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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

死合わせ

作者: はるはる
掲載日:2026/05/28

死合わせ

 朝、静かに鳴り響くスマホのアラームを止めて、カーテンを開けて日の光を浴びた。久しぶりのベットで二度寝をかましてしまった。いつもは家でコーヒーを淹れて、お気に入りのコーヒー用で使っている水筒にコーヒーを注ぐ。この時に香る芳醇なコーヒー豆の香りが好きだ。だが今日は時間がない。母さんからプレゼントでもらったシルクとウールをブレンドしたウールシルクストライプスーツに身を包み、父さんからプレゼントでもらったシルクのネクタイを締める。プレゼントでもらうにはとても高いもので申し訳ないが、とても着心地がよく、幸せを感じる。ブレーキ音を響かせながらホームに電車が入ってきた。都会のようだが東京のように混んではいない。2両目の真ん中、ここがいつもの席だ。この席に座ると、いつもの田畑を見られる。寄り道して買ったアイスコーヒーを飲み始めると、やがて列車が出発した。

 コーヒーの酸味が強いものはあまり好きではない。もう八年前のあのことを思い出したくない。苦みだけが、俺の唯一残った家族だ。やがて電車は目的地につき、たくさんの人が降りた。電車を降りると、会社で一緒に働いている後輩が話しかけてきた。「先輩!おはようございます!」そんなかしこまらないでいいといつも言っているのだが...まあいいか。「おはよう、今日も頑張ろう。」そうやって話しながら会社に向かう。そしていつものように上司に怒られ、後輩と一緒に書類を作成し続け、やがて昼になった。いつもは弁当を作っていたが、今日は朝二度寝をかましてしまった。しかたない。あの大将が営むあそこに久しぶりに顔を出すか。「先輩〜!僕も連れてってください!」珍しいな。いつも社員食堂で昼食をとっているのに。「今日はかつ丼を食べに行こうと思っているんだがいいのか。」「はい!先輩が行くところならどこでもついていきます!」いつも弁当を忘れた時やお祝いの際にはいつも家族や親友とここ、「富士かつ」にきた。食べログでの評価は高くなく、皆口をそろえてこう言う、「普通だ。」と。だから客は2度目は来ない。一度目は俺もそんなにおいしくないとは感じなかった。なぜなら、かつ丼にかけるソースの種類を間違えていたんだ。この店には、特製ソースが存在するが、大将にソースを頼まないと出してくれない。だから皆、卓上に常備されているソースをかける。このソースは味に深みがなく、薄い。市販品のような味がする。たぶん店側のコストを下げるためだろう。だが特製ソースは違う。とても味が濃く、ニンニクと焦がしネギのパンチのきいた香り、フルーツのような無駄な甘味を出すことなく、玉ねぎのメイラード反応によって旨味のある甘さが足され、科学による無理やりなうまみではない。そこに自家製の醤油を使うことで、このソースは完成する。こんなすたれた店で作られたとは思えないソースをとんかつにかけることで、カリカリのとんかつとふわっと盛られた米という常識をかき乱す。ソースを吸った衣がふわっと、かかっていないところはカリッと。この食感の違いによって米がすすむ。こんなにおいしいかつ丼がここでは千円以内で食べられる、まさに天国だ。「先輩...やばいっすねこれは。」こんなにおいしく食べるやつを俺は見たことがなかった。連れてきてよかった。ありがとう大将、とアイコンタクトをとると、大将は少し口角が上がった。「今日はおごらせてくれ。先輩として、な。」俺は後輩の分も無理やりおごって店を出た。

 いつも昼休憩の時には社内にある購買でアイスコーヒーとチョコを買う。でも今日はチョコのみを買った。なぜなら後輩が「先輩が昼おごってくれたんだから僕も何かおごりますよ!」と言われたので、アイスコーヒーをおごってもらった。そしていつも通り上司に怒られながらも、残業で2時まで残ってしまった。夜は食べていないうえにコーヒーしか飲んでいない。意識もとっくに朦朧としている。だが昼に買ったチョコをここでつまむ。カカオのいい香りと甘味が体を震わせる。少しのチョコをつまみながら、書類作成とプレゼンのスライド作成を終わらせ、新しい商品の企画考案をしながら帰路に着いた。家には誰もいない。当たり前だと思っていたこの日常。おいしいものを食べるのだって、この会社に入っている俺の唯一の天国だったんだ

________________________________

「おい$#&’#!起きろ!」「お願いします!この$#&’#のことを助けて下さい!お願いします!」

 なんだ?外がやけにうるさいな。でも楽しかったな、この人生も。何もかも、終わってからじゃ気づけない輝かしさを持っている。俺だって、この人生つらいことも、悲しいことも、うれしいことも、いとおしいことも、なんだってあったんだ。死がいつ来ても、そのめぐりあわせが人生か。って今気づいても遅いか。

「失礼しますねー、ってなんだ、このメモは?この患者は...親族もいない上に歩くことさえままならないはずだが...」医者は$#&’#のベットの横においてあるメモに目を通した。そこには八年前の新幹線脱線事故の詳細が描かれていた。

死者:214名  生還者:3名

[生還者のうちの一人、$#&’#容疑者が事故現場で盗みに入った男性を日本刀で切り付けた後、拳で殴って殺害した。殺人の罪と銃刀法違反の罪で懲役7年が課された。だが、もう一人の生還者の証言により、この事件発生2年後に無罪判決が出された。だがそんなことより、僕は家族の時間をうばってしまった。そんなことをした僕には、生きていく価値もない。だが、それを背負って生きていくことが、僕に課された最後の課題なのかもしれない。]メモと新聞の一部が貼られた何かを医師が読み終えると、不意に影のようなものが目の前に現れ、大人の男と女、小学生くらいの男子と中学生くらいの女子が口をそろえていった。「$#&’#、おつかれ。」と。その姿は医師には見えることはなかったが、目を開けることのできない$#&’#は見えたかのようにほほえみ、閉じた目から涙をこぼした。

一定の間隔で鳴り響く「ツー」という音が、医師の心に響く。数分後、駆けつけた他の医師たちが言うには、その医師は立ったまま寝ていたそうだ。

あの新幹線脱線事故によって家族と旅行に来ていた主人公が家族をすべて失うが、のちに後輩となる男を助けるために人を殺してしまうということが最後に分かるように設定した。前半ではなぜ懐いているのかわからない後輩だったが、この最後の説明によりわかりやすくなると思い、描かせてもらいました。

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