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月の光と葵の乙女  作者: 三好八人衆
武田信玄の章
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武田信玄の章~第二話~

今回は短めです。

「私は徳川家康とともに歩むと決めているのです。信玄公御自らの申し出ですが、お断りさせて頂きます」

戦国最強の『虎』武田信玄に対し、黒髪の少年は堂々と答えた。







駿河国・江尻城。武田一門である穴山梅雪(あなやまばいせつ)の居城であるこの城に、武田信玄は戻ってきていた。

「御屋形様、いかがでございましたか」

兵を率いて信玄に随行して来ていた大男―――馬場信春(ばばのぶはる)に、信玄は苦笑して見せる。自分よりも年上のこの男は、常に礼儀正しく、どんな相手にも正当な評価を下すので、彼女は深い信頼を寄せている。

「はっきりと振られてしまいました。あそこまではっきりと断られると、帰って清々しいですね」

信玄は信春に苦笑して見せる。断られるのは織り込み済みではあったが、あそこまではっきりと断られるとは思わなかったのだ。

「この信玄を相手にあそこまで堂々とした態度・・・ますます欲しくなりますね」

彼女は笑みを深くし、後ろを歩く信春に告げる。

「信春。私はいまから甲斐に戻ります。そなたは引き続き梅雪とともに駿河守護に務めなさい」

「それでは三河と美濃への牽制は・・・」

「昌景と信友にそれぞれ吉田城と岩村城を攻めさせます。そなたは来るべき『作戦』に備えて遠江の地理を調べておきなさい」

「御意」







信濃国・飯田城。ここには武田家の最精鋭の部隊と、それを率いる将が駐屯していた。兵士たちは全員が赤い鎧を身に纏い、まさに『赤備え』といったところか。

飯田城本丸で、地図を広げて行儀悪く姿勢を崩している女性がいる。

女性としては珍しい長身に深紅の鎧と直垂(ひたたれ)を包み、挑戦的な光を宿した深紅の瞳に、同じ長い深紅の髪をうなじで一つに束ねた彼女こそ、武田軍最精鋭部隊『赤備え』を率いる山県三郎兵衛昌景である。

彼女はやる気のなさそうに欠伸を噛み殺しながら、地図を見下ろして呟いた。

「さてさて・・・我が御屋形様もついに決心されたか。娘の婿取りを」

彼女が信玄より命じられたのは、徳川重臣・酒井忠次の守る吉田城の攻略。この城を攻略する事により、岡崎城と浜松城の連絡、そして徳川と織田の連絡を絶つ。

「そして、孤立した徳川を叩く・・・か」

金具が擦りあう音を立てて昌景は立ち上がり、出陣を命じた。

「野郎ども!吉田の城一つ、獲りに行くぞ!」








山県勢5千、吉田城へ向けて進軍中―――

浜松城に吉田城の酒井忠次からの急使が飛び込んできたのは、聖一が信玄との邂逅を終えて城に戻った直後だった。



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