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悲しき仮面  作者: 碧野 颯
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隠された狂気 1

「ママ、この写真の男を見かけたら連絡してくれる?」

仲宗根はシマのバーのママに銃丸№3、崎の写真を見せた。


「オタクみたいな人だね。フィギュアでも盗んだの?」

「いや、そうじゃないんだけどさ。見かけたら連絡してよ」

「はーい、組長のお願いなら」

「それじゃ、よろしく」


仲宗根はバーを後にした。


仲宗根は勅使河原会が仕切る店舗を訪れ、銃丸№3崎の写真を見せて情報提供を依頼した。

しかし、一週間が経っても崎の目撃情報はなかった。

頭に報告するため、本家に向かう。


ノックを三回し

「失礼します」

と言って部屋に入った。


「おう、仲宗根。どうした?」

「目撃情報の件ですが…」

「どうだった?」

「申し訳ございません。手掛かりなしです」

「んー、そうか…」

大城は腕を組んだ。


「あいつら、表をあまり出歩かないみたいです…」

「お前の先輩からの情報は?」

「なしです」

「そうか、じゃあ別の方法を考えるか」

その時ノック音が響き、組員が入ってきた。


「頭、客人がいらしています」

「客人? 誰だ?」


こんな時期に客人とは誰だろう?

廊下から組員の声が聞こえる。


「お客人、もう少々お待ちください」

「大丈夫、だいじょーぶ。失礼しますよ、大城の若頭」

そう言って、着物を着た七十代の高齢男性が部屋に入ってきた。


「あっ、おじき! ご無沙汰しています」

仲宗根が慌てて挨拶をする。

「おう、仲宗根。久しぶりだな」


彼は勅使河原会長の弟分であり、元ヤクザの組長だ。

彼と会うのは何十年ぶりだろうか。年齢は重ねているが、その雰囲気や服装は全く変わっていない。


「お元気でしたか?」

仲宗根は嬉しそうに声をかけた。


「あぁ、お前さんは?」

「まぁ、ぼちぼちです」

「そうか、そうか」

おじきはゆっくりと大城のほうへ歩み寄る。


「久しぶりですな、大城の若頭。すいませんね、ちょっと病気をして入院していたもんで、勅使河原の兄貴の葬式に出られなくて申し訳ない」

「いえいえ、大丈夫です。お久しぶりです、おじき」

大城は席を立ち、深々と頭を下げた。


「お体のほうはもう大丈夫なんですか?」

「ご心配ご無用。しかし、あんたたちの組の教育は素晴らしいね!」

「ありがとうございます。おじき、どうぞ座ってください」

おじきは椅子に腰を下ろした。


「それで、どうされたんですか?」

おじきは咳払いをし、ゆっくりと口を開いた。


「あんたたち、今、半グレ集団の…じゅう、銃…銃丸だったか?」

「はい」

「そいつらと戦争しているんだろ?」

「えぇ」

「そいつらが兄貴を殺したんだってな。それを聞いて、居ても立っても居られなくてな」

おじきはポケットから紙を取り出し、机の上に置いた。


「これは…?」

「そいつらのアジトの住所だ。まぁ、二か所しか割り出せなかったがな」

大城は紙を手に取り確認した。


「ありがとうございます」

大城は席を立ち、深々とお辞儀をした。

「いいんだよ。兄弟の仇をとってくださいよ、大城の若頭」

おじきは椅子から立ち上がった。


「若い者に送らせます」

「じゃあ…お願いしようかな」

「わかりました。おい、おじきをご自宅までお送りしろ」

扉の前に立っている組員に大城が指示を出した。


「仲宗根、今からお前と比嘉でこの住所に行ってこい」

大城は紙を手渡した。


「はい、わかりました」

車を走らせる中、比嘉が仲宗根に話しかけた。


「おじきが持ってきたのか?」

「えぇ。親殺されたお前たちがタマを取ってこいって」

「おじきは変わってねぇな…」

比嘉は感慨深げに呟いた。



しばらくして港が見えてきた。

そこが指定された住所だった。


「港か。海から東京に運ぶんだな」

仲宗根が海に目を向けると、白いボートに銃丸の舎弟が木箱を運び込んでいるのが見えた。


「じゃあ、兄貴、行きましょう」

今回の倉庫は今までのアジトより規模が大きい。銃丸の手下も多いに違いない。

「おい、ちょっと待て」

比嘉が仲宗根を呼び止めた。

「何ですか?」

「見ろ」


倉庫の正面に黒いキャデラックが止まった。

運転席から手下が降り、後部座席のドアを開ける。

すると、倉庫からあの銃丸№3、崎が姿を現した。


「崎か」

「みたいですね」

崎はキャデラックに乗り込み、車は走り去った。


「兄貴、崎を追いましょう」

「そうだな」

仲宗根は、後方に止まったワゴン車の組員に

「ここで見張っとけ、俺たちは崎を追う」

と、言った。


二人は、黒いキャデラックの後を追った。

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