマはアスタロトを見つめ、驚きと、とろけるような光を瞳に浮かべた。


「何て綺麗なコ――、ねぇ、あんたお守りはいらない?」

「お守り?」


 アスタロトがエマの近くに寄ると、エマはするりと腕を伸ばし、アスタロトの白い頬を撫でた。


「ちょ」

「あんたのこの陶器みたいな肌を、ずっと輝かせるお守りよ。本当に、何て綺麗な肌だろう。透けるようだわ」


 話している間も頬を撫で、感極まったようにうっとりと息を吐く。


「ああ、この唇も、大きな瞳も、艶やかな髪も、素敵だわ――お人形さんにして飾っておきたいねェ」


 甘く絡み、じわりと這い上がるような声で、両手で頬を挟んだまま、なおも良く見ようというように顔を寄せた。


「綺麗な娘さん……。年取って衰えるなんてもったいない。あんたも今のまま、ずっと美しいままでいたいでしょう?」

「ちょっと、は、放してくんないかな」


 エマは反対に、アスタロトの腕を取り、肌に手を滑らせるように撫でた。


「んぎゃあ!」

「あんたに永遠をあげる。ユンガーがあんたを見たら、真っ先にそうするよ。ああ、でもあんたはあたしの傍に置きたいわ。どうしよう」


 エマは焦れるように身体を捩り、アスタロトの手を握ると、手の中に何か小さな硬いものを握らせた。


「あんたを今のまま」

「放せってばー!」


 握り締められた手を振り(ほど)こうとした時に、漸く救いの声が掛かった。


「アスタロト」


 路地の入り口に、アスタロトの姿を捜し当てたレオアリスが呆れ顔で立っている。


「ここにいたのか。お前いい加減にしろよ、何度も――」

「レオアリス! 助けてぇ!」

「はぁ?」


 アスタロトの向こうを確認するように覗き込み、エマの姿を捉える。


「誰だ?」


 レオアリスの顔を見て、エマはぎょっとして身を震わせた。


「朝の――」


 一言洩らし、次の瞬間には身を翻して通りの奥に駆け出した。

 アスタロトの手に押し付けていた何かが地面に落ち、脆い音を立てて砕けた。

 アスタロトとレオアリスの眼が、砕けたそれを確認する。


 水晶だ。


「……待て!」

「俺が追う」


 レオアリスは駆け出そうとしたアスタロトの肩を抑えて横をすり抜け、エマの後を追った。

 路地の奥がちかりと光る。


「――炎だ!」


 アスタロトが叫んだのと、レオアリスが右手を振り抜いたのは同時だ。

 路地の奥から雪崩出た炎の塊が、レオアリスの手元から走った青白い閃光とぶつかり、二人の手前で砕けた。

 風が髪を煽り、炎が閃光に切り裂かれて散る。


 レオアリスの手には、いつの間にか一振りの長剣が握られていた。暗い路地を照らすように、刀身が青白い光を纏っている。


 レオアリスの――剣士の、(つるぎ)


 そのまま女を追い掛けて路地を駆け、二、三度角を曲がった所で足を止めた。

 路地はそこで行き止まりになっていたが、既に女の姿は無い。

 今通ってきた路地は、他に曲がる所のない一本道だ。


 レオアリスは瞳を細めた。

 まだ明確に残る、法術の気配。


「法術――あいつ、法術士か。この短時間で移動するなんて、結構高位だな」

「――この私に炎を仕掛けるなんて、いい度胸じゃないか」


 追い付いたアスタロトは薄っすら笑みさえ浮かべながら、レオアリスの横を通り越し、路地を見回した。


「絶対に、倒す!」

「倒してどうするんだ。捕まえるのが先決だろ」

「いいや、倒す! 何か腹立つし!」


 妙に頬を撫でてきた手を思い出し、アスタロトはぶるりと身を震わせた。

 アスタロトの憤りの理由は、当然レオアリスには判らない。取り敢えず聞き流して袋小路の壁に近付き、赤茶けた煉瓦に手を当てた。


(法陣は無いか。最初から逃走経路を用意してた訳じゃないんだな。却って厄介だ)


 他の痕跡を探す為に、視線をゆっくり周囲へ巡らせ――

 ぴたり、と動きを止めた。

 ばっと上空を見上げる。


 建物に囲まれたここから見えるのは、既に暮れきった空だけで、あとは煉瓦の壁と屋根の(ひさし)。窓もない。

 だが一瞬だけ、刺すような視線を感じた。


「――」


 もう何の気配もない。


「アスタロト、何か感じなかったか?」


 アスタロトは耳を傾けるようにじっと佇んでから、首を振った。


「――いや。何?」

「誰か見てたな」


 アスタロトは再び周囲に視線を投げた。紅い瞳が陽炎のように揺らめく。


「あの女かな」

「判らない」

「小隊を呼んで、すぐこの場所を調べさせよう」


 アスタロトの言葉に頷き、もう一度壁を見上げてから、レオアリスは元来た路地を引き返した。


「さっきの水晶を回収しておこう。相手はどんな奴だった? 顔を覚えてるか?」

「思い出したくない! 気持ち悪いよぅ」

「何だ? 気持ち悪いって」


 アスタロトはまた憤慨しながらついて来る。


「ペタペタ撫で回されたっ」

「はぁ? 何だそりゃ」

「何か変な事言ってさぁ」


 路地の入口辺り、先ほどアスタロトが立っていた場所に、まだ水晶の欠片が落ちていた。

 膝を付き、レオアリスは砕けた水晶を拾い上げた。

 乳白色――同じ物だ。


「で、あの女は何て言ったんだ?」

「永遠をあげるとか、ずっとこのままでいるとか、訳の判らないこと」

「永遠――?」


 レオアリスは考え込むように、膝を付いたまま口元に手を当てた。


 永遠を、あげる。


 長命を保つ種族は幾つか存在する。剣士もその一つだ。

 だが、永遠を有するものなどない。


 永遠をあげる。

 誰が、どうやって?


「法術士か――。今朝のって言ってたな」


 レオアリスを見た時に、あの女はそう口走った。

 つまり、鞄の持ち主という事だ。


「確定だ。繋がってる」


 立ち上がり、アスタロトの傍に寄ると、その手の上に水晶の欠片を置いた。







 エマは荒い息を吐いて路地の壁に寄りかかった。

 先ほどの場所からそう遠くはない区画だったが、路地の出口が面している通りは全く違う。

 ただでさえ迷路のような下層の裏路地は、こうして離れてしまえば見つけられる心配は無い。


「全く、何だってここにまで剣士なんかがいやがるのさ、忌々しい」


 そう言いながらも、身体はまだ震えていた。右の袖が二の腕の半ばで切れ、皮膚にも薄く赤い線が走り血が滴っている。

 エマが作った炎の渦を切り裂いて届いた、風の刃。

 ぞっとした。


 離れた場所から、法術を破って――あれが、剣士の剣だ。

 咄嗟に転移の法術で逃げたのは正解だった。


「それに、アスタロトだって? まずい、まずいよ」


 苛々と親指を噛みながら、薄暗い路地を行ったり来たりして呟く。


「ああ、でもあの()、本当に欲しいわ――アスタロトだからって、手に入れられない事はないもの、びびんなくたって」


 本当に、あの美しい少女は気に入った。今までも、ユンガーの人形でも見た事が無い。


「どうにか、あたしだけのものに」


『エマ……』


 低い声が忍び寄り、エマはぎくりとして身を震わせ、声のした方を見回した。

 上の暗がりを見上げ、ひゅっと息を飲む。

 路地を囲む壁の途中に、光る眼が浮かんでいた。


「ユ、ユンガー」


 眼の持ち主は、人の形をしていた。

 薄暗がりにいて判りにくいが、華やかな色彩の衣装を纏った女だ。

 まるで蜘蛛のように、頭を逆さまにした四つん這いの格好で壁に貼りついている。


 二つの瞳がギラギラと光を帯びてエマを捉えた。

 ギギ、と壁を掴んだ手足が鳴る。

 鳴っているのは、彼女の関節だった。


『あの娘、気に入った』


「み、見てたのかい」


 じり、と後退り、反対側の壁に背中を当てて止まった。


「まあ待ちなよ、今日はちゃんと下層の娘に水晶を渡して来たんだ。うんと綺麗な娘さ。あんたもきっと気に入るよ。今夜連れに行こう」


 エマは矢継ぎ早に並べ立て、無理矢理笑みを浮かべた。


「大体、見てたんならあんたも判ったろ? 剣士がいるし、軍が動いてるよ。今夜娘を手に入れて――そしたらずらかっちまった方がいいじゃない」


 ギチギチ、と音が降りてくる。


『いいや――気に入ったんだよ、彼女が』


 荒い息を吐くエマの前に、女は逆さまになったまま、顔だけをぐるりと回して突き出した。

 美しい顔が、目の前で笑う。

 瞳には生命の光は無い。


 エマの前にいるのは、人形だった。


 エマはゆっくり息を吸い、吐き出した。


「――わ、判ったって」


 驚くべき早さで壁を伝い、人形は屋根の向こうに消えた。










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