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1話目 エーテルは用法用量を守り正しくお飲み下さい

連載二作目です、よろしくお願いします


短編の件からご存知の方は本当に申し訳ありませんでした

短編から、ごく一部加筆修正を行っているので、よろしければ見ていって下さい


これからも暖かい目で、ご声援のほどお願いします

作者、頑張っちゃいますのでwww

「最近の人気商品はこれです・・・」


 エプロン姿の、エルフの少女が持ち出したのは『ロングソード』と呼ばれる剣である

 主に駆け出しの冒険者が愛用する武器で、この剣と『ウッドシールド』は駆け出し冒険者でも無理なく買えることで需要が高い。


「客層は、4月に入学した新入生が80%を占めています、残りの20%は練金素材目当ての上級生ですね」


 説明されている、ヒューマン(人間族)の青年・オリバーは考える


 4月に新入生が入学してから1ヶ月が経つ

 学校が初期に提供するクソ装備では、無理が出てくる所だろう

 ソレを証明するかのごとく、初期装備のナイフなどの売却依頼が多すぎて困っている所だ・・・


「逆に、前年度より売り上げが伸び悩んでいるのはポーションなどの回復アイテムです」


 エルフの少女で、学年は2年、購買部運営委員会では副会長の席に着くアリシアは、そんな驚きの報告をする


「まさか・・・」


 俺は柄にも無く驚いてしまう


 ポーションとは、レベルの低い冒険者にとって貴重な回復アイテムである

 レベルが上がるにつれて、もっと上位の回復アイテムにシフトして行く傾向があるが・・・

 もっとも、一年生が入学して半年経つまでの間は主力商品である筈だ、それがこんなにも早くに売り上げが落ちるとは・・・


「逆に在庫切れを起こしているのは、エーテルなどの魔力回復アイテムです。 理由として挙げられるのは、今年の新入生にはプリーストやモンクなど、一次職で選べて回復魔法を覚えれる学科を選ぶ学生が多いという傾向ですね」


 つまり、今年の新入生は『回復職重視型』か・・・

 最初の商機を見誤った俺は、深い溜め息をついた

 『回復職重視型』とか、マニアックな学年なんか資料見る限り10年に一度あるか無いかだ・・・


 俺が見誤った理由として言い訳として挙げるなら・・・


 南の邪龍討伐に参加した『第167期八聖勇者』の一人、ジョブ名『アークビショップ』の活躍か、

 モンクやプリーストなどから派生できる最高位職で、高い回復魔法と光属性の強力な魔法を扱うことが出来るジョブだ。

 今回の邪龍討伐、特に彼女の活躍が目紛しかった・・・


 往々にして職業とは、その時代、その時代で目紛しい活躍をしている物ほど人気が高い

 その時、高く評価された芸術家がいれば皆、芸術家に。ベストセラーの本が売れれば、皆、本を書く。例えば、その本の作中で騎士が活躍すれば『ナイト』のジョブの人気が上がったりする。


「会長、失礼ですが、私は、 新入生合同研修に合わせて発注を見直すべきだと思います」


 普段、感情を表に出さない彼女は、珍しく俺に強い口調で提案する


 新入生合同研修

 毎年、入学式の1ヶ月半後に行われる新入生対象のイベント

 名目上は『勇者養成所の一員として、仲間と協力する大切さを学び、個々の能力の向上を図る研修』とされているが、その実、『毎年この時期になると大量発生する魔物の討伐と、勇者養成所に不釣り合いな人物を振るいに掛けるのが最大の目的』なのだ。

 あまりに魔物が大量発生するので、教員はもちろん、上級生の一部が研修に付き添う形をとる。しかし、それでも毎年、大勢の学生がこのイベント後に学校を去り、中にはこの世を去る者も少なくない・・・(おかげで、棺桶が売れる)。

 今回の新入生は『回復職重視型』なので、火力に劣る・・・

 そんな彼らが研修に行き、どうなるかは簡単に予想が出来る。


 彼女の心配は最もだが・・・


 この世界で、この学校に来て、自分の生き抜く術を身につけようとしない馬鹿な新入生には、少し痛い授業が必要だ・・・


「俺は、方針を変えない。例年通りの発注を行う。・・・、いや、ポーション多めに注文掛けろ、棺桶と葬儀用具も去年の倍追加な!」

「会長!」


 アリシアが俺に詰め寄る

 二人しか居ない購買部運営委員会で彼女を止める者はいない・・・


「なんだよ・・・」

「なんだよじゃありません、発注を見直して下さい、お願いします」


 誇り高い筈のエルフ族の少女は、俺に頭を垂れた


「このままでは、新入生全員にエーテルが行き渡りません、万全の準備が無いまま研修に望めば、魔力切れで、多数の回復職の後輩が危機に晒されます、どうか発注を見直して下さいお願いします」


 ここまでとは重症だ・・・

 もともと、博愛主義的な理想主義者の偽善者じみた少女だったが・・・


「お前は、どうやら新入生を死なせたいらしいな」

「?! 後輩を死地に追い込もうとしているのは貴方ではないですか!!!」


 どうやら、俺の言葉に激怒したらしい、これも珍しい光景だ


「頭を冷やせ、商人はいつも冷静を心掛けろアリシア」

「私は冷静です! 貴方の愚考に怒れるほどに!」


 それを世間では冷静と言わないのだが・・・

 というか、俺の呼称が貴方になったな・・・


「俺を舐めるなよアリシア、大事なカモを簡単には死なせはしねぇよ 

 ・・・たんまり金を落としてもらってから死んでもらう」


 おそらく邪悪な笑みを浮かべたのだろうな・・・

 怒っていたアリシアが引いてる・・・


 そして捨て台詞に

「この、守銭奴!」と、言い残し購買部を去って行った



 私が購買部運営委員会に入ったのは、ある意味偶然だった


 本来、100年単位で時を生きるエルフ族は、財産に関心に薄い種族である、そのため歴代購買部運営委員のなかでもエルフはアリシアが初めてだったらしい。


 エルフ族は生きるために最低限のお金は必要とするが、それ以上を求める事が無い、さらに殆ど自給自足である。無論、例外的な者は存在するが、ごく一部の愚か者と多種族に嵌められて借金地獄を味わっている馬鹿者だけだ・・・


 さらに、アリシアのように高貴な家柄のエルフは購買部の運営に関心を持つ事自体が珍しい。

 それは、購買部などという低俗な場所に行くと品性が下がる、という変なジンクスがエルフにはあるからだ。

 無論、そんなことを気にしないエルフの方が多い。しかし、高貴な家柄になればなるほど意識が高まって行く傾向にある

 故に、必要な道具や武具は仲間に買っきてもらったり、街で買いそろえたりする者も居る。


(私だって、最初は嫌だったのだ)


 何故か私はあの日に思いを馳せた



 オーガという魔物は、知能が低い割に力だけ馬鹿に強い魔物だ。

 体長は、八大種族の中で最も大柄である獣人族を遥かに超える平均3メートル弱、魔物分類では巨人族に属する魔物である

 力の強い巨人族の中にあって、彼らオークは最下層に属する種族であるが、駆け出しの新入生にとっては、初めての目前に立ちはだかる巨大な壁である。


 事実、私もその一人である


『入学後数ヶ月はオーガを見かけても手を出すな』


 彼女達、剣士学科の担任・マリエル先生の言葉である

 オーガの力は強く、駆け出しの新入生では太刀打ち出来ない、無駄な怪我人を出さないための先生の配慮だったのだろう


 しかし入学後、私は自分の実力に少なからず過信していた

 エルフの基礎能力は極めて高い

 経験不足の子供でも、その辺に居る低級の魔物に遅れをとる事はないほどに身体能力は多種族に比べ極めて高いのだ


 その中にあって天才と称されたのがアリシアであった

 エルフでも名門の家に生まれた彼女には、恵まれた才能と、自分の力を制御出来る精神力を併せ持つ才女である

 今まで魔物に一度足りとて負けた事は無いのだ

 たとえオーガであっても負ける筈など無い

 

 だからあの甘い囁きに耳を傾けてしまった、自分が情けない・・・


「オーガを倒しに行こうぜ」


 私が自分の机で帰宅の準備をしていると声が掛かった

 声の主は、剣士学科の男子の同級生・レオンであった

 レオンは人間族で、決して恵まれた体格も才能も持っていないが、その決断力とリーダーシップで剣士学科ではクラスのまとめ役である。そんな彼が、そんな誘いをして来たので多少、面食らった。


 彼の後ろにはもう一人男子生徒が居る、


「やめとけ、名家のお嬢様なんかがオーガに遭っても、腰を抜かして足手まといなるだけだ」


 後ろの大柄の男は、明らかに私を馬鹿にした態度を取った


(・・・ドワーフ)


 彼女自身の意識は低いが、ドワーフは長年エルフと争って来た種族だ

 別に何とも思っていな筈でも、不快感を感じ身構えてしまう・・・


(しかし、この男は・・・)


 初対面なのに名乗らない、野蛮な雰囲気を醸し出し無駄に偉そうな態度も癪に障る、私はこういう奴が大嫌いだ。

 この男がドワーフでなくても軽蔑しただろう。


「貴女はどちら様ですか?」


 かなり声がトゲトゲしくなったが気にしない、好かれたいとも思わない

 男は舌打ちし、私の机に手をついた

 後で消毒しよう・・・


「俺の名前はジェローム、戦士学科二年の先輩だ」


 ジェロームという男は『先輩』という単語を特に強調して言った

 だからどうした、と突っ込みたい


「お前ら一年の修行に付き合ってやると言っているんだ、ありがたく思え」


 図体だけでなく態度もでかいようだ

 しかも、何故、頼んでもないことでコイツに感謝しなくてはならないのだろう・・・

 不機嫌さを隠さず帰る準備を再会する


「私には用事がありますので・・・」

「ま、まって、アリシアちゃん!」


 言い終わる前にレオンに腕を掴まれた

 邪魔だ


「頼むから話を聞いてくれ、僕からの一生のお願い」


 レオンの顔を見ると、酷く焦燥しており、ただ事ではない事は簡単に想像出来た

 後ろではジェロームが不機嫌さを隠していない


 大した事ではないがレオンには貸しがある

 エルフ以外の学生と極力関わり合おうとしていなかった彼女にとって、レオンは気が許せる希有な他種族の少年であった

 同学年の他種族とは彼を通じて交流を持っていたため、彼には多大な借りがある


「・・・わかった、話だけは聞いてやる」


 これが間違いの始まりであった

 短編からオーク→オーガに変わっています


・・・はい、そうです、作者の誤打です・・・


6月19日 誤字修正

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