彼女に言った。好きです、と。(X話)
その日僕は、引きこもり気味の彼女を家から連れ出してデートをした。ちゃんとエスコートできてるか不安だったけれど、僕なりに考えて出来たと思う。
彼女の体は弱いから、出来るだけ煙草の煙が避けられる場所とか考えなくちゃと思った。
映画館では、友情ものの映画を見て、いいものだなぁ、と思えてよかった。
彼女はどうだったんだろう?
僕にはしてあげられることが少なくて、本当
そんな僕に僕はイラついた。
彼女は僕の心を見透かしているかのようで、真面目な顔でゴメンと言われた。
僕の心は嬉しさで弾けた。砕けたのかもしれない。まぁどちらにせよ泣きそうだった。
そんな気がしてた。
途中、生きていることは当たり前、そう思って世界で粋がっていそうな奴らがいて、自分に対してよりも腹が立ったんだけれども、そのとき彼女が僕の手を強く握ってきて、僕は彼女の怒りを沈める側になって僕の気持ちはどこかへ飛んでいった。
トイレに行くから、とコンビニへ急いで向かう彼女の背中を見て、こんな状況がいつまで続けられるのかと不安になったよ。
人の少ない公園のベンチに二人で座って、他愛もない話をした。
彼女は本当に病弱で、夏だけど、外の風に当たるのは毒なのかなと思って、16時になりそうな辺りで、僕は立ち上がった。
そして僕は彼女に言った。
「好きです」
と。
付き合ってください、とも言いたかったんだけど、これ以上は彼女に精神的な負担をかけるわけにはいかない。
だから僕は
「帰ろうか」
そう続けて彼女の手を取り、彼女も立ち上がった。
彼女と僕は、いつもの調子で他愛もなく、
普通どおりに、とはいかないけれど
手を握り、歩き始めた。






