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シズリ −殺人依頼掲示板−

人を殺すことが出来る超能力を持った少女、シズリの話。

自分の力に気付いた彼女は、“殺人依頼掲示板”を作り、我を忘れ殺人に没頭する。



人間の中には、こう言う人もいる。

“超能力があったらいいのになぁ…”


私には超能力があった。

けどそれは皆が決して喜ぶものではない。


私の超能力は、人を殺すためのものだった…―




そこに佇むのは、茶髪の少女。

長い長い髪を、赤いリボンでツインテールにしている。

セーラー服を来ているところを見れば、中学生か高校生くらい。


少女は歩いている男性に目を付ける。

その男性に向かって手を翳す。

少しだけ、体に力を込める。


―不意に男性が倒れた。



「…おしまい…っと。」

少女はポケットからケータイを取り出した。

カチャカチャと弄り、あるサイトへとアクセスした。


[殺人依頼掲示板]

彼女はその掲示板の一つのカキコミに、返信レスを立てる。


“たった今殺してきました。明日確認のほうをお願いします

200X年X月X日 シズリ”―



少女の名前はシズリといった。

勿論殺人を行う上での偽名だが。

普段は某地で高校生をやっている。


そしてその正体は殺人犯。

[殺人依頼掲示板]の管理者でもある彼女は、普通の人間には無い特殊な力を持っていた。


所謂“超能力”というヤツだ。

しかも、それは他者の命を簡単に奪うことが出来る特殊な力―



シズリがそれに気付いたのは、小学校5年生のとき。


彼女は校庭のブランコに座り、目の前の風景を眺めていた。


雀が二、三羽。

シズリの前をちょろちょろしている。

彼女はそれを見ていた。

雀は彼女の目線には気付いていない。


雀を見ながらシズリは思う。

“もしあの雀がいきなり死んだら…”



“もし”は“もし”ではなくなった。

突然雀が一羽倒れた。

他の二羽は驚きどこかヘ飛んでいった。


驚いたのは雀だけではなかった。

シズリは倒れた雀に駆け寄る。


死んでいた。


「…私って、凄くない…?」


それが彼女の人生を変えた。シズリは色々な動物で実験を試みた。

やはり皆死んだ。


何かを殺す恐怖。

何かを殺す快感。

少しずつ、それらに魅了されていく自分。


…そうだ。

まだ試してない生物がいる。


…人間だ―



シズリは夜の街へ向かった。

実験台は沢山いる、この街なら。


彼女はコンビニの前にたかっている、ガラの悪そうな兄ちゃん達に目を止めた。

煙草を吸っている。

駐車場には3台ほどのバイク。

店員が困っているのが見て取れた。


「これってある意味人助け?」

シズリはその兄ちゃんの一人に狙いを定める。

そして体に力を入れる。


その人はアスファルトの地面に倒れ込んだ。


他の兄ちゃん達が驚き、悲鳴を上げた。

すぐに野次馬が集まってくる。

誰かが警察を呼んだ。


「………マジで?」

シズリが一人呟く。


警察に寄れば、死因は心臓麻痺。

シズリは分かった。

これは他者の心臓を止めることが出来る超能力だ。

私は何の証拠も残さず人を殺す術を身につけた。


人を殺した罪悪感。

一線を越えてしまった自分。



その日は眠れなかったシズリ。

ベットの中で彼女は思う。


私は人を殺した。

いけないことをした。


…でも、ちょっとだけ楽しくなかった?


誰にも解らない、完全犯罪的な殺人。

自分だけにしかない能力。


…楽しくない訳がないじゃん。



自分は狂ってしまったのだと彼女は思った。

だか、心の内から流れ出る衝動は止められない。

歯止めが聞かなくなった欲求。


彼女は超能力について自力で研究を重ねた。

力の効果は100%で、顔さえ分かれば誰だって殺せた。


これはかなり使える。

そう思った。


シズリはケータイを使い、[殺人依頼掲示板]を立てた。


“私はシズリ。

証拠無くして人を殺せる力を持っています。

ここに書いてあることはすべて事実です。

遠くにいる標的も写真さえあれば殺せます。

画像をUPして頂ければ殺せます。嘘だと思うなら試してみてください…”―




次の日。

彼女は友人や先生に隠れ、そっとケータイを開く。


昨日立てた掲示板へアクセスする。


既に10件以上もの依頼が来ていた。


彼女はそこに書かれた人間を順々に殺し、仕事完了とその確認のレスを立てた。

そのまま彼女は授業に向かった。



家に帰り、もう一度掲示板にアクセスしてみた。


“ありがとうございます!”

“アイツがいなくなってセーセーしましたよ^^”

“これであの男と会わなくて済みます…”

“あなたのおかげです、シズリさん!”


レスには全て彼女に対する御礼の言葉が書かれていた。


「世の中にはこんなに嫌われてる人間がいんのねぇ…。」

シズリは溜息をついた。



次の日にはさらに多くのカキコミがあった。


口コミやら何やらで、あっというまに広まった掲示板。

“嘘みたいな本当の話”に興味を示す人間の性。

彼女に取っても、掲示板に来る人達に取っても、楽しいことには代わりない。


彼女は着々と依頼をこなした。


「お金取ればいい商売になりそう。」

とも思ったが、シズリにはそれの有効な手段は思い付かず、辞めた。


自分の欲求を満たせればそれでいい。

スリル。

罪悪感の中の快感。


癖になって辞められなくなってしまった―




シズリは中学生になり、そして高校生になった。


高校の彼女のクラス。

たまにあの掲示板の話が出ることもあった。


「マジに人死ぬの?」

「ゼッテー嘘だって!」

「誰か名前書いてみろよ〜!」

「え〜!嫌に決まってんじゃん!!」

そして馬鹿笑いをする男子達。


…書くなら書いてみれば?

本当に死ぬんだから。


そしてシズリは一人心の中で笑う―



掲示板の方も、依頼は途切れる事なく書き込まれた。

シズリはもう様々な種類の人間を消しているだろう。

本来なら殺人犯だが、証拠が残らず誰も彼女を捕まえられないのが現状。


彼女は優越感に浸っていた。



ある日こんなカキコミがあった。


“こんにちはシズリさん!

あなたって凄いですねぇ(@o@)

私も暗殺者をやってるのですが、どうやったら証拠を残さず人を殺れるのか知りたいですぅ!o(><)o

200X年X月X日 Killer”


既に同業者からも一目置かれる存在となった彼女。

シズリは有頂天だった。



“Killerさんへ

それは、私が神だからです。

神故に、証拠も残さず写真だけでも人が消せるんですよ。

お仕事、お互い頑張りましょう!

200X年X月X日 シズリ”



そう、私はもう髪に等しい存在になったんだ。

人の命を自由に操る存在。要らない命を切除する存在。


“死神シズリ”

ちょっといいかも―



神もいつかは陥落する。



シズリがこの仕事に少しずつ飽きを覚えた、そんな頃。


いつも通り掲示板にアクセスする。

いつも通り大量のカキコミがある。


彼女がそれらに返信していると、


「こら!またケータイばっかり弄って!!」

彼女の母だった。


…ヤバイ。

見られたら…、終わりだ。


「アンタ、先月のケータイ料金いくらしたか解ってんの!?

ケータイ取り上げるわよ!!」

母の手がケータイに伸びる。


…駄目。

駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目。


「駄目ぇッ!!!」

彼女は叫んだ。

そして、


力を使ってしまった。



我に帰ったシズリ。

目の前には横たわる母。


…これだけは、

やりたくなかった…


彼女の目から涙が零れた。


悪いの全部私じゃん。

だって私がやったんだもんね全部これ。

私って、今まで何人殺して来たワケ?



…最悪…




彼女は掲示板にレスを立てた。


“誠に身勝手ですが、この掲示板は本日をもって閉鎖致します。

ご利用頂いていた皆様、申し訳ありません。

今までありがとうございました。

200X年X月X日 シズリ”


そして彼女は台所から包丁を持ってきて、母の遺体を刺した。


おそらくすぐに死因は心臓麻痺だと分かるだろう。

その時は全てを話せばいい。

まぁ信じてくれないだろーけど。



落とし前は自分でつけよう…



「−…もしもし、警察ですか?

私は−



人を殺しました。



−fin−



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