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6話目 入場券は販売開始10分で完売致しました

〜一年前・決闘場、オリバー視点〜


 学園の敷地内に建てられた巨大なコロッセオ

 生徒達の間で『決闘場』と呼ばれるこの施設は、学内で唯一、生徒同士の戦闘が許可された場所だ

 それ故に諍いを起こした生徒同士が、


「決闘場に顔出せや」

「望む所じゃ!!!」


 というようなノリで決闘が執り行われている

 この場所では様々な理由で決闘が行われる、

 単にアイツが気に入らない、痴情の縺れ、金銭問題、音楽性の違い、おやつ食べられた・・・etc

 非常にどうでもいい内容が多いのは、この学園が平和だからなのか・・・

 しかし、これもれっきとした決闘、負けた方は相応の対価を支払う必要がある


 しかし、負けた奴の中には頑にソレを拒否する者が存在する

 そいつらに対価を支払わせるために、この学園には独自の委員会が存在する


「どうも〜♪ 本日、決闘の運営及び司会、勝敗が付きました後の徴収を担当させて頂きます、決闘推進促進委員会のステラと申します。本日はどうぞヨロシクお願いしますね♪」


 決闘場の受付に座る一人の女子生徒

 褐色の肌にエルフ特有の長い耳、ダークエルフの少女である。

 身長は低く、小柄な体格だ

 その体格故か『メイド服』が良く似合っていた。


 実はこのメイド服、ある生徒がクエストで遠征に出かけた際、貴族付きの服飾デザイナーに掛け合い仕入れて来た物だ。

 そして、購買部で件の生徒からの商談を引き受けたのはオリバーであった

 その生徒曰く、


『学園内には逸材が多いのに、皆着るのは無骨な鎧ばかり・・・、俺はほとほと嫌気が差したんだ!

 だから俺は、授業そっちのけで世界を回り、可愛い服を買い漁ってくる

 だからオリバー・・・いや友よ! 俺が持ち帰った服を出来るだけ多くの女子生徒に広めてくれ、頼んだぞ・・・』


 とのことだった。

 何故か俺は変な男共から友達認定されがちだが、無論ソイツとも友達ではない

 まぁ、持ち込んできたメイド服は、安く売ってくれて、こちらも高値で売れたので、良い仕入れルートとは思っているが・・・

 今はたしか極東に着物と水着の買い付けに行っているらしい。

 ・・・一回、ソイツに、こんなに安く売って採算は取れるのか、利益になるのか? と、聞いた事がある、そしたら・・・


「あまいぞオリバー

 利益とは別に金だけのものではない、俺は女の子の美しい姿が見たいのだ、それだけで俺にとっては十分な利益なのだよ」


 と、清々しい笑顔で言ってたときは鳥肌が立った

 でも、アイツも俺とは違う種類の商人なのだと理解した・・・それ以上は考えない様にした・・・


 ダークエルフのメイド娘、ステラが訪ねてくる


「今日はどちら様とどちら様が決闘のご予約をなさいますか?」


 俺は決闘をしにきたのだ。

 あの飲んだくれにこれ以上購買部は任せられない・・・

 

 この決闘に勝ち、俺は購買部運営委員の会長となってみせる!!!


 オリバーが当初の目的を思い出すのは少し先の話


〜一年前・決闘場、アリシア視点〜


 コロッセオの観客席は満員を記録していた・・・

 そのほぼ全ての観客は、これから行われる『守銭奴vs酒乱の牝狐』の決闘を見に来ているらしい。(悪口にしか聞こえないな)


 何やら訳の解らない状態で連れられて来たアリシアは、当然ながらオリバーという男に腹を立てていた。

 

 あの後、ハルカという獣人の女性に決闘を申し込んだオリバーは、唖然としていたジェロームに店番を任せ、ハルカを連れてコロッセオに向かってしまった。

 呆然と立ち尽くす私にエドガーが、


「あーあ、行っちまいやがったな。

 ・・・どうだいアリシアちゃん

 オリバー達の決闘、俺と一緒に見に行こうぜ」


 そう言うや否や、エドガーは私の手を掴み、半強制的にコロッセオに連れ去ったのだ

 最早、誘拐だと思う・・・

 ちなみにレオンは、ジェロームが面倒を見ると言いだしたので放置して来ている。


 そして今、私は一人

 私を連れ去った張本人は、二人分の席を確保すると何処かに消えてしまった。


「連れ去った挙げ句に放置とは、いい度胸じゃないか・・・」


 これほどの取り残され感は、アリシアにとって侮辱としか取れなかった


 決闘が始まるまで時間が少しある、エドガーが戻って来る可能性があるから席を離れる訳にもいかず(その辺、律儀な娘です)、手持ち無沙汰を感じていると、周りの五月蝿さが耳に残る。

 エルフ族は伊達に耳が長い訳では無い、聴力も人間族の数倍はある。

 今までは、このような場所に来る事の無かったアリシアにとって、その雑音は不快感こそ感じないものの、やけに気になった


(はしたないが、聞こえてくる物は仕方ないよな・・・)


 自分にそう言い聞かせて、アリシアの斜め前に座る男子生徒の一団の会話に耳を傾けた。


男A「なぁ、この後の試合、どっちが勝つと思う?」

男B「・・・判断しかねるな、でも、学年を考えれば牝狐が勝ちそうだが・・・」

男C「オリバーさんも舐めちゃ駄目ですよねぇ

  あの人、手段を選ばない所あるし、反則じみた強さもありますし・・・」

男B「ああ、ジョブ・商人にしてあの強さはチートと言っても過言ではないな」

男A「でも商人だろ?

  牝狐が一撃当てれば一瞬で蹴りが付くんじゃね?」

男B・C 「「・・・」」

男A「あれ?・・・、俺、何か変な事言った?」

男B「あいつ・・・オリバーは『呪われた168期生』だぞ・・・

  なに仕出かす解らんし、伊達にあの学年から生き延びた訳じゃない

  単純な戦闘力と、危機的状況時の判断力に関しては4年生にも勝る男だ

  ただ、簡単に負ける男ではないさ・・・」

男A「・・・」


 そこで会話は途切れてしまった。

 この話を聞いているとオリバーもハルカも、生徒達の間では有名な存在らしい

 牝狐、守銭奴・・・

 悪口にしか聞こえないが、渾名を付けられるだけはあるのだろう


 アリシアは密かに、これから始まる決闘にモチベーションを上げてきていた。


〜一年前・決闘場選手入口、オリバー視点〜


 オリバーはビーストキラーを握りしめる。

 今回の決闘における、ジョーカーの役割を持つ道具だ、大事に扱わなければならない


 ビーストキラーは、一見、普通の槍と変わりはない

 しかし、その能力は対獣に対して非常に優秀なのだ

 その要因は穂先に仕込まれた『狩猟の呪詛』に由来する。

 この呪詛は、ある神の遺物を研究した結果発見された呪術式を元に作られている

 まぁ、その神の遺物が、ある狩猟神に由来するものだったため、獣に対して圧倒的な威力を誇るのだ。


 ・・・問題としては、見た目が普通の槍とほとんど変わらないため(穂先に刻まれた呪術式以外は)、ただ適当に文字を刻んだだけの偽物も出回っていることか。しかも判別が難しいため、オリバーも仕入れの際、細心の注意を払って見極めている。


(でも、たまに偽物が混ざっててクレームが来るんだよな・・・)


 会長がああだから、クレームの対応もオリバーの仕事だ。

 決闘前に、今までのストレスが沸き上がって来た・・・


 ハルカはオリバーの師匠に当たる人物だが

 師への恩以前の問題で、彼女には迷惑を掛けられ続けた・・・

 だからオリバーは彼女を師匠とは思っていても、尊敬はしていないのだ


 怒りが溢れて来たからか、ついつい槍を持つ手に力が籠る

 久しぶりに持つ槍は、驚く程自然に手へ馴染んでいる

 何年間も振り回したのだ、これが自然なのかもしれないな・・・


 オリバーが感慨に耽っていたとき、その声は響き渡った、先ほどのダークエルフの声だ


『レディース・アンド・ジェントルメン!!!

 決闘が大好きな、若干イカレタ紳士淑女の皆さん、本日はご来場誠にありがとうございます!

 初めて来て頂いた方は初めまして、久しぶりに来て頂いたお客様はお久しぶり、毎日の様にご来場頂いているソコの貴方!!!

 昨日ぶりですね(ニコ〜)

 そんな貴方の成績の程が、このステラ、若干不安になって来たおります、勉強もして下さい!

 学業を頑張った上での決闘です!!!

 皆様、そのことを夢夢、忘れませんように心掛けてくださいね!


 さてさて、それでは本日のメインイベント

 見つけたカモは逃がさない、悪逆非道の守銭奴魔王オリバー君と、

 学園が誇るアル中マドンナ、酒乱の牝狐ことハルカさんとの決闘を開催致します!!!』


 観客の雄叫びがここまで響き渡る

 俺はもう一度、槍を握りしめて決戦の舞台へ向かった・・・

次話から、作者の苦手な戦闘描写多数WWW

心の目で、想像力をフル活用して見て下さい


どうでもいいですが


ハルカは極東、日本に近しい国の出身なので、漢字で名前を書くと『遥』です


作中で触れられる機会が今の所見当たらないので、作者が忘れる前にこの場で失礼しますWWW

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