6 初めての戦闘!
正直、俺はこの魔物に勝つのは難しいだろう。
なにしろ、魔法を使ったことはあるが、魔物と戦ったことはないのだ。
覚えている魔法も初級魔法ばかり。
ちっ、俺に才能がもう少しあればな!
いや、自分の運命を恨んでも仕方がない。
とりあえず、俺は最善を尽くすしかない!
「身体強化!」
俺は魔法を使った。
これは名前のとおり、一時的に全体の身体能力を上げる魔法。
そして、俺の魔法が発動してすぐに、熊の魔物が爪で攻撃してきた。
「くっ!」
俺は咄嗟に避けたが、腕に少しかすってしまった。
これは、身体強化を使わなければ直撃してたな。
「にぃに!」
「くるな!俺は大丈夫だから、リトルとできるだけ遠くに行ってろ!」
リリアが俺に近づこうとしてきたので、急いで阻止した。
さすがにリリアを庇いながら戦うのは無理ゲーだからな。
そういう俺の意図を察したのか、リトルがリリアを抱えて離れてくれた。
よし、これでとりあえず流れ弾を食うことはないだろう。
それなら!
俺は、近くにあった木の枝に乗って、熊の胸元の高さまで行き、枝を蹴り、熊に突進していく。
上位の魔物には魔石がついている。
そして、大抵の魔物はそれを壊せば倒れる。
そう!いわゆる弱点だ!
この熊には胸元に大きな赤い魔石がついている。
つまり、この魔石を壊せば俺の勝ちだ!
「っ!身体強化!」
俺はもう一度、身体強化を使った。
そして、身体強化は二度使っても効果は変わらない。
なら、なぜ使ったのか。
身体強化は全体を強化する。
だが、一点に魔力を注ぐと、そこだけが強くなる。
今回、俺は左足に魔力を集中させ……
「だー!」
その左足で、熊の魔石に強烈な蹴りを入れた。
その攻撃で、魔石にヒビが入った。
「よし!」
だが、これじゃ足りない。これではまだ、壊したことにならないのだ。
だが、問題ない!
俺はヒビの入った魔石に手をかざし、叫んだ。
「いけ!ファイヤーボール!」
俺がリリアたちの位置を気にしたのは、このファイヤーボールがたまに変な方向に飛ぶことがあるからだ。
まあ、どっちみち失敗は許されないんだがな!
そして、俺のファイヤーボールは見事命中し、魔物の魔石は砕かれ、熊の魔物は大きな音を立て、崩れ落ちた。
ふう、意外となんとかなったな。
俺は地面に着地し、そう考えていると、焦った声でリリアが叫んできた。
「にぃに!!後ろ!」
「は?」
リリアの言葉に後ろを振り返ると、そこにはもう一匹の熊の魔物がいた。
な!もう一体いたのかよ!?
そして、その熊の魔物は俺に手を振りかざして攻撃してきた。
やばい!これは避けられない!