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ファウスト〜名探偵呪縛作家の幻視〜  作者: ヨハン•G•ファウスト


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4/9

第四幕:母の正論ビンタ

やあ、君。正論は時として創作者を傷つけるものだ。「あなたには才能がある、こんなもので時間を潰さないの」と言われても、こんなものでも作りたいものなんだ。

作らない人には、わからないだろうね。


第三幕では、大家族の家計をマシなものにするために、娯楽として推理小説をアーサーは書いた。

それを母に見せたが、母から予想外の拒否反応をうけた。


「そんなにイヤな男かいーー?」とアーサーは母に聞いた。

もっとマシな感想が欲しかったからだ。

「私、被害者になっても、

こんな男に解決されたくないわ。

だってそうでしょ?

この男、まわりの誰かを『死ね』と思っているのよ。化け物よ。

しかも理由が知性を磨くため?

そんなの一生終わりがないわ。

ねえ、アーサー。人はこんな磨き方はしないわ。ぜったい。

こんなの喜ぶ連中は、人間というよりもーー悪魔ね」

アーサーは深く傷ついた。

彼の生み出した探偵を、母は完全否定したんだから。


「ねえ、アーサー。この人は誰?

あのイヤらしい男に話しかけてる人よ」と彼の母は、少し息子に言いすぎたことを反省して、別の案を息子に与えようとした。

「ワトソンだ。彼は少しノロマなホームズの助手だよ。」

「とても優しい子ね。ーーまるであなたみたい」と彼女は微笑む。

「この物語の記録者は誰なの?」と母は息子と目を合わせた。

「ボクが書くんだ。彼らについてーー」

「でも、これは推理小説なんでしょ?

あなたが書いてたら、もう全て分かっている風に書いちゃうわ。

ダメよ。ーー読者はムカつく」

「なら、ホームズに語らせる。

彼と共に謎を解いていくんだ」

「アーサー!彼には、あなたの仕事に関わらせないで!」

彼女は、ホームズを完全に嫌いになっていた。探偵ホームズは、息子と関わらせたくないクソ野郎だった。

「このふざけた男に物語を記録させたら、皮肉と嘲笑のオンパレードよ。

ヒマになれば、人を殺すわ。

自分さえも破壊するーーそういう男よ。彼には何も書かせないでーー」

彼の母は頭が良かった。

頭が良すぎたから、あの父親は誇りをへし折られたんだろうね。

彼女は男として生まれた方が良かったんだ。

彼女は親として、生贄を見つけた。

「ーーワトソンさんに、語らせなさい。」と母はアーサーに命令した。


創作者と読者の意識の違いだった。

神の視点ではなく、

物語の登場人物のーーしかもマヌケとして、彼は探偵ホームズを描かなきゃいけなくなった。


彼は観測者ではなく、当事者としてホームズを見る。

マヌケな助手として、これからもずっとーー巨大な悪魔を見なきゃいけない。


ーーお金のために。


彼は自立したかった。

だけどーーいま彼は不安になった。


ーーボクは一生


ーー寄生虫なのかもしれない。


アーサーは、口の中で呟いた。


(こうして、第四幕は寄生虫で幕を閉じる。

その時、母の持つ原稿が突然グシャリと縮まった。まるで笑いがこらえきれなくなった子どものように。

母は、彼女はーー不思議そうにみてた。)

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