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ファウスト〜名探偵呪縛作家の幻視〜  作者: ヨハン•G•ファウスト


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2/9

第二幕:言い訳しない探偵作家

やあ、君。言い訳したいのに、させてもらえない雰囲気ってどう思う?

家族が沢山いるのに、父親がいないんです。ヤツは精神病院で絵を描いてます。ボクは長男として仕送りをしなきゃいけないんです。

皆は同情してくれるだろう。

でも彼は、プライドが高い男だ。

ぜったい、そんな言い訳はしなかった。


第一幕はアーサーについての紹介と、彼の状況を説明した。

彼は授業中に居眠りし、

ベル教授に目をつけられたのだった。


「ドイル君、立ちたまえ」とベル教授は静かに命令した。

冷たい声が講堂に響いた。

ドイルーーアーサーは、頬を震わせながら立ち上がった。がっしりとした身体が縮こまって見えた。

「いや、そこではない。

ーーここだ。教壇の隣に来たまえ」

ベル教授は細い繊細な指で、教壇の横を指差した。

全学生から丸見えになる場所。

魂すら、見透かされそうだ。


アーサーはーー、

震える足で教壇の隣に立った。


段上だ。

劇場の舞台のように、

百人以上の学生全員から見られた。

彼はーーまるで...これから自分から服を脱がなきゃいけない気分になった。


ベル教授は腕を組み、

アーサーの周りをゆっくりと歩き始めた。

ーーニヤニヤと笑いながら。


「さて、諸君。観察の実例を示そう」


教授は蜘蛛みたいな指で、

アーサーを指した。


「この学生を見たまえ。目が充血している。夜更かしだ」


学生たちがクスクス笑う。


「だが——」教授は指をアーサーの手元に向けた。

「なぜ、夜更かしをしなきゃいけない?勉強が好きだから?

だがねーー講義中に眠るなんて、本末転倒だ。

夜中の勉強をやめて、

ーー集中したまえ。このマヌケ!」


笑い声が大きくなる。

彼は下唇を噛んで、うつむいた。

言い訳を彼はしなかった。

少しも、一度もーー!


それからの彼の学生時代は、

視線と好奇心に囲まれることになる。

アルバイトや家族への仕送り、

学ばなければいけない事が、待っていた。


ベル教授の指導は、ほぼ毎日繰り返された。

彼はベル教授に何も言われないように、警戒しなきゃいけない。

だけどね、彼は眠かった。

ガマンしようとすると、人間眠くなるもんだ。意識が遠のいてくーー。


そして、彼は教壇の隣の段上に立っていた。

彼は何が起こったのか、分からなかった。

彼はーーまた寝てたんだ。

「ドイル君。私はね、バカにされるのは好きじゃない。君もそうだろ?

マヌケと言われた時、君の頬の筋肉が動いた。これは、ストレスによるものだーー君のようなマヌケがストレスを感じるのは思えんがねーー!」


アーサーはこの時のことを、

思い出したくもなかった。

学生時代が過ぎれば、

彼の地獄は終わると思っていた。


ーーだけどね、アーサーはベル教授に気に入られた。

アーサーは、ベル教授と共に王立病院彼のもとで働くことになった。


ベル教授は毎日、彼の開発した観察法をアーサーにためした。

アーサーの指を見て、手を見て、

顔を見て、靴を見て、全体を見て、

彼のプライベートを暴くのだった。


患者たちの目の前で、

ーー魔法使いのように、

ーー名探偵のようにね。


(こうして、第二幕ではパフォーマンスで幕を閉じる。

この学生時代は、彼を神経質に変えたのだった。)

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