五話
とりあえず、行くところもないので、暫くアルファスの居る小神殿で匿ってもらう事にした。
辺境伯とメルト国王には、内々に私の事は伝えるが、リーザン王国側には私の事を絶対にバラさないようにして貰った。
また、メルト王国の次期神官長候補だったアルファスが、何でこんな辺境にいるのか再度聞いてみたところ……。
「いやぁ、うっかり、敵対勢力側のライバルに冤罪を掛けられちゃってさ。追放されたんだよな。辺境伯に恩を売っといて良かったよ」
「腹黒なアンタが冤罪って、逆になんか企んでるんじゃ……?」
「嫌ですねぇ。品行方正な私がそんな事企むわけが無いでしょう? まあ、追放されたお陰で貴女と会えましたから、きっと神のお導きだったのでしょう」
「急に神官モードになるなよ!」
との事だった。
そんな、本音で話し合えるアルファスとの生活は、そう悪くはなかった。ここでは一挙手一投足に気をつけ無くても良いし、聖女の演技もしなくていい。陰でヒソヒソ言われないし、小さい嫌がらせとかも無い。
神殿内の掃除とかはある程度手伝うけど、疲れたら休憩させてくれるし、欲しい物があったら、常識的な範囲内なら買ってくれる。前みたいに、要らない物は無理矢理渡されて、欲しい物は全然くれない生活とは大違いだ。
暫く、そんな穏やかな生活を過ごしていたが、アルファスから不穏な事を聞いた。
「リーザン王国がヤバいかもしれん。まず、お前が追放された日から、あの偉そうな態度の王様が体調を崩して、表に一切出てない」
「え?! 追放される数日前のパレードの時は、無茶苦茶元気そうだったのに?」
「ああ。しかも、神官長を始めとして、主だった神官達や古くからの重臣達も、軒並み原因不明の体調不良になってる。だからか、あのアホ王太子が国王代理でやりたい放題してる。ミミリアとやらも、神殿が認めてないのに、聖女として発表しやがった」
「それは、何というかきな臭すぎるというか」
「ただでさえ、お前が急に追放されたのに、これだろ? 流石にアウトって事で、うちを含めた周辺国で抗議やら問い合わせやら書簡を送ったんだが、返答は自分達が正しい!ってヤケに自信過剰な内容だったらしいぞ」
「うぇ?? リーザン王国って小国だよね? 周りの国と比べたら国力も国土も小さいよね? そんな返答したら、戦争にならない?」
「実際なりかけたけど、どうも国内がおかしいってんで、今は各国合同でリーザン王国で起きてる事を調査中」
「うーん。何も起きなきゃ良いけど……」
そんな話を聞いて不安げな日々を送っていたら、ある日突然に事態は急転した。