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大嫌い

 ビルの正面玄関から足早に道路に飛び出した。

 急いでタクシーに飛び乗りたいのに、こんな時に限って何故か一台も通らない事に、彼女は次第にイラつき始める。


「何なのよっ、ったく!・・・、?」


 やっと、タクシーらしき車がやってくるのが見え、勢い良く手を上げてみるも既に乗客を積んでいる運転手は見向きもしない。

 彼女は口唇を噛み締めながら、じっと車の流れを追いかけていた。


 カツン、カツン、カツン───


 背後から走りながら徐々に近づいてくる聞きなれた革靴の音が聞こえ、彼女は振り返らずともそれが彼の足音だと判ってしまう自分に苦虫を噛む。

 今、どうしても彼の顔を見たくない彼女はそのまま振り返りもせず、早くここから逃げ出そうと躍起になっていた。


「待てよ!」


 急に腕を掴まれ、ぐいっと彼の方へ向かせられた。

 今の状態で微笑む事など到底出来る筈も無い彼女は、当然鋭い目つきで彼を見上げる。その表情が今の彼女の気持ちを物語っていた。

 そんな顔をしている彼女に彼は臆することなく、


「お前、何であんな事言ったんだよ!?あのクライアント、カンカンだったぞ!」


 そう言っている彼も又、カンカンになっている。


「っ!!」


 彼女は彼に掴まれた腕を勢い良く振りほどくと、今まで我慢していたのを吐き出すようにして彼に向かって声を荒げた。


「あんな無茶苦茶なこと言われて、それでもあんたは平気だったの?!」


「え・・・?」


 彼女が何を思って大事なクライアントにあんな事を言ったのかを、彼はそこで初めて理解したのか、やれやれと言った様子で手を額にあてながら自分の足元に視線を落とした。

『・・・何だ、そんな事で。──てっきり・・・』と何処かホッとした様に呟くと、緩めていた目尻にもう一度力を入れて、彼女を見据えた。


「いいか、コレはあくまでビジネスなんだ。───理由はどうあれ、私情を挟むなんてお前らしくない」


 彼女を何度も指差しながら彼がそう言うと、彼女は明らかにムッとした表情になり、又彼に背中を向けてタクシーを捜し始める。


 すぐに‘空車’のランプが点いたタクシーがこっちに向かってくるのが見え、彼女が勢い良く手を上げると、


「でも、・・・俺をかばってくれたのは、正直嬉しかったよ」


 背後から聞こえる穏やかな低い声に、勢い良く上げた手が力を無くし、ゆっくりと下がり始める。

 彼のその言葉に、一瞬気持ちが揺るぎそうになり、彼女はぎゅっと瞼を閉じた。

 やがて、気持ちを切り替えるようにして、瞑っていた目をパッと見開いたかと思うと、もう一度彼の方へ振り返る。その時見せた彼女の目は、まるで彼を蔑む様な目つきに変わっていた。


「───馬鹿ね、あんたをかばったわけじゃないわよ」


「でも、・・・、───っ!」


 彼女はツカツカと彼に歩みよると彼のネクタイをグイッと引き寄せ、まだ話し出そうとしている彼の口を自らの口唇で塞ぐ。


 ゆっくりと口唇を離してから見た、彼の驚きを隠せない表情に“ザマァミロ”と、彼女は決して声に出さずに呟いた。

 すぅっ、と大きく息を吸ってから全てを一気に吐き出すように、


「あんたなんか、大っ嫌い!」


 そう言い放つと、さっさと彼女だけタクシーへと乗り込み、夜の街へと消えていった。








 LOVE IS MAGICAL

こんにちは、まる。です。いつもご訪問下さり誠に有難う御座います。


さて、私事で恐縮ですが、この度アルファポリス様の「WebコンテンツPick Up!」に『彼と彼女のShort Stories』を取り上げていただける事になりましたので、ご報告させて頂きます。

詳しくは、「活動報告」にて記載させて頂きましたので、宜しければそちらもご覧下さいませ^^


これも読みに来て下さる皆様のお陰です、本当に有難う御座いますm(__)m


では、今後とも『彼と彼女のShort Stories』をよろしくお願い致しますm(__)m

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