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月の光と葵の乙女  作者: 三好八人衆
三河平定の章
13/42

番外編~服部半蔵正成編~

番外編では、各キャラクターにスポットを当てた短いお話を書いていきたいと思います。今回は服部半蔵正成編です。

三河国の大名徳川家での『月の使者』鷹村聖一に与えられた主な役目は『軍師兼祐筆兼弓部隊指揮官』というものである。ちなみに祐筆とは秘書の様なもので、文章の代筆などが主な仕事。

今日も今日とて聖一は主君徳川家康が武田家に送る文章の代筆を終え、岡崎城の廊下をフラフラと歩いていると―――

「・・・道に迷った」

岡崎城内は思ったよりも広く、いつの間にか来た事がない場所まで来てしまっていた。人の気配はなく、あまり使われていない区画のようだ。

「戻ろうか・・・」

仕方がないので、踵を返そうとした時―――

コトン・・・

「ん?」

何かの物音が耳に入り、振り返る。しかし相変わらず廊下には誰もいない。ということは・・・

(部屋の中に誰かいる・・・って事になるけど)

どうやらこの区画は物置の様なところらしく、普段は誰もいないはずだ。仮に誰かがいたとしてももう少し物音がするはずである。

(泥棒・・・か?)

だとすれば徳川家の禄を食む者として看過しておくわけにはいかない。脇差を手に取り、勢いよく扉を開く!

「誰だっ!―――えっ・・・?」

その部屋の中に入った瞬間―――聖一は腕を取られたかと思うと宙を舞い、床に叩きつけられる。

「―――動くな」

叩きつけられた痛みを味わう間もなく、首筋に冷たいものが当てられる。それが刃である事はぶつけられる殺気から察する事は出来た。見上げる先には鋭く、隙のない目つきをした少女の姿があった。そしてその少女の上半身は、ほぼ100パーセント肌が露出していた。

「何者だ」

その少女の鋭い双眸が、聖一を捕らえて離さない。始めてこんな至近距離で『殺気』をぶつけられ、聖一は凍りついたように口が動かない。

(殺される!?)

本気で死を覚悟したその時―――

「聖一さん?」

ガラッと扉を開けて現れたのは、この城の主徳川家康。彼女は抑えつけられているこちらを見比べて、ボッと顔を赤らめた。

「あ、あの・・・半蔵?」

「い、いえ殿、これは、その違うんです・・・・」

こちらを抑え込んでいる少女が、慌てたように家康に対して抗弁する。その慌てた声を聞いて聖一は冷静になって今の状況を分析してみた。

1:上半身裸の少女が男の自分を押さえつけている。

2:人気のない部屋。

3:2人は口づけできそうなほど顔を近づけている。

4:現れた家康は何か勘違いをしている

その『勘違い』―――それが何となく理解できた聖一は、まず少女に服を着るよう告げる。こちらも頬を赤らめた少女が拳を振り上げ―――ゴンッと鈍い衝撃音とともに、聖一の意識は闇に沈んだ。

(あ、意外と大きいんだ・・・)




服部半蔵正成(はっとりはんぞうまさなり)。徳川家の隠密頭をしている」

意識を回復させた聖一に、家康から促された少女はこちらを睨みつけながら名乗った。

「聖一さん、半蔵の正体は私の他には鳥居親子しか知らないからあまり言わないでくださいね」

「はい。分かりました」

それにしても家康はスレンダーな体つきをしており、半蔵も服の上からは家康と大差ないが意外と着痩せするようだ。

「おい、鷹村・・・貴様、いま邪な事を考えただろう」

「いや、そんな事ないです」

「?」

めっちゃ睨んでくる服部半蔵―――ものすごく恐かったが、家康はキョトンとしていた。




簡単な登場人物紹介

服部正成

史実では伊賀忍者だったのは父の服部保長(はっとりやすなが)で自身は甲冑を着て一部隊を率いる武将だった。この作品では忍者として登場。通称は半蔵。

家康に絶対の忠誠を誓う『くのいち』で敵勢の偵察や斥候を得意としている。黒い髪の毛を適当にバサバサに切っているが、髪質はいいらしくお姉さん役の鳥居元忠からは『長くしたら綺麗なのにもったいない』と言われている。着痩せするタイプらしい。

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