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90.銀の指輪は鎖のように

 皇宮に呼び出されてから半月過ぎて。でも、教会からの呼び出しとか、そういうの全然ないまま。

 ほんとに、なんにもないまま半月が過ぎちゃった。


 士官学校もお休み――っていうか、お休みじゃなくても、もう在学資格がないんだけど。

 忙しかった士官学校の生活も、なにもなくなっちゃうとやっぱり懐かしい……かな。


 どんなに戻りたいって思っても、もう戻れないのはわかってる。


 学生も教官も半分以上がいなくなって。だから、学校全部がお休みなんだって。

 もし、士官学校の在学資格があっても、今の生活と変わらない感じだったのかもって、わかってるんだけど。それでも、なんだか物足りない。


 そんな半月。


 ジレのお屋敷は、士官学校の寮よりずっと居心地がよくて。

 でも、なんていうか。落ち着かない空間にかわっちゃってた。


 私のって決められた部屋は、寮の六人部屋と同じくらいの広さなのに、今は一人ぼっちなんだもん。


 寮にいた頃、クルセさんとかチギリさんがいて、毎日なんだか賑やかで。一人でいるのって、ほんとに寂しくて。だからっていったらおかしいかもしれないけど、なんとなく。

 ほんとになんとなく、鏡を見ちゃう。



 父さんからもらったグレーの右目とは全然違う、ルビーみたいに赤い左眼。

 その瞳から少し下。

 ほっぺには、うっすらとぎざぎざの傷が残ってる。


 お屋敷に帰ってきた私の顔を見て


「治してやる。痕なんか残さずな」


 なんて、重々しく宣言したジゼリオさんの治療の成果なんだと思うけど。もう、傷跡はほとんど見えない。

 ……見えないんだけど、ジゼリオさんはまだ不満みたい。


 夜な夜な、部屋付きのピエリさんとセレさんにお薬塗られたりもみもみされたり。


 大袈裟すぎる気がするんだけど。

 どうなんだろ?

 おでこの左側にある、くっきりはっきりの傷跡に比べたら、なんでもないと思うんだけどなあ……。


 なんて、鏡の中の自分とにらめっこしてたら


「トレ様。また、鏡を見ていらしたんですか?」

「あ、えと。なんとなく……」


 いつの間にか――ほんとに、音もなく。気づかない内に部屋に入ってきてたピエリさんが、鏡の中で笑ってた。

 なんか、すごく嬉しそう。


 こういう風に笑ってる時って、私にはあんまり嬉しくない事が起こってる気がするんだけど。

 うーん。


「新しい眼帯が出来ましたよ。セレのお手製です」

「あ、はぁ……」


 手に持ってるのは確かに眼帯。まぁ、眼帯ではあると思うんだけど、ね。

 なんか、立体的になってませんかね?


 受け取ろうと思って手を伸ばしたら


「お付けいたしますから」

「自分で出来ます」

「駄目ですよ、トレ様。私達のたのし……お仕事を奪わないでください」


 楽しみとか言おうとしてなかった?


 いや。

 いいけどさ。

 それくらいで、楽しくなってくれるなら、いくらでも協力します。



 って、思ってたんだけどね。

 うん。

 ちょっと後悔した。


 黒いレースで飾られた覆いに、銀糸でちょっぴり立体的に見えるように刺繍されたバラ。

 鼻が低かったり、ちょっぴりめりはりの足りない私の顔の左半分に、おっきな花が咲いてて。そのせいで、私の顔立ちの地味さが引き立ちまくってる気がするんだけど……。


「お似合いです!」

「そ、そうですか?」


 嘘つけ!

 半笑いじゃん!


「お気に召しませんでしたか?」

「……いえ。気に入りました。すごく」


 伏し目がちのセレさんが鏡の中に入ってきた。


 もう、どうにでもなーぁれ!




 鏡の中でどんどん余所行きの、別人みたいに変えられてく私。

 相変わらず、ピエリさんとセレさんの手際というか、腕前がすっごいの。


「少し赤味を入れておきますね」

「今日はこちらのブラウスを……」


 黙って座ってただけなのに、ぴっかぴかになっちゃう。


 でも。

 なんだろう。

 こういうの、なんかおかしい気がする。


「あの、お二人はどうしてこうまでしてくれるんですか?」

「お仕事だから、ではいけませんか?」

「いえ、そういう話じゃなくて……」


 私が話しかけても止まらないで動き続けてる二人の手。

 帝都に来たばっかりの頃も、二人に着替えを手伝ってもらったりとか、ちょっと抵抗があったんだけど。

 でも、今、私が感じてる違和感と、その頃の気持ちは全然違う。


 だって


「私はもう、お二人につかえてもらう様な身分じゃないから……」


 皇宮で渡された書類には、大僧正の花押が入ってて。投げ渡されたり、雑に扱われてたけど、それは正式な書類で。

 だから、私の身分は“授かり物”がある人と同じって。そういう決まりなんだって、コゼトさんも言ってたのに。


 着替えとか、自分でしなくちゃいけないんじゃないのかな?

 少なくとも、私にはもう。そうしてもらう理由がないんだもん。


「デアルタ様が認めて、お館様が後見をお引き受けになった。それだけで、仕えるに値する。という説明では不服ですか?」

「不服とか、そういうのとはちょっと違うんですけど」


 自分でもうまく言葉に出来なくて。

 だから、口だけがもごもごって動いて。でも、そうしてたら、鏡の中のピエリさんがにーって笑った。


「では。トレ様を磨き上げて、美しく仕立てて。その姿を誰かに見せるのが、誇らしくてたまらないから。で、いかがです?」

「はぇ?」


 なんじゃそりゃ。


 ぴかぴかにしてもらってるのは確かにそうだけど。そんな理由って、あんまりなんじゃ……。

 あんまりにもあんまりな理由だったせいで、鏡の中の私が口をぱくぱくしちゃってる。


 たぶん、現実の私も。


 鏡の中の私の耳にピエリさんの口が近づいてきて。それで


「……それに、私もセレも、トレ様の事が好きなのです。妹みたいに」


 好きっていう言葉と耳にかかるピエリさんの湿った息のせいで、びくうってなっちゃった。

 なにこれ?

 なんなのさ、これ。



 ぴかぴかに磨き上げてもらって、もう完全に別人になっちゃった自分の姿を確認する。

 下品にならない程度にレースで飾られた黒いドレス。胸元のところだけ白いブラウスが覗いてるのが、なんかこう。

 ボリューム不足を加速してる気がするけど、そこは我慢。


 右腕に縫いとめられた、くすんだ赤の腕章は“授かり物”があるよっていう印。

 喪章がこれにかわっただけっていう感じだから、これは違和感ないかな。


 あと、顔の左半分にぱっと咲いた、銀色のおっきなバラが地味顔にまぶしい。



 士官学校の決まりでぴちーって切りそろえられてて、結い上げられてない髪だけがいつもの私。

 それ以外は完全に別人。


「こんなにおめかししたんですから、お客様、ですよね?」

「はい」


 少し離れたところから、仕上がり具合を確認するピエリさんの返事はそこで途切れちゃって


「皇兄殿下がいらっしゃいます」


 言葉を足したセレさんが、ピエリさんに「ぐっ!」って感じで手を突き出してるのが見えた。

 ……野外演習のちょっと前、お屋敷に帰って来たときも思ったんだけど。この二人、私がお屋敷に来た頃と雰囲気違い過ぎ。


 今の二人の方が気楽っていえば気楽だけど。でも、これでいいのかなって疑問もなくはないです。

 はい。



 それにしても……


「ハセンさん、帰ってきたんですね」

「西の国境はようやく落ち着いたようです」

「そう、ですか……」


 あの、雪の日。

 西の国境――元々は、タリア連邦の土地だった辺りらしいんだけど。

 そんな、西の彼方に現れたオーシニアの軍隊を帝都に近づけないために出動した近衛軍。


 皇帝陛下が死んじゃっても、国境で戦い続けてるって新聞で読んだけど。どんな事が起こってるのか、私も。きっと、帝都に住んでるほとんどの人も、皆知らない。

 見たくないくらいひどい状態だったんじゃないかな。

 そうじゃなかったら、師団長なんて偉い人が、そんな長い期間、現場に出ずっぱりになんかなったりしないもん。


 そんなひどいところから、一ヶ月半以上経ってようやく帰ってくるのに、真っ先にジレのお屋敷に来るなんて……。

 他に行かなきゃいけないとこがあるんじゃないかな。


「三人共、そろそろいいか?」

「「「はーい!」」」


 余計なお世話かもしれないけど、頭の中をギヘテさんの泣き顔がよぎって。それをカレカの声がぺいぺいってかき消して。

 私とピエリさんとセレさんの声がぴたって同じタイミングになっちゃって。それがなんだかおかしくて。

 けたけた笑いながら部屋を出たら、コゼトさんが咳払いっていうところで、ようやく現実に戻った。




 南部のお屋敷と比べると、ジレのお屋敷は古くて。きちんと手入れしてても、それを隠せてないとことかたくさんあって。


 そんなお屋敷だから、ちょっとよれよれの格好してても大丈夫そう……。なんて思ってたけど、ハセンさんもバナさんも、そんなレベルじゃなく汚れてた。

 汚れてるだけじゃなく、雰囲気も荒んでる感じ。


 皇帝陛下――弟が死んじゃって、平静でいる方がおかしいっていうのはわかるんだけど。それでも、お客様として大歓迎したい雰囲気じゃない。


 客間に入った私は、ソファーにどかって座ったハセンさんにきろっとにらまれた。


「めかしこんだな」


 そういって私を見る目は、真っ赤に充血してて。その眼が怖くて、私の首は亀みたいにきゅーって縮んじゃう。


「そう脅しつけるな」

「脅してなどいない……んだが。いや、その、すまん」


 すぐ後ろに立ってたバナさん――かざさいにやられた腕はまだ治ってないみたいで、添え木をしたまま。

 そんな痛々しい感じのバナさんに言われて、ハセンさんはぼりぼりって頭をかいた。


 ぱらぱらってふけが落ちる。


「まずは風呂に入れ。と、言いたいところだが、急ぎで伝えておきたくてな」

「話を聞こう」


 眼で促されて、ジゼリオさんの隣に座って。座ったのと同時に、カレカがお茶を煎れてくれた。

 香りを楽しむなんて時間もおかないで、そのお茶で唇を湿らせて、今まであった事を話す。



 あの雪の日の事。

 友達の事。

 帝都に帰ってきて、皇宮に呼ばれて。そこで聞いてきた色々な事。


 前世がとか、神様がっていう話はぼやかしたけど。でも、話せる全部をハセンさんに話した。


「……教会がそこまで、か」

「あぁ。だから、お前を呼んだ」


 ぴんと張りつめたみたいな沈黙。

 その中に、ハセンさんがポツリとこぼした言葉が置かれて、ジゼリオさんがそれに答える。

 そんなやりとり。


 でも、話の中心は、やっぱり私なんだって思う。


 だって、二人の視線が最後には私に集まってたから。


「……トレ。近衛師団に入る気はないか?」

「え?」


 教会が発行した書類があるから、士官学校にはもう行けない。

 だから、軍隊で暮らす未来なんて、もうないんだって思ってたのに。ハセンさんの言葉は、そういうのを全部否定してる。


「近衛には充員補充の優先権と、人員選抜の自由が認められている」

「教会に縛られるより、近衛にいた方が守りや……」


 膝の上で腕を組んだハセンさんの言葉を追いかけたバナさんの声。


「ジレの家が。私達が、トレ様を守ります!」


 でも、その声をさえぎるみたいに、私とジゼリオさんが座ってるソファのすぐ後ろから、セレさんが声を上げた。


「セレ、さん?」


 どっちかって言えば、訥々と。あまり声をはらないで話すセレさん。

 なのに、客間どころか、廊下にも届きそうなおっきな声でそう言ってくれたセレさん。

 いつもなら、客間で大声なんて絶対許してくれないはずのコゼトさんも、口を真一文字に引き結んだまま。


「どちらにするかはお前が決めろ。ジレの家とおれが、お前を守る」



 と、ハセンさんに言われてから二日。

 コゼトさんにお願いして、ギヘテさんとホノマくんに連絡を取っもらった。


 帝都の南側――雪とか、オーシニアの人が暴れたりとか。そういう被害が少なかった地域のカフェテラス。


 他の人はほとんどいなくて。メニューには線で消してあるところがいっぱい。


 西部の穀倉地帯を挟んで軍隊同士の睨みあいが続いてるらしくて。

 その上、雪が降って秋の小麦が収穫出来なくて。それをいくつかの商会が独占して、価格を釣り上げてるんだって。


 私の話が終わって、ようやくメニューを見てぽしょっとホノマくんがつぶやいた言葉に、ギヘテさんはふいってため息をついた。


「それで、あんたはどうしたいの?」

「ハセンさんが言ってくれたのも、お屋敷の皆の気持ちも嬉しいんですけど。でも、南部に帰ろうかなって……」

「どうしてって、きいてもいいか?」


 理由はいくつかあったんだけど。

 でも、全部、逃げ出したい気持ちのいい訳みたいで、格好悪くて、あの時。あの場所じゃ、話せなかった。

 でも、二人には、私の弱いとこ、たくさん見られちゃってるし。隠さなくてもいいのかなって思って。


「銃とか機械とか。寒くても動くのを準備できたら、って。もし、あの時、銃が使えたら、チギリさんの腕だって……」


 言い訳と弱音をぐちゃぐちゃに混ぜて。こねて固めたみたいな、格好悪い言葉が、どろどろって口からこぼれてく。

 でも、そんな私の言葉を、ギヘテさんもホノマくんも、なにも言わないで聞いてくれた。


「……チギリには、会えたの?」

「いえ、まだ……」


 帝都に帰ってきて、退院したってきいて。それで、お家にお見舞いに行ったんだけど、会えなかった。


 家令さんに断られちゃった。


 腕を切断したっていう怪我の重さももちろんあるって思うけど。

 でも、家令さんが見てたのは、私の腕につけられた鈍い赤の腕章――“授かり物”があるっていう印だった気がする。


 この印が、友達と私の距離感も変えちゃうんだって。それが悲しくて、話しながら、腕章を握りしめるしかなくなっちゃった。


「ハーバの家は、どうするの?」

「帝都の拠点は規模を小さくするらしい」

「あんた自身は?」


 矢継ぎ早に問いかけられたホノマくんは、すと私を見て、それから


「おれは帝都に残ろうと思ってる。士官になる道がどうなるのかわからないけど、家に力をつければ出来る事が変わるかもしれないから」

「ホノマくんは南部に帰らないんですか?」


 南部に帰ればコービデさんもいるのに。

 クリーネ王国との商売は、ホノマくんが今言ってた、軍隊にいるよりハーバの家を大きくしてくれるんじゃないかな。


 なんて、ほんとは一人で南部に帰るのが怖いだけなのにね。


 でも、そうまでして軍隊に残る理由って、なんなのかな?


「貴族にならないと、好きな奴と結婚できなくなったから、か?」

「あー、いや……」

「難しい人なんですか?」

「まぁ、確かに難しい相手ではあるかもね」


 じっと私を見ながら、ギヘテさんはふっと溜息をついた。

 背も高いし、顔立ちだって、ぴって筋が通ってて格好いいし。家もお金持ち。

 勉強だって出来る。


 優良物件のホノマくんなのに、そんなに苦労しなくちゃいけない相手って誰なんだろう?


「あの。私も力になります!」

「……まぁ、あんたがその気になれば、すぐにでも解決する話なんだけどね」

「そうなんですか?」

「いや、もういいから!」


 耳まで真っ赤になったホノマくんが、わーって言って、その話はおしまい。

 お茶を飲んで、会わなかった間の色々な――ほんとに他愛ない話をして。そんな時間は、護衛さんがギヘテを迎えに来るまで続いた。


「南部行きの件、私からも話してみるよ」

「あ、はい。でも……」


 返事はしてみたけど、もしハセンさんに話をするつもりなら無理してほしくないなって。

 友達にあんな風に泣いてほしくなんかないもん。


「そんな顔しない。大丈夫だから」

「……わ、かり、ました」


 迎えに来た白いぴかぴかの馬車を、ホノマくんと二人で見送る。

 雲でふたをされた帝都はまだ暗くて、通りを走る馬車の姿はちょっぴり寂しい。


「トレ、南部に帰るって、もう決めたのか?」

「……その、お屋敷の人にはまだ言ってないんですけど」

「そっか」


 なにか言いたそうなのに、ホノマくんはそこで話すのをやめちゃった。

 野外演習の準備の時も、こういう変な感じになった気がする。

 前生は男の子だったけど、こういうのいまいちわかんないんだよなあ。


 あーとかうーとかよくわからない唸り声が二回して。それでようやくホノマくんは私を見た。


「南部でさ。無事に帰ってくるようにって、おまじないなんだって。指輪を渡すっての、あったろ?」

「あぁ、懐かしいですね」


 クリーネ王国にカレカが行ってた頃の話だよね。

 行かないでってべそべそ泣いて、そしたらカレカがおまじないの話と一緒に準備してくれたんだっけ……。


「ああいうおまじないなんだと思ってさ。これ、受け取ってくれないか?」


 ポッケをごそごそして、ホノマくんが取り出したのは銀で出来た指輪だった。


 色石がはまってない、学校でおまじないが流行った頃と同じ、シンプルなデザイン。

 でも、よく見ると、細い地金に花が掘り抜かれてる。


 すっととられた右手。


 手袋がそっと抜き取られて、冷たい空気が手の甲にふれて。

 でも、掌に感じるホノマの手はじんじん熱くて。薬指にそっとはめられた指輪に、その熱がうつって。


 指とつながったみたいにその熱が心臓まで上ってきて。そのせいで、どんどん強くなる鼓動。

 胸がつきつきって痛くなっちゃう。


 それから。


 ホノマくんの体温が近くなって、おでこに暖かい物が触れて。

 それから、体温が少し遠くなって。


「え!?あの……」


 声も出ない二秒。

 なにも言い出せないでいたら、ぐるぐるとお腹をゆすぶるエンジン音が聞こえてきた。

 その音を合図にするみたいに、ぱってホノマくんの身体が離れてく。


「じゃあ、また」

「は、はい。また……」


 店先にジレの家の車が横付けされた。

 私から距離をとったホノマくんは、少しずつ、後ろ向きに通りを歩いて。

 十メートルくらい離れたら、ばって走り出した。


「ちび、どうした?」

「カレカ、私……」


 どうしちゃったんだろう?


 どきどきが止まらなくて、カレカの手をぎゅっと握る。

 皮手袋の冷たさが、手の熱を冷まして。

 けど。

 でも、ほっぺの熱は冷めてかない。


「変な奴」

「うっさいです」


 なんであんなことしたのかわかんないけど。

 でも、ホノマくんはもしかしたら……。


 いや。

 でも、そんなのない。


 だって、男の子はもっとこう。

 チギリさんとかみたいに、ぼんきゅの人が好きに決まってるもん。


 前世の私だって、そうだったから。



 そう、思ってたのに、ホノマくんにちゅーされたおでこが気になって、その日はなんだか眠れなかった。

 へんなの。

今回は、ちょっぴり甘やかされるエピソードをお届けしました。


帝都にいたのって、時間的には一年くらいで。主人公はその間、学校に行ってただけだったんだよなあ……。

っていう事実に、今更気がつきました。


それなのに、帝都編の文字数は膨大。

構成力が問われた気がしたりしなかったり。



次回更新は2014/07/18(金)7時頃、南部に出発のエピソードを予定しています。


更新についてなにか変更があれば、活動報告にて。

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