55.無理なんか全然してない
帝都に来てそろそろ一ヶ月半。
春になっても雪で埋め尽くされてる南部と違って、冬の間もほとんど雪が降らなかった。
降ってもくるぶしより上まで積もればいいところ。
南部では夕方に雪が降り始めて、夜が明けたらドアが開かないくらい積もってる日も少なくなくて。
そんな日は雪かきとか雪おろしとか。とにかく、雪の相手をするのが当たり前だったから、なんだか落ち着かない。
真っ白な景色。
それだけで目が覚めるくらい冷たい空気。
そういう、小さい頃から当たり前だった物がなくなるって、こんなに寂しいんだ。
窓の外に見えるお屋敷の庭は、ぴちっときれいに整ってて。その木の幾つかは、もう蕾をつけてる。
もうすぐやってくる春。
その時、綺麗な花を咲かせるため。
でも、南部生まれの私には、帝都の春は早すぎる気がするんだ。
だって、なにをやってもうまくいかないんだもん。
左足を前に。
右足を引き寄せて、今度は右足を左足の右に。
次の拍で左足を右足にそろえる。
ぱんぱんぱんって響く手拍子にあわせて足を動かす。
前に向かって散歩進んだ身体を次の三拍で今度は後ろに。さっきと同じステップを逆足で踏んでいくと、元の位置に。
足元だけじゃなく、上半身も構えっていうのかなんなのか――ホールドっていうらしいけど。
指先まできちんと意識して、姿勢を作って。それだけでもちょっと疲れちゃうのに、ステップを踏むのって、すごく難しい。
「トレ様、左腕が下がっています」
少しでもホールドが崩れたりするとぱちんって叩かれて。中断したところからやり直し。
途中からとか意味わかんない!
って思っても、文句言ったらぱちんだから、言わない。
我慢。
日がな一日。もう目いっぱいまで詰め込まれた予定。
紙に書いた予定表なんかないけど、ぎちぎちのみちみち。書き切れないくらい詰まってるはずで。
それでも、そういう生活にも少しずつ慣れてきた。
……かな?
慣れたって言っても、ぎーって歯を食いしばって。
もう、ぎりぎりぎーって歯ぎしりになっちゃうくらい、ぎゅうぎゅうに食いしばって頑張ればこなせるっていうくらいなんだけど。
でも、ご飯の時も怒られなくなってきたし、普段の生活でも、勉強の時間もほとんど叩かれなくなった。
なったんだけど……。
「背筋が曲がっていますよ」
「った!」
一週間くらい前から始まった、このダンスの練習だけは全然うまくいかないんだよね。
運動するのは嫌いじゃないけど、決まりきった動きをゆっくり繰り返すのってなんか大変。
九十分間、みっちりステップを踏まされると、もう一歩も動きたくなくなっちゃう。
というか、立ってるのも億劫な気持ちになっちゃって。
それなのに、コゼトさんのお説教はまだ続いてる。
「ステップの踏み始めはここです。トレ様が今いる位置からどれくらい離れてるかわかりますか?」
「八歩くらい、でしょうか?」
「そうですね。先ほどのステップは、正しく踏めば元の位置に戻るものです」
そんなのわかってるよ。
同じ歩幅できちんと踏んだら、同じステップを前後逆に踏みなおしてるだけだもん。
でも、ただ走ってたって利き足側にぶれちゃうんだから、何回も繰り返したらずれてくなんて当たり前じゃんか!
……って思っても、言わないけど。
「それでは、今日は終わりにしましょう。明日も基本のステップを練習します」
「はい。ありがとうございました」
心の中で思いっきりぶちぶちぐちぐち言いながら、口からはありがとうっていうの。前世の部活とかと似てる。
ぎちぎちの酷いメニュー組んできて。それをこなせないと説教するっていう、嫌な先輩。
やらされたメンバー皆で、先輩がいなくなったらぶーぶー言って。そんな愚痴が先輩の耳に入っちゃったりして……。
ふわっと思い出すだけで、名前とか全然だけど。でも、なんだかそういうのが懐かしい。
せめて、愚痴を聞いてくれる人がいたら気持ちだって楽なのにな。
汗でおでこにべったりへばりついた髪を軽く直す。
ダンスって優雅に見えるけど、実際はものすごい負荷がかかるんだよね。
普段、あんまり動かさない筋肉を使うから、無駄に力が入っちゃうっていうのが一番大きいけど。
でも、それ以上に眼帯で隠した左目がね。問題なんだ。
自分ではきちんとしてると思ってても、ゆるんじゃったりしてる時ってやっぱりあって。
だけど、それが本当に緩んでるのかわかるのって、客観的な眼だけ。
見えてれば、もっとちゃんとわかって、意識を向けられるんだけど。見えてない左側がどうしてもおろそかになっちゃう。
パートナーを置いての練習じゃないから足を踏むとかはないけど。
それでも、見えないところで気持ちが緩んで、そこをぱちんってやられるとすっごく痛くて。
ひっぱたかれるのやだなって、変な力が入っちゃう。
そのせいで、ダンスの練習が終わるとものすごい疲労感がのしかかってくる。
だからって、床にへたり込んだりすると
「淑女がそのようにだらしない格好をしてはなりません!」
「ったあ!」
なんて、ばっちばち叩かれちゃう。
というか、初日はもう、背中に痣が出るくらい叩かれちゃった。
一週間くらい経った今日は、いつかぶん殴ってやるからなって心に決めて。
ぎしぎしなる腰とがくがくする膝に喝を入れて、立ち姿を整えられるくらいにはなったみたい。
偉いぞ私!
姿勢が悪いだなんだって言われ続けて。びしばし叩かれてきた成果なのかな。
疲れてぼろぼろのはずなのに、しゅっと背中が伸びて。
その姿勢から、ダンスをする時と同じくらい、指先まで意識して、精一杯綺麗なお辞儀。
つまんない意地だけど。顔を上げたら、コゼトさんが満足そうに笑ってた。
あれ?
そういえば、笑ったコゼトさん見たのってはじめてかも。
南部のお屋敷に比べて、帝都にあるこのお屋敷は小さい――小さいっていっても、レンカ村の風車広場より広いんだけど。
でも、お屋敷に来るまでの間に見た、よそのお屋敷に比べるとこじんまりしてる。
ただ小さいだけじゃなく、元々は鮮やかな赤い煉瓦で作られてたんだろうなって思うしかない。でも、今はくすんだ茶色の外壁。
金属製の。
多分、青銅製の門と柵も緑青色になってて、なんていうかこう。
よく言えば趣のある。
ひかえめに言ってもぼろっちい印象。
そんな古めかしいお屋敷なのに、お風呂だけは豪華で綺麗なんだよね。
十人くらい入っても足を延ばしてくつろげる広さの浴槽。
それから、広い洗い場。
脱衣所も広々で、南部のお屋敷と同じくらいの規模。
ふわっと香る桃の香りのバスオイル。
こんなお風呂を独り占め出来ちゃうなんて!
って思ったのは、帝都に来て最初の夜だけ。
やわやわとした肌触りのスポンジとふわっふわの泡が肌を撫でてく。
一人でお風呂に入ってたら、タオルとかヘチマとか。ちょっとごわっとした感じのでごしごし洗いたいんだけど、やわやわ。
立ったまま身体を洗ってもらうのって、なんだか落ち着かない。
申し訳ないっていうのがほとんどなんだけど、こう。なんだろう。
私がはだかんぼなのに、身体を洗ってくれるセレさんは薄いガーゼで出来た服を着てて。そういうのってどうかなって思うんですよ!
お屋敷の中で私の面倒を見てくれてるのは、ピエリさんとセレさんの二人。
背が高くてすらっとしたピエリさんとは対照的に、セレさんの背丈は小さくて、私よりちょっぴり小さいくらい。
ちょっと子供っぽいなって思っちゃうおっきな眼と、垂れ気味の眉の女の子なんだけど。
そんな印象とは裏腹に、おっぱいは私の二倍くらいある。
そんなおっぱいがね。
白いガーゼで出来た服がぬれると、先っぽのぽっちのとことかが透けてきて、なんかえっちなんですよ!
もういっそ、はだかんぼうで入ってくれた方がどきどきしなくてすむんじゃないかってくらい。
……そんな風に思う私って、けっこう気持ち悪い?
知ってた。
一緒にお風呂をするようになったばっかりの頃は
「手をあげてください」
「足を少しひらいてください」
「少し下を向いて」
なんて声をかけてもらってたけど、二週間くらいでお互い慣れてきて、スポンジがここに来たらこうしなくちゃとか。
ここを洗ってもらう時はこうとか。
こういうの、意気が合うっていうのかよくわかんないけど。でも、お互いに声をかける必要もなくなっちゃった。
だから、お風呂の時ってすっごい静か。
静かだからこそ落ち着かないんだけど、今日は違った。
「トレ様、少しお疲れではないですか?」
膝をついた姿勢で、足を洗ってくれてたセレさんが急にそんなこと言ってきたからちょっとびっくりしちゃった。
うつむいてて、どんな表情なのかはよくわかんない。
けど、こんな風に話しかけられたの、初めてでちょっとびっくり。
「少しだけ。ダンスなんてはじめてですから、緊張してるのかもしれません」
「そうですか」
右足を洗って今度は左足に。
お尻の下辺りから股関節、それから下に向かってやわやわしょわしょわ。
規則正しく動くセレさんの手は、話をしててもほとんど変わらないペース。
「トレ様は、少し力みすぎているのかもしれません」
「そう、でしょうか?」
「手首やふくらはぎ。それから背中もですが、少し強張っているように思います」
スポンジも泡もふわふわで、触ってるか触ってないかわからないくらいの力加減なのに、どうしてわかるんだろ?
「こちらでの暮らしは如何ですか」
「はじめてのことだらけで、大変ですけど。
でも、皆さん、私が困らない様にって頑張ってくださってると思いますし。
だから、それに応えないといけないなって」
建前なんかじゃなく、そう思うんだ。
南部で暮らした疎開組の子達は、小さい頃からこういうのを当たり前みたいに習ってて。私は十年以上遅れてそこに入って行かなくちゃいけなくて。
でも、士官学校に入るまでの時間は三ヶ月しかなくて。
だから、ぎちぎちの詰め込みになるのだってしょうがないんじゃないかなって。
ダンスの練習は大変で、あちこちぎしぎししてるけど。でも、使った筋肉は少しずつ鍛えられてくし。
辛いのは今だけだもん。
「トレ様、私達に言いたい事があればご遠慮なさらずにおっしゃってください」
「ありがとうございます。でも、本当に今のままで充分です」
誰かとお話したいとか、ご飯の味付けが薄いとか。お腹にしまってる気持ちってない訳じゃない。
そんな風に言ってくれたセレさんの気持ちも嬉しいけど。でも、お屋敷の中で私はやっぱりよそ者で。
そんな私がきゃんきゃん言うなんてやっぱりおかしい気がする。
「……そう、ですか」
答えた私をセレさんはじっと見て。それから、少しだけ口を動かしたけど。でも、なにも言わなかった。
「泡を落としておぐしを洗いましょう」
「はい」
その後はやっぱりお風呂は静かで、セレさんはそれ以上なにも言わなかった。
お風呂が終わったらご飯。
きちんと食べられるようになった――コゼトさんにぶたれないし、いっつも食堂の入口に立ってるカレカも
「姿勢よくなったな、ちび」
なんてほめてくれたし、ちゃんとできてると思う。
でも、ご飯食べてても気が抜けないから、味はよくわかんないんだけどね。
いつもと違うとこがあったとしたら、ジゼリオさんがいなかったくらい。
別におしゃべりする訳じゃないけど、一人の食卓ってすごく寂しい。
そんな寂しいご飯が終わったら、紋章学――家紋からその家の成り立ちとか、家同士のつながりを推察するための知識をそう呼ぶらしいんだけど。
紋章学の勉強が終わったら、部屋に戻る。
日中は色々な予定がくるくる入れ替わるけど、夜はいつも同じ。
部屋に戻って、ピエリさんにマッサージをしてもらうのが一日をおしまいにする日課なんだけど
「今日は少し念入りにいたします」
「あ、はい。お願いします」
そう厳かに宣言されて。それはなんだかちょっぴり怖くて
「あの、念入りにって、なんなんでしょう?」
怖々きいてみたら
「セレからお疲れと聞き及びました」
って。
セレさんもそうだけど、ピエリさんも、表情をほとんど動かさないからちょっと怖いんだよ。
お風呂が終わった後、全身つるつるに――顔とかうなじとか。あと、脇の下とかはまぁ、いいんだけど。
でも、せっかく生えてきたお股の方は、なんかもったいない気がしてるんだけど、それはさておき。
ピエリさんのマッサージは左手の指先から始まる。
体温より少し冷たいくらいの香油を手全体に塗ってもらって、なめらかになったところでぎゅ、ぎゅって揉みほぐしてもらう。
香油を使ったマッサージはすっごく気持ちいいんだ。
でも、気持ちがいいだけじゃなくて、それ以上に手がすべすべになってくのが実感できて、ちょっと嬉しい。
ペンだことか鋤とか鍬を使ったまめとか。疎開組の子達と比べてがさがさでごつごつだった私の手。
そんな女の子っぽくなかった私の手が、マッサージを受けはじめてから、なんだかぷくぷくしてきてる。
南部よりお肉多いし、太ったとかかも。
ダンスの練習以外は座学だったし、太る要素は……。でも、そんなはず……なんて余計な事考えてたら
「トレ様、無理していませんか?」
って、ピエリさんにきかれた。
お風呂のセレさんと同じで、ピエリさんもほとんどしゃべらない。
それなのに、だもん。
なんだか緊張しちゃう。
セレさんと話をしたとか、そういう感じなのかもだけど。
手を触っただけのピエリさんからそんな事言われるなんて……。
身体に触っただけでそういうのわかっちゃうものなのかな?
「無理は、してないつもりです。慣れればどうってことないと思います」
左手が終わって今度は右手。
話をしててもピエリさんの手元はよどみがなくて、ぎゅむぎゅむってマッサージは続く。
「それに、コゼトさんだって家令のお仕事があるはずなのに、ずーっと私と一緒にいていろんなことを教えてくれますし。
そういうの、無駄にできないですから」
「……そうですか」
指先が終わって、今度は首から顔にかけて。太い血管が通ってるところにそって手が動く。
何度か繰り返してもらうと、身体がポカポカしてきて、少しずつ眠くなっちゃう。
気持ちもふわふわするし、なにがなんだかよくわからなくて
「ピエリさんは、私の面倒見るの大変じゃないですか?」
「トレ様は……」
ピエリさんが答えてくれた気がするんだけど、なんて言ってたのかよくわかんないまま、視界はぼんやりして。
そのまま真っ暗になっちゃった。
起床は規則正しく。
なんて、コゼトさんに言われてるからっていう訳じゃないけど。朝、ピエリさんやセレさんが部屋に来る少し前には眼が覚める。
家事の手伝いがある訳でもないし、暖炉の火を熾す必要もない。
でも、家で暮らしてた通りの時間に起きると、お屋敷の人達はまだほとんど動きだしてないんだ。
だからって、起きだしてがさごそしてると、ピエリさんやセレさんもそうだし。
お部屋の番をするカレカもそう。
私が起きてるせいで、使用人さん達も早起きしなくちゃいけなくなるってカレカに言われてからは、ベッドの中で軽く髪を整えるっていうのがここ一ヶ月の朝の過ごし方。
そのはずだったんだけど
「トレ様、起きてください」
今朝は、ピエリさんに声をかけてもらって、肩を揺らしてもらうまで寝ちゃってた。
髪はぐしゃぐしゃだし、ぱじゃまも胸元まではだけちゃってる。
口の辺りが気持ち悪くて手をやったら、なんかよだれでべとべと!
みっともない!
もう、すっごくみっともないよ!
「あの、いま何時ですか?」
「朝食の時間まではまだ間があります。お支度いたしましょう」
いつもより慌ただしく始まった一日。
「トレ様、お召し物はどちらにいたしましょう?」
「あ、え?」
いつもなら黙々と服を準備してくれるはずのセレさんが、淡い若草色のワンピースとオレンジ色をベースに白をアクセントにしたワンピースを持って選ばせてくれる。
「じゃ、じゃあ、オレンジ色の方、がいいです」
「わかりました。髪留めはお召し物と合わせますね」
「はい、お願いします」
ほんの少し。ほんの少しだけだけど会話が増えた気がする。
どうしてだろ?
「ほら、急ぎませんと。おぐしを整えますから、こちらにいらしてください」
「あ、はい」
会話が増えて、その分慌ただしくなったけど、こういう方がうれしいな。
こうしてほしいああしてほしいって、ちょっぴりわがまま言ったせいなのか身支度は時間がかかって。だから、早足で食堂に向かう。
デアルタさんのお屋敷――ほんとは、このお屋敷もジレの家の物だから、デアルタさんのお屋敷なんだけど。
南部のお屋敷に比べたら短い廊下。
走り抜けちゃえばすぐなのに、もどかしい!
スカートを振り乱さない様にってコゼトさん言ってたから、精一杯の早足。
せかせか足を動かしてたら、焼きたてのパンのにおいがふんわり漂ってきて。食堂の入口辺りについたところで「きゅー」ってお腹の虫が鳴いた。
いつも通り、食堂の入口に立ってたカレカがじーっと見てくるし。私のあとについてきてたピエリさんもセレさんも「ぷっ」って。
お腹空いてたんだからしょうがないでしょ!
そんなふにゃふにゃの空気を背負って食堂に入ると、いつも通りピリッとした空気が漂ってた。
「おはようございます」
挨拶をして、コゼトさんがひいてくれた椅子に座る。
その後は黙々と食事。
今日の朝御飯は少し厚めにカットしたベーコンとふわふわのオムレツ。
パンはクロワッサン。
……なんていうか、ちょっとボリューミーな感じ。
そういう感想とかしゃべりたいけど、食事中にしゃべるのはマナー違反だって言われてる。
左後ろから感じるコゼトさんの気配もあるし、食事の時間って憂鬱だ。
「おい、お前」
そんな沈黙に満ちた食卓に声が響いた。
弟のデアルタさんも大概の威圧感だったけど、お兄さんであるところのジゼリオさんは、デアルタさんに比べて切りつけるみたいな雰囲気がある。
お医者さんだってきいてるし、肺炎になった時は実際にお世話になったけど。でも、もうちょっと話し方とかあると思うけどな。
いいけど。
食堂も食卓も、二人で使うには広い空間だから、大きな声を出したんだと思おう。
ジゼリオさんは私の事着ロットにらんだまま
「今日一日、課業全てを休みにする」
「は、はぁ……」
なんだか厳かに宣言した。
かぎょうが休み?
聞きなれない言葉だし、意味がいまいちよくわかんない。
「トレ様、今日はお勉強もダンスの練習も全てお休みだとおっしゃっているんですよ」
左後ろから、コゼトさんがそう声をかけてくれて、言葉の意味がようやく分かった。
食事中は正面を向いているようにって言われてるけど、コゼトさんの方に身体ごと振り返る。
「本当ですか?」
「左様でございます。トレ様」
こんなことしたら、いつものコゼトさんならばちんってやるのに今日は叩かないみたい。
それどころか、柔らかく笑ってて。
私の中で四角っていうイメージで囲われて、きちんと見た事がなかったコゼトさんは、改めてみるとどっちかと言えば縦長の台形で。
仁王さんみたいなおっかない人っていう印象に反して、ほっそりとした紳士だった。
今回は、ダンスレッスンでひどい目に遭うエピソードをお届けしました。
ほんとは、ステップの事とかホールドの事とかほとんどわからないまま書いてます。
男女のステップを間違ってるかもとか、ちょっと心配です。
もっと色々調べてから書けばよかった気もします。
でも、幼稚園で子供と一緒にお遊戯!
なんていう時もきちんとできない私なので、どちらにしても寸足らずになった気がします。
もっと上手にできるようにしたいなあ。
次回更新は2013/10/31(木)7時頃、今度こそ帝都周遊のエピソードを予定しています。
と、二度目の周遊予告。




