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悲しき仮面  作者: 碧野 颯
34/46

真実への一歩 3

辺りはすっかり暗くなっていた。

南城たちは懐中電灯を手に、廃墟に近づいていく。

夜になるとこの場所は一層不気味な雰囲気を漂わせている。


「結構怖いですね…」

上原が呟いた。

「あぁ、俺はハブが怖いがな」

南城が軽く笑った。


中に入ると、ゴミが散乱し、悪ガキが描いたような落書きが壁一面に広がっている。

まず一階を探索したが、奥へ進むほどゴミの量が増え、足元に気をつけなければ転びそうだ。


「南城さん、あれ」

上原が奥を指差した。

「なんだ?」

南城は懐中電灯で照らした。


そこには地下へと続く階段が見えた。

「地下か。よく見つけたな。行ってみよう」

「はい」


階段は古びており、崩れかけた部分もある。

転ばないよう注意しながら、一段ずつ慎重に下りていく。

段差は複雑で幅が狭い。油断すれば足を滑らせかねない。


「気をつけろよ、上原」

南城は懐中電灯を足元に向けながら進んだ。


地下室にたどり着くと、空間が不思議なほど静まり返っていた。

声が反響しない。

懐中電灯を向けると、細長いテーブルが並べられており、その上にいくつもの紙が散乱していた。


南城はテーブルに近づき、紙を照らした。

そのうちの一枚には「津波古株式会社」「嘉数組」と記されている。

南城は手袋をはめ、紙を手に取った。


「なんだこれ…?」

紙の間に挟まれていた一枚の写真が目に留まった。

そこには前里専務と、ヤクザ風の男が一緒に写っていた。


さらに別の紙には「津波古株式会社」「又吉組」と記されている。

これらの書類は、津波古株式会社とヤクザの間で行われていた裏取引を示していた。

その中には「大城組」と記された紙もあった。


「前里専務がヤクザと関係していた証拠か…これを隠していたから、あの二人は話を逸らそうとしたんだな。」

南城は深刻な表情で言った。

「上原、鑑識を呼べ。すぐに」

「わかりました!」

上原は階段を駆け上がり、地下室を後にした。


ふと南城は疑問に思った。

この資料が発見されたら津波古株式会社は破産の危機に陥るはずだ。

なのにどうして、こんな誰でも簡単に入れる場所に放置されたいるのか…


一時間後、廃墟は立ち入り禁止となり、数台の警察車両が止まっていた。

地下室では鑑識が分析や写真撮影、証拠収集を行っている。

南城は車のボンネットにもたれかかりながら思考を巡らせていた。


「大発見だな」

背後から男性の声がした。

振り返ると、そこには課長が立っていた。


「まぁ、俺じゃなくて上原が見つけたんです」

南城が答える。

「そうか」

廃墟から鑑識官たちが出てきた。


南城は彼らに声をかける。

「何か見つけましたか? 」

「えぇ、指紋を検出しました。今から戻って鑑定を行います」

鑑識官たちは車に乗り込み、現場を後にした。


上原が廃墟から出てきた。

課長に気づくと

「お疲れ様です」

と、丁寧にお辞儀をした。


「ご苦労さん。南城が言ってたぞ、お前がこの重要な証拠を見つけたってな」

「はい」

「でかしたな。今日は二人とも、もうあがっていいぞ」

そう言い残し、課長も立ち去った。


南城は思考に耽けていた 。


「南城さん、南城さん?」

上原の声で、南城は我に返った。


「あぁ…すまんすまん」

「今日はもう帰っていいみたいですよ。どうしたんですか?」

「あぁ…ちょっと引っかかるんだよな」

「何がですか?」


上原は南城の真横に移動した。

「あの資料、見つかったら大問題になるだろう? なのに、どうしてあんな誰でも簡単に入れる場所に置いてあったんだ?」

「あぁ、言われてみれば、確かにそうですね」

「だろう? それが気になってな…。まぁ、とりあえず今日は帰るか。明日の朝一で津波古株式会社に行ってみよう」

「はい」


上原は軽く頷き、エンジンをかけた。


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