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六話


「ッ?! な、何? この怖気立つ様な気配?」


 急に感じた嫌な気配。一体何事かと思っていると、アルファスが神殿内に駆け込んできた。



「カレン! ヤバいぞ! 魔の森から瘴気が溢れ出してる!!」


「ええ?! 何で? あの場所の封印はきっちり補強してきたのに! 聖樹は??!」


「わからん。とにかく、こうなったら非常事態だ! 力を貸してくれ!」


「もちろん! 追放されたけど、私は聖女だからね! やる事はやるさ!」








* * *



 避難する人達を掻き分け、アルファスについて森の近くまで移動する。


 森からは、アルファスが言っていた通り、禍々しい瘴気が溢れ出ていた。それを見た私は、落ち着いて目を閉じて、気を集中させ、身のうちに宿る膨大な魔力と浄化の力を解き放った!


 私の足元から、煌めく緑色の光が溢れ、見る見るうちに美しい花畑が現れる。そして、花に触れた場所から瘴気が浄化されていった。


 だがしかし、溢れ出る瘴気の量が量だ。浄化と瘴気がぶつかり合い、上手く浄化が進まない。そんな中で森から複数体の魔物が現れて襲いかかってきた!


 思わず身構えてしまったが、側にいたアルファスが火魔法であっという間に倒してしまった。


「あ、ありがと」


「いえいえ。尊き御身をお守りするのは当然です。魔物は私に任せて、聖女様は浄化にご集中下さい」


「だから! 突然神官モードは止めろって!」


「いやぁ、緊張を紛らわせようかと思って。あ、また来た。まあ、冗談抜きで魔物はこっちに任せときな!」




 全くこんな時にふざけるなっての! とにかく、今は浄化が先決だ。再度意識を集中して、何とか浄化を広げていく。


 次から次へと襲いくる魔物達をアルファスが倒し、浄化の光を纏った花畑を森に咲かせていく私。どのくらいの時間が経ったのか分からないが、だんだんと魔物が少なくなってきた辺りに、やっと辺境伯の騎士団が到着した。


 その頃には、私もアルファスも限界だったので、その場は騎士団に任せ、2人とも一旦辺境伯の城に移動した。








* * *



 数日後、ある程度回復した私とアルファスは、応接室にて辺境伯とメルト王国の王太子であるライメル殿下と対面していた。


「この度は、我が国の危機を救っていただき、感謝いたします。木の聖女様、神官アルファス殿」


「儂からもあらためて感謝を。お二人の活躍が無ければ、この辺境の地はどうなっていたか分からぬ。ありがとう」


「そんな! お二人とも顔をお上げ下さい! 私達は、当たり前の事をしたまでです。それに、最初に匿って頂いたご恩もありますし。ねぇ? アルファス様?」


「ええ、聖女様のおっしゃる通り。神に仕える者として、民に害を為す瘴気と魔物を放っておくわけにはいきませんでしたから」


「流石は、聖女様と次期大神官と言われていた方だ! なんと素晴らしい御心か!」


 なんか、ライメル殿下がとても感動してるけど、アレは突発的な事象だったし。現在、私とアルファスは絶賛猫被りモードだ。





「それで、殿下。今回の件の原因などお分かりになりましたでしょうか?」


 アルファスが早速本題を切り込んだ。


「うむ。こちらが掴んだ情報では、そもそも聖女様の追放から邪教が関わっていたらしい」


「邪教ですか? あの、瘴気こそが世界を救う力だとか言ってる?」


 まさかの邪教に、思わず口を挟んでしまった。




「はい、聖女様。その不届な考えを持つ邪教の連中がリーザン王国に潜んでいたようです。先代聖女の偉業を隠れ蓑に、ノルト王太子や若い貴族の令息令嬢を唆し、浄化の力を持つ聖女様を追放。更に瘴気を悪用できる魔道具なるものを使い、邪魔な人物を片っ端から動けなくし、あの魔の森の瘴気溜まりの解放を狙っていたようです。全く愚かな事です」


 王太子まで、邪教が関わっていたとは。全く気づけなかった。


「聖樹を切り倒し、封印を解いた邪教徒達は、そのまま瘴気を被って魔物化しておりました。しかし、聖女様の花畑の中では大幅に弱体化しましたので、メルト王国側に出て来たのは全て討伐済みです」


「他に出て来た魔物共も、儂の騎士団の連中で殲滅済みですじゃ。ご安心なされよ」


 良かった、あの町の人達には優しくして貰ったから。魔物達が討伐済みなら安心だ。


「リーザン王国側には、かなり被害は出たそうですが、あちらの辺境伯が上手く避難誘導したようで、領民の人的被害は最小限に収まったようです。また、北側にあるカリス連合国の水の聖人様が、リーザン王国をご訪問しており、瘴気の魔道具で被害に遭った方々を浄化されているそうです。ノルト王太子と自称聖女は、既に投獄済みだとか。いくら邪教に唆されたとはいえ、今回原因の一因ですからね。周辺諸国共々、厳しい処罰を要請する予定です」


 あのアホ王太子と金髪ふわふわ美少女ちゃん、捕まったのか。まあ、自業自得だな。




 その後も、今後のことについて色々話し合い、ライメル殿下は帰っていった。せっかくゆっくり出来ていたのに、まさかこんな事になるなんて、思いもよらなかった。


 とりあえず、なんとかなって良かったよ。隣のアルファスを見ると同じ事を思っていたようで、互いにお疲れ、とこっそり拳をぶつけ合った。


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