第2回:「他校の生徒会との交流会になんて行くもんじゃない」
生徒会役員になってからの初めての仕事は、引退前の前会長に引きつられての「市内高校生徒会交流会」への出席だった。でも、それって、次期会長の仕事じゃないの?「いや、会長はもうみんな知ってるし、お前の方が外に出るの慣れてそうだから」って、印象で人選しないでくださいよ、先輩。……僕の初めては外交官だった。
なんとか波乱の選挙を乗り切り、無事(?)に「生徒会副会長」となった僕ではあるが、実際の着任まではまだ時間があった。それでも、生徒会室には毎日行っていた。何と言っても、僕の高校は、「応援団の部室」=「生徒会室」であり、僕は応援団員だったからだ。
ある日、引退間際の現会長に、急に、こんな事言われた。
「明日、放課後、時間ある?」
「は?」僕はポカンとした。「明日は応援団の練習日なんですが……」
意に介した風もなく、会長。「じゃ、団長に話付けとけばいいな。了解ー。明日、身体空けといてね」
いや、あのね、会長、団長に話を付ける前に、「なんで放課後空いているのか聞くのか」の目的を僕に教えてくださいよ。いやマジで。
しかし、その理由を教えられる事もなく、次の日がやってきた。
「じゃ、行こうか」とニコヤカに会長。次期会長である副会長も同行するらしい。
「――で、どこ行くんですか」僕は、会長に聞いた。
「あれ?言ってなかったっけ?○○高。今日ね、定例会なんだわ」
だから、定例会って何?
「行けば判るって。大丈夫だから」と次期会長。なんだそれ。
ってか、○○高って県下で一番の進学校なわけですが。なんでそこ行くの。
というか、現会長は、「俺、バイクで直接行くから。じゃーねー」とさっさと行ってしまった。残るは、副会長と僕。(うちの高校は申請が通ればバイク通学可だった)
「じゃ、行こうか」と促されるも、不安は消えず。
僕はバスに揺られながら不安でいっぱいだった。「定例会」って何?
○○高の前に初めていた。学区が違うので僕は受験できる環境ではなかったが、ここは、うちの県下で一番「頭が良い」高校。毎年旧帝大に一定人数を現役で合格させている高校。たとえ受験できたとしても僕では受からない。そんな高校。それだけでビビリまくり。しかも男子校。男臭い。
今、何故、僕はここにいるんだろう。自分でもよくわからない。何のためにいるのか、その理由すらも。
なんでも、市内の高校の生徒会役員が二ヶ月に一度集まって、「定例会」なるものを開いているらしい。そんなの、僕は初めて知った。
初めての定例会の議題は……実はよく覚えていない。雰囲気に呑まれ、圧倒されていたからだ。そもそも、僕は「社交的な人間」ではない。見知らぬ人たちに囲まれ、ただただ縮こまっていた。
今日のホスト高の会長が、議論を手慣れた様子で仕切る。
他校の役員が、資料を完璧に用意し、うちの高校の会長や次期会長とは比べ物にならないほど理論的に話す。
うちの会長たちは……その様子をニコニコと見守っているだけだった。いいのかよ、それで。
その後の分科会も同様だった。他校の生徒会副会長は、僕よりも全然聡明に見えて、眩しかった。「自分はなぜここにいるのだろう」と疑問を感じずにはいられなかった。
「あなたの学校ではどうですか?」他校の副会長が、急に僕に話を振った。
――え?僕?
僕は焦った。うちの学校の「いい加減なルール」なんて、とても口にできない。
「えーと……まだ役員になったばかりで、よくわからなくて……帰って確認します」
僕は誤魔化した。
相手は「そうですか」と微笑んだ。
数時間後。定例会は終了した。僕はロクに会話することができなかった。ただただ疲れただけだった。
「じゃあ、次回からこいつらが来ますんで、みんなで可愛がってやってください」会長はそういって場を締めた。
みんなから、「これからよろしくー」と言われる。いや、いっぺんにそんなに多くの人、覚えられない……
「なんで、僕なんですか!」定例会後、会長と次期会長に詰め寄った。そしたら、異口同音にこう言われた。
「いや、会長はもうみんな知ってるし、お前の方が外に出るの慣れてそうだから」
……印象判断かよ。
帰りのバス。
僕は窓の外を見ながら、ため息をついた。
「疲れたかい?」次期会長が笑った。
「……めちゃくちゃ疲れました」
「まあ、慣れるって」
――慣れるのか、これに?
僕は不安でいっぱいだった。
「今日も全然大丈夫だったじゃん」と次期会長。
見知らぬ人と沢山会って、すっげー緊張してたんですがねぇ……そうは見えないのか。
その後、この定例会で知り合った他校の生徒会役員と、色々あったり泥沼があったりしたんですが、それはまた別の話。
――本当に、他校の生徒会との交流会になんて行くもんじゃない。
<続く>
次回:第3回「生徒会予算編成なんてやるもんじゃない」(前編)
「それでは来年度予算の検討をします」と配られた紙の束。それは、僕の高校生活で最も面倒で、最もドロ沼な戦いの始まりだった。各部部長の熱意と、予算の現実は、僕の頭を途方に暮れさせる。




