第七幕:悪夢の世界
やあ、君。自分の身体が一つしかないのを悔しく思ったことはない?
あと、もうワンセット!
それがあれば、ボクらは自分の身体だけでーー殴り合える。
ーーなんてね。
第六幕では、シャーロキアンによるホームズ作品の執筆の催促が繰り返し行われたのを見た。
その夜の事だ。ーーアーサーは夢を見た。
彼にとって、不愉快な夢だった。
彼は薬品棚が置いてある部屋の中にいた。窓はない。出入り口は一つ。
壁は灰色に塗装されていた。
部屋の中央にはスペースがあった。
そこに全身鏡が置かれてあった。
鏡の前にアーサーは立っていた。
ボロボロの衣装はめちゃくちゃに破けた。
ーー太った身体。太ってたーー!
鏡の中、そこに一人の中年男性が立っていた。茶色い短髪には白髪混じり、灰色の髭が口元を隠していて、体はがっしりしていた。
彼は驚いていた。
「なぜだーー」と彼は声をだした。
「どうやってーーいやーーこれはーー私なのか?私はアーサー・コナン・ドイルだーーそして、ここはーーシャーロック・ホームズのせいか?」
彼は震える手で、自分の顔を触り始めた。
鏡の中には、アーサーの姿があった。
だがその姿の下には、まったく違う人間の気配がする!まったく違う人間が重なって存在してた。
アーサーの目を通して、シャーロック・ホームズの目が、アーサーを見つめていた。
それを彼は感じていた。
アーサーの唇から言葉が漏れた。
「君は誰だーー?」と。
「ーーアーサー・コナン・ドイルだ。お前はシャーロック・ホームズだなーーいったい、何をした?それよりも、ここはーーゆめ?ーーいやーーお前のせいに決まってる!この疫病神が!悪魔め!」と彼は一人で地団駄をふんだ。
「おい、バカ!ーー人を呼ぶ気が?」
彼は、あー、もう、いい加減にしてほしい。口は一つしかないんだ。
「その身体の本来の持ち主は僕だ。すぐに出ていきたまえ。もと来たところに。今すぐ!この悪魔めーー」
「悪魔だと?誰に向かって口をきいてる!ふざけるな!もともと私はお前のことなんて、大嫌いだ!消してやる!お前なんて消してやる!」
「はっ!ずいぶん威勢がいいな!おい、身体を傷つけるなよ!僕は戻るつもりだぜ、太っちょ!なんだ?顔を赤くして、ちょうどいい鏡は目の前にある!じっくり見たまえ、マヌケ!」
「き、キサマーー!私が、キサマを作ったんだ!その薄笑いを今すぐやめろ!崖から突き落としてやる!」
しばしの沈黙。
「なんだって?君がーー作った?
おい、証明したまえ。誰が僕を作れるというんだ?」
「キサマはワトソンを失うのを自分が死ぬよりも恐れている!ーーこの、この人でなしが!」
しばしの沈黙が続いた。
ホームズが口を開こうとした瞬間、部屋の扉が勢いよく開かれた!
「どこから入ってきた!この乞食め!」
ああ、なんてこと!
そこには執事頭がいた。
上品な顔に紳士服をまとった男!
その顔は、怒りに燃えていたんだ。
彼は吠えて、容赦なく飛びかかる!
火かき棒で、
アーサーの尻を強く打ったのだ!
可哀想なアーサー!
この後この悪夢の中で、
散々おいかけられて酷い目に遭うんだ!
数時間も!
(こうして、第七幕ではホームズの畏れで幕を閉じる。)




