ボケをスルーされる残念たち(Xー15話)
彼、つまり石嘴太樹は最近ネットゲームにのめり込みそうになっていた。幼馴染たちのおかげで学校になんとか休まず行けている状況であった。
家の中にインターフォンが響き渡り、幼馴染の一人である座木悔奈が迎えに来てくれたことを知らせる。
寝巻き姿からちゃんとした格好に着替えようとするとインターフォンを連続で鳴らし始め、しょうがなく出ることにした。
「やっと出てきたわね、ってなんでパンツ一丁なのよっ⁉︎」
そこで彼はあ、と口を開け気づく素振りを見せた。
「いや、だってさ、悔奈がインターフォン鳴らし続けるもんでさ、機嫌を損ねると後が怖いから、ひとまず出てみることにした」
「遅く出てきた方が怒らないわ、パン一よりはね。それより早く着替えなさい、間違いなく美郷も待っているわよ」
冷静さをすぐに取り戻した悔奈は、むしろ主導権を握った。
太樹はブツブツと何かを言いながら階段を上り、部屋へと戻っていく。
部屋に入りそうになった太樹は、唐突に振り返って、
「絶対に覗くなよ」
と、一言残した。
覗かないわよ、と返すのすら無駄だと思った悔奈は、大きくため息を一つついた。
部屋に戻った太樹は作戦成功だと言わんばかりの表情になった。事実、彼は計算通りに部屋に彼女を入れないことに成功した。
嬉しすぎて発狂しそうになったほどだ。それを抑えるために、右手が疼くぅ、と言いながら左手で右手を抑える仕草を取り、一人で虚しくなった。
太樹の部屋には、プログラミングなどの雑誌などが散乱していた。悔奈は母性溢れる人間だからこれを見たら起こるに違いない。
しかし、生活感のある部屋までには至っていない。できるだけゴミが出ないように、インスタント食品は朝しか食べていないようにしている。ゴミ出しにもちゃんと行っていて彼は独り暮らしとしてはできている方であった。
彼が目を向けたのは、部屋にあるパソコンだ。パソコンにはイヤフォンが繋がっていて、多少音が漏れている。彼はそれを見て少し微笑んだ。
そして、音の元を一時停止にして身支度を始める。着替えを済ませ、部屋の明かりを消して部屋を出ていく。
太樹が部屋から出てくると、悔奈はやっと来たかと待っていた様子であった。そして太樹に弁当を差し出した。インスタント食品を昼に食べない理由はこれである。
太樹はあらかじめバッグに入れておいたパンを取り出して、口にくわえて靴を履く。
「うっわぁー、そういうのは普通女子がするものじゃないかしら? あんたがし始めたら皆同じことし始めるわよ」
それはくわえられている食パンに対するものである。
太樹は校内では人気で、モテていると言った方が的を射ている。
理由として挙げられるのは顔だろう。美形な彼は、女子や|特殊な性癖を持った男子から人気である。しかし彼には彼女がいない。彼氏もいるわけではないが。
彼を好きな人間の多くが見た目での判断だ。性格は見ていないような奴らが多数。
彼に恋人がいない理由はそういう奴らが嫌いで、いつも男子ばかりとつるんでいるということが大きい。
それに、幼馴染でおる座木悔奈や山我美郷が隣にいることでだいたいの女子は近づき難くなっていた。
近づいてくる女子で特例なのは、太樹のクラスメイトの神田瑤と、美郷を好きな一部の女子だけである。
太樹と悔奈がいつも乗っている上り電車が来る駅のホームには、もう一人の幼馴染、山我美郷が待っていた。
彼らがいつも待ち合わせているのはこの場所で、いつも太樹たちが遅れてやってくる。その間、美郷はスマホから音楽を流して聞いている。彼女の性格から考えられる人はいないであろう、女性アイドルの曲を聞いていた。曲調など諸々が彼女の感性にマッチしたようだ。
ずっと聞いていたい衝動に駆られたが、スマホの時間を見るとそろそろ二人が来る頃だと思い、イヤフォンを外した。
ちょうど良く、悔奈がこっちへ駆けてきた。その20mほど後ろをすごく疲れた様子で太樹が歩いているのが見える。
「おはようですお二人とも。今日もおアツい様子で何よりです」
ここでいきなりボケを二人にかました。
しかし、
「ホント、最近暑くなってきたわよねぇ。まだ5月に入ったばっかりなのに」
「そうそう、ホント毎日こうも暑いと学校行くのはツライよな。まぁ、ツッコミ待ちなんであろう発言を無視しなくちゃいけないのもツライんだけど」
「あら、ツッコんでも良かったのよ?まぁ、しないならそれでもいあ、。敢えて天然ということにしておけば、属性が増えるもの」
「僕はさすがにそういうのには萌えないなぁ。やっぱり天然っていうのは自覚がないのがいいんだよねぇ。作ってるのも、それはそれで需要があるんだけど」
「だよな、やっぱ美郷はよく分かってる。理解も出来ずネタをかましてくるなんて、やっぱり悔奈は応用効かないなぁ」
「そんなことより、電車来たわよ?
早く乗りましょう。入れなくなるわ」
早く乗らないと乗れなくなるというのは、人数が車両の分に合わない量なため、あながち間違いではない。
前に出過ぎるのは危ないが、三人は他の人を掻い潜って前の方に出た。
どでしたか?
自分としては、もっと文才が欲しい‼︎というのが一番であるんですけどね。
自分が書きたいものを完璧に表現できたらいいですよね。
関係ない話になりますが、
つい最近まで完璧の璧の下の玉ってあるじゃないですか?
そこをずっと土だと思って書いてたんですよ。もちろんデジタルじゃなくアナログな方でですが。