第八幕:蜘蛛の誕生あるいは発見
やあ、君。怖い夢を見た時、君は誰に相談する?愛する妻?愛する母?
それとも、友だちにだろうか?
第七幕では、悪夢の中にいるアーサーの様子を見た。彼はホームズと口論することになった。
さて彼は朝日が昇るとともに、
悲鳴をあげた。
それから、彼の母のメアリー・ドイルのところへと向かった。
母は息子のやつれた顔を見て驚いた。
ダイニングルームのテーブルで、二人は向かいあった。
「母さん。ボクはホームズが怖いーー」
彼は震えながら、自分の心の中の不安を告げた。
彼が言える範囲でね。
「夢の中。ボクはホームズにあった。アイツは、ボクをバカにしてた。
あんなヤツーー!あんなヤツーー!
終わらせてやるーー母さんの言う通りだった!イヤラしい男だ!」
「アーサー、おちついて。
それで、あなた、どうするつもりなの?」
「ホームズを始末する。劇的にねーー」
「劇的って、あなたねーー」
「母さんもいってたじゃないか!
ヤツにボクの仕事に関わらせるなって。だから、終わらせてやるーーもうたくさんだーー」
アーサーは両手で拳を握りしめて、震えていた。
母は、黙って彼の拳に手を置いた。
「ホームズさんを始末するのは、やめといた方がいいわ」
「なぜ?」
「彼にはファンがいるの。きっと、あなたの想像するより多くーー」
「ホームズは、あのクソッタレは、ボクが作ったんだ。ボクの好きにさせろーー」
「あなたの好きな物語の騎士を、私が勝手に始末したら、あなたは怒るでしょ?」と彼の母は言った。
「アイツは騎士じゃない。悪魔なんだよ、母さん。倒さなきゃーー」彼は微笑んでみせた。
「実はもう考えてるーー」
「何を?」
「ホームズの劇的な始末の仕方さ。
アイツと似たやつをぶつけてやる。
魂の双子のような、完全な善と悪だ。
ジキルとハイドだ。どっちもクソッタレだけどーーどっちもくたばってしまえ!」
彼は感情的に机を叩いた。
「彼の名はジェームズ・モリアーティ。モリアーティ教授だ。数学の天才だ。少し年配の男だが、
ホームズと同等の知性、
いやそれ以上だ。
だが、ーーあんまり持ちすぎると不幸を感じる。だから、そこそこバカなヤツだ。
そんなブザマな知性を合わせ持つ。
読者も彼に憧れる犯罪王だ。
ナポレオンだ!
マイクロフトのように、動かずに犯罪を計画するーー」
淡々とアーサーは、新しいキャラを語り始めた。
彼の母は静かに十字を切った。
何かが起ころうとしていた。
窓の外は明るかったが、部屋の中は暗く感じた。
(こうして、第八幕は蜘蛛により幕を閉じる。)




