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悲しき仮面  作者: 碧野 颯
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隠された真実 2

「相当、武闘派な連中だな」

会議室でコーヒーを飲みながら、大城がぽつりと呟いた。


「えぇ、仲宗根も重傷を負いましたし、喜屋武の若い衆も多くが殺されました」

比嘉が深い声で答えた。


「はぁ……そうか。所詮ガキだからと甘く見ていたのが間違いだったな」

「はい、おっしゃる通りです」

しばらく沈黙が続く。


「頭」

比嘉が口を開いた。


「仲宗根と喜屋武が持ち帰った武器の運搬ルートがありましたよね」

「ん?それがどうした?」

「奴らを待ち伏せて、襲撃しましょう。そして、奴らのビジネスをつぶします」


大城はしばらく考え込んだ後、静かに頷いた。

後日、比嘉は作戦を実行するため本家に顔を出した。


「頭、若い衆だけ貸してください。あとは俺たちがやりますから」

「いや、俺も行く」

「いえ、危険です。頭は本家で待っていてください」


大城はしばらく比嘉を見つめていたが、やがて息を吐いて頷いた。

「分かった。頼むぞ」


比嘉は若い衆を引き連れ車に乗り込み、現場へ向かった。

「喜屋武には連絡したのか?」

と、比嘉が後部座席から問いかける。


「えぇ、もう現場に着いているはずです」

運転手が答えた。



人気のない道に車が入る。一面に芭蕉布の木が植えられ、付近には住宅もない。

奴らが武器を運ぶにはうってつけのルートだった。

右側の木立の間には、ダンプカーが待機していた。

車を道路脇に止めると、比嘉は降り、車に仕掛けるための爆弾を手にした組員を見送った。


「爆弾の設置が完了しました。起爆はこのボタンで行います」

組員がトランシーバーを手渡した。

「了解だ。タイミングを見て連絡しろ」


比嘉はダンプカーの荷台によじ登った。

荷台には数十人の組員がマシンガンを手にして座っている。

反対側の道にももう一台のダンプカーが待機しており、奴らを挟み撃ちにする作戦だ。

その中には喜屋武の姿もあった。


「あっ、比嘉の兄貴」

「喜屋武。お前の組は大丈夫か?」

「えぇ、大丈夫です。あの襲撃以降、気合がさらに入っています。死んだ舎弟たちのためにも、絶対に奴らを仕留めます」

「そうか。そいつらの無念を晴らしてやれ」

「ありがとうございます」


喜屋武は比嘉にマシンガンと防弾チョッキを渡した。

「兄貴、これ着てください」

「防弾チョッキなんて何年ぶりだろうな」

比嘉は微笑みながらそれを身につけた。


待ち構える静寂10分ほど経ったころ、トランシーバーが鳴った。

「奴らが来ました。タイミングを見計らってボタンを押します」


やがて、轟音と共に爆発が起きた。爆風が辺り一帯に響き渡る。


「撃て!撃て!」


比嘉の掛け声で全員がマシンガンを乱射した。

複数の銃声が響き渡り、爆発で黒焦げになった車両がさらに銃弾で貫かれる。

壮絶な銃撃戦が繰り広げられたが、やがて静寂が訪れた。


「比嘉の兄貴、大丈夫ですか?」

「ああ、何とか」

比嘉は辺りを見渡し、前方のワゴン車を指差した。

「あの車も爆破するぞ。手榴弾を持って来い」

喜屋武と組員が手榴弾を手に車へ向かったが、車内を覗き込んだ二人は動きを止めた。


「どうした?」

比嘉が尋ねると、喜屋武が振り返り叫んだ。


「銃を積んでいません!」

比嘉も走り寄り、車内を確認した。中には銃丸の手下の死体があるだけで、肝心の武器は見当たらなかった。

「……俺たちが襲撃することがバレてたのか?」


その時、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。


「おい!ずらかるぞ!出せ!」

比嘉が叫ぶ。

三人は急いでダンプカーの荷台に乗り込み、その場を後にした。

サイレンの音が遠ざかる中、比嘉は唇を噛みしめた。

「奴ら……俺たちを誘い込んだのか……」


喜屋武も悔しげにうつむいた。

「絶対に仕留めます、次こそは……」



「回復が早いですね、仲宗根さん。これならもう退院してもいいかもしれませんね」

医者が微笑みながらカルテを閉じた。


「本当ですか?」

仲宗根は背筋を伸ばし、期待の表情を見せた。


「ですが、あと二、三日様子を見ましょう。何も問題なければ退院ということで」

その時、病室のドアが開き、村井が入ってきた。

グレーのスーツを着た彼の手には、きれいにラッピングされたフルーツの盛り合わせが握られている。


「組長、これは仲宗根組の全員からです」

カゴをベッドの横の棚に丁寧に置くと、村井は椅子に腰掛けた。

「ああ、悪いな。気を遣わせて」

仲宗根はシャインマスカットを一粒口に運び、そのみずみずしい甘さに一息ついた。


「組長、昨日の襲撃の件ですが……」

村井の声が曇った。


「どうした?」

「奴らの車一台を爆破し、乗っていた連中を片付けました。しかし、残りの二台を調べたところ……銃が積まれていなかったんです」

「なんだと?」

仲宗根は目を細めた。


「まるで、襲撃されるのを最初から読んでいたかのような動きでした」

「ふん……。幹部たちは次の計画を練っているのか?」

「はい。組長、無理せずまずはお体を大事に」

村井はそう言い残し、病室を後にした。


二日後、仲宗根は退院の許可を得た。

医者に深く頭を下げると、村井の車が病院の玄関に横付けされた。


「組長、退院おめでとうございます」

村井が降りてきて、後部座席のドアを開けた。


仲宗根は車に乗り込み、しばらく外の景色を眺めた。

車が動き出し、村井はラジオのボリュームを上げた。

「昨夜午前三時、15人が乗った車が何者かに銃撃され死亡しました……」

ラジオのニュースが流れ、車内に緊張が漂う。


「この前の襲撃のことだな」

仲宗根が呟くと、村井は静かに頷いた。


車がコンビニの駐車場に止まり、村井がトイレに行くため小走りで中へ入った。

その時、隣に白い高級車が滑り込むように駐車した。

車内を何気なく覗いた仲宗根の視線が、後部座席の男に目が止まる。


「あ!」


そこにいたのは……銃丸№4の宇野山だった。


仲宗根の心臓が大きく跳ねた。奴に気づかれないよう、身を低くした。

銃丸の手下がコンビニの中に入っていった。

村井と鉢合わないでくれ…

間もなく、村井がコンビニから戻ってきた。


「組長、どうしました?」

村井の声に、仲宗根は指で隣の車を示した。

「宇野山だ……。」

「え?本当ですか?」


小声で話す二人はコンビニの端へ移動し、簡単な作戦を立てた。

「手下が出てきたら俺がまず奴を片付ける。その後、二人で車を撃つぞ」

自動ドアの音が響き、宇野山の手下が楽しげに写真集を掲げながら出てきた。

その瞬間、仲宗根はハンドガンを構え引き金を引く。


パン!


手下は額を撃ち抜かれ、即座に倒れた。


「村井、撃て!」

二人は宇野山が乗る車に向かって、一斉射撃を開始した。

数十発の銃弾が飛び交う中、防弾ガラスに守られた車内の宇野山がこちらを嘲笑うかのように笑みを浮かべていた。


「くそっ、防弾ガラスか!」

宇野山は運転席に移動するとエンジンをかけ、猛スピードで走り去った。


「追うぞ!」

仲宗根は車を発進させ、村井にタイヤを狙わせる。

村井が窓から体を乗り出し、タイヤを狙撃すると、宇野山の車が蛇行し始めた。


それでもスピードを落とさず逃げる車に、仲宗根は車をぶつけた。

衝撃で仲宗根たちの体が激しく揺れた。

宇野山の車が右に大きくカーブし、電柱に激突した。


仲宗根は車を止めると、ゆっくりと宇野山の車に歩み寄る。

運転席を開けると、血まみれの宇野山が意識を失いかけていた。


「ヤクザをなめると、こうなるんだよ。」

仲宗根はハンドガンを向け、引き金を引いた。


バン! バン! バン!


銃声が冷たい空気に響き渡った。

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