4話目 お客さまは神様です(エドガー及び一部を除き)
エドガー視点
結局、購買部を追い出されたエドガーだったが、その顔には笑みが溢れていた
(オリバーで遊ぶのはいつも楽しいなWWW)
オリバーは同学年であるが、一つ年上の先輩である
しかし、昔から親同士が仲良かった彼等は、小さい頃からよく一緒に遊んでいた
所謂、幼馴染みなのだ
だが、幼馴染みであると言うと、オリバーは心底嫌そうな顔をして
「お前と幼馴染みなのは、不本意極まり無いから言うの止めろ」
と、言われるので『親友』ということにすると
「何処の誰が親友だ!
虫酸が走る、断じて違うと抗議する!!!」
と、大声で全否定される
・・・とは言いつつ、昔から面倒見が良いオリバーは、三日に一度はトラブルを引き起こす俺を見捨てたりはしない
小さい頃の記憶に想いを馳せると、流石に自分のことを苦手というオリバーの気持ちが解る
俺の引き起こしたトラブルは多岐にわたるのだ、
そのほぼ全てに巻き込まれたオリバーの苦労がしのばれる・・・
1、探検と称して友達数名と共にダンジョンに潜り、帰れなくなる(4歳)
2、家畜として飼われている魔物に悪戯をして、街に多大な被害を出す(5歳)
3、領主の貴族邸にあった、高名な芸術家の描いた絵画に悪戯描きをする(6歳)たしか、まだバレてない筈。
4、家に置いてあった槍を振り回し、家具を全滅させる(7歳)
以上が4〜7歳までに引き起こしたトラブルの、ごく一部だ
5、友達数人と家に置いてあった武器を持ち寄り、ダンジョンにリベンジしに行く
ダンジョンのボスと出くわしたが、そのとき既に天才的だった俺とオリバーはボスを倒す。親にマジ怒られる(8歳)
6、ボス倒したことが有名になりすぎて、俺とオリバーが騎士団に招集される
騎士団長のハゲを笑ったことで、オリバーの顔が真っ青になっていたのは記憶に残っている
その後二人で、学園に入学するまでの間、ハゲ団・・・騎士団長の元で基礎的な修行するハメになる。
俺にだけ無茶苦茶厳しかった気がする・・・(9〜15歳)
8、騎士団見習い時代は数えきれないトラブルを引き起こしたが、割愛
9、学園にオリバーより一年遅れて入学、俺TUEE状態になってた
ハゲ団長いわく、俺達二人はかなりの逸材だったらしい
団長が今のオリバーを見たら、全力で騎士学科に転科させるだろうな・・・
■
購買部を出ると俺は学園の中庭・・・とう名の植物園へと向かった
ここは美しい植物に囲まれた植物園は学生達の憩いの場でもある
魔法植物学を教えているマック先生(通称・爺ちゃん先生)が作り出した空間で、季節感を無視して年がら年中、ヒマワリや桜などの季節の風物詩とも言える植物を楽しむことが出来る
しかし、奥に行き過ぎると、食人植物トリフィドや、マンドレイクなど、一般には魔物としてカテゴライズされる植物も栽培しているため、戦闘力の低い新入生が学園で失踪する場所の一つである
そして、学園の丁度中心に位置するこの中庭には、学園内で一番神聖な建造物が存在する
『宗教連合教会』
初代・八聖勇者が広め、
現在、世界人口の約7割の信者を抱える一大宗教であるが
その教えは宗派によって分岐する
初代の八人はそれぞれの目指す所が違ったため、後に分かれて行ったのだ
ある勇者は、仲間を助けるために戦い
ある勇者は、魔物を駆逐するために戦った・・・
そういえば初代の勇者には、金銀財宝欲しさに戦ってた人も居た
それぞれの教えが、根本の部分では同じでありながら微妙に異なるため
一つの宗教と呼ぶのは難しく『宗教連合』という形をとっている
以上の内容は騎士見習いとして修行させられた時、ハゲに叩き込まれた・・・
まぁ、長い学園生活において、ここに一度も来ない生徒は皆無だろう
なぜなら、ここは学園内で唯一、ジョブチェンジおよび、クラスアップおよび、転科の手続きが出来る場所なのだ
それと、学生のときに死ねば、この教会にお世話になるだろうな
実は学生の間に死んだ彼等を弔うための慰霊碑もここにある
教会前に置かれた慰霊碑は巨大である
全長3メートル越えの巨大なクリスタルで出来たそれのなかには、死んで行った者達の名前が幾多にも漂よう
この学園は殺伐としているため、学校行事で命を落とす学生も少なく無い
毎回、行事が終わる度に、このクリスタルの前には級友の死を悼む生徒が押し寄せる
そして今も一人の生徒がクリスタル前で、ある人物の死を悼んでいた
「よう、アリシアちゃん
何か嫌なことでもあったかい?」
極力、明るい声を出してみたが、場違いだったか・・・
呼ばれた彼女は立ち上がると、俺の方を振り向いてはにかんでくれた
■
「誰に合いに来てたんだ?」
植物園のベンチに並んで座る
この学園では、慰霊碑に行き誰かの死を悼むとき、『〜さんに合いに行く』という言葉を使う
本人に訪ねることは躊躇われたが、まぁ、俺は空気読めない人で通ってるしねwww
「・・・168期生の方々に会いに来てました、会長がああなった要因だと思ったので」
ああ、そっちか
確かにオリバーが、ああなった原因ではあるけどな
でも、その謎は死人が答えてくれる物では無い
そして、生き残ったオリバー達にも何が何だか解らない事件なのだ
その事件は、オリバー達、168期生の生き残り8人が留年していることと、現在、学園に4年生が居ないことの原因なのだ
「アリシアちゃんは今のオリバーは嫌いかい?」
「あの男は何時か必ず、私が、更正させてみせます」
「・・・頑張ってね」
こわーー
アリシアちゃん目が笑ってなかったな・・・
美人が怒ると無駄に恐いゼ
「あっ、それとですね・・・」
なにか思い出したらしく、アリシアちゃんが声を上げる
「先ほど、ジェロームさんがレオンを無理矢理連れ回していたのですが
なんか、本人が迷惑しているらしいので、ジェロームさんに注意しといて下さい」
ああーー
同級生のドワーフの顔を思い出すとウンザリする
あいつ、一年前の出来事でレオンを凄く気に入ったらしいからな・・・
舎弟にするとか言っていたな
俺は、久しぶりに懐かしい出来事を思い出して笑ってしまった
そんな俺の顔をアリシアちゃんは訝しむ様に眺める
「いや・・な、久しぶりに懐かしい事思い出してなwww
また、一年前のメンバーでクエスト行かね?www」
そしたら急に立ち上がり
「絶対却下です!」
・・・そんなに嫌か、あのメンバー・・・
俺的には最強メンバーだと思うんだけどな・・・
「そうか、それは残念だ
アリシアちゃん的には、一年前の出来事は全般的に無かったことにしたいようでしね
蒸し返すのはよそうかwww」
よく見るとアリシアちゃんは、下を向いて赤くなっていた
普段と印象の違う彼女の様子に、少なからず優越感に浸れた
しかし、これ以上、彼女の恥ずかしい記憶で遊ぶのは止めようか
なんか殺気を込めだしたし・・・
「わるい、わるい、悪かったって」
「・・・前々から思ってましたけど、エドガーさんって人の気持ち解ってないですよね?」
いつの間にか、顔を上げていた彼女は満面のスマイル
怒ってますなwww
ああ、やべぇよな・・・
俺は現実逃避するために一年前へと想いを馳せた