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四話


 さてと、これからどうしようか。


 何か訳の分からない事を言っていたものの、一応アレは王太子殿下。このまま国内に戻っても碌なことにならないだろう。ならば、丁度よくこの森は隣国との国境に近いし、隣国のメルト王国に亡命しよう。


 今までの待遇に見合った働きはしたつもりだし、あのバカ王太子も、周りのバカ貴族達も、表面上だけ敬ってこっちの要望を何一つ叶えてくれない、気疲れしかしない神殿も、み〜んな、しーっらない!!



* * *



 休み休みしながら、見知った森の中を進んでいく。お腹が減ったら、魔法を使って食べられる果実等を生やして食べる。……こういう時に木の聖女で良かったと思う。魔法がほぼ無制限に使えるって素晴らしい。


 三日も歩くと、ようやく隣国側に出た。普通の街道とかなら、関所とかあるけど、ここはつい最近まで、危険地帯だったからね。通る人もいないから、関所とかも無かった。今の私にはありがたい。


 聖女の正装も、無駄なヒラヒラを引きちぎり、土で汚したお陰で、ちょっとボロいワンピース的な服に擬装できた。


 多少怪しまれつつも、隣国の辺境の町に入る事ができた! 良かった、良かった! とりあえず、寝食できる場所を確保したいけど……私、無一文だ。


 あんまり寄りたくないが、背に腹は代えられない。町の小神殿に行って、暫くやっかいになろう。そう思って、町中を歩き回り、小神殿を見つけて入って、中にいた若い神官に話しかける。



「すみません。行くところが無くて、暫く置いていただけないでしょうか?」


「これはこれは、よくいらっしゃいました。もちろん大丈…… おや? 貴女は、まさか……」


「え? ゲッ!? なんでアンタがここに?!!」



 そこに居たのは、隣国の次期大神官と言われていたアルファスだった! 奴は、聖女である私を自国に引き入れようと、会う度にありとあらゆる手を使ってきた腹黒神官だ! 何でいるの?!!


「何故って、それは此方の台詞です。どうして聖女である貴女が、そんなボロボロになって、こんな所に? 一体何があったんです?」


「あー、それは……」


 話すべきかちょっと迷ったけど、知らない仲じゃないし、今は寝食出来る安全な場所の確保が先決だ。腹を割って、全部話す事にした。




「ブッ、ブハッ! はい? 浄化の旅が終わったそうそう、偽聖女と言われて、追放されたって、おまっ、アハハハッ!! うっそだろ!?」


「笑いすぎだろ!! 表の顔剥がれまくってるし!」


「アハハハッ! こ、これが笑わずにいられるか? しかも、偽聖女の理由が、治癒の力が使えないから! う、ウケるっ!!」


 お腹を抱えながら笑い転げるアルファス。やたら顔が良く、表向き礼儀正しい好青年を演じていたコイツは、実は今みたいに口が悪いのが素だったりする。


 私とは、引き抜きバトルを何戦もする度に、いつの間か互いに素で話しており、国も立場も違えど、悪友の様な関係になっていた。


 (当時、隣国に行くのを断っていた理由として、狭苦しい神殿での生活とは言え、ご飯は美味しいし、待遇もそこそこ良かったし、引き抜かれたら、外交的に面倒くさい事に巻き込まれると思っていた)




「ちょっと聞きたいんだけどさ、魔法属性と加護の話って、一般常識なんだよね?」


「まあな、そこそこ大きな町なら、平民でも知ってるくらいの常識だ」


「やっぱりそうだよなー? だとしたら、何で殿下達は、あんな変な勘違いしたんだろ?」


「あー、多分だけど、あの王太子がめちゃめちゃ夢見がちだったのと、200年前の聖女のせいじゃないか?」


「んん? 殿下って夢見がちだったの? あと、200年前の聖女が原因って……あ、まさか……」


 200年前の聖女。確か彼女は、光の聖女だったはずだ。王都の神殿にも、かなり美少女に描かれた彼女のでっかい絵画が飾ってあり、彼女の伝説を長々と聞かされた事がある。あの時は、どうせ美化された話だろうと、大半を聞き流していたな。




「そう、リーザン王国の200年前の先代聖女は、光の聖女様だった。しかも彼女は、魔の森の封印以外にも様々な伝説を残してる。うちの国にも、彼女の伝説を元にした演劇があるしな」


 アルファスが言う通り、彼女が残した数々の伝説は、絵画や演劇、絵本などの題材として、リーザン王国はもちろんの事、周辺国でも有名だ。


「特にリーザン王家には、彼女に纏わる話や品物が沢山あるだろう。でだ、木の聖女様は神殿に缶詰め状態かつ、その後は浄化の旅で大変だったろうから、知らなかっただろうが、あの王太子がアホな上に夢見がちなロマンチストだっていうのは、結構有名な話でな。そんな夢見がちな王太子が小さい頃から光の聖女様についての伝説を聞かされて育つわけだ」


 うわぁ、なんかこの後の展開が容易に想像できるぞ。


「その結果『聖女=光属性の美少女』なんて思い込みが出来てたんじゃないか?」


「はぁーあ? バッカじゃねーの?!」


「アハハハッ! 俺もそう思うわ!」



 そんなしょーもない理由で、私は追放されたのか。そんで、恐らく光属性であろう見た目が美少女だったミミリアとやらを真の聖女呼ばわりしてたのか! アホくさっ!!


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